悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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妖しい令嬢。

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「セルビィ君、聞いて下さる。あの娘、今日 5回も私達の前で転んだのよ。」
「その1回なんて、顔面スライディングよ。まあ、胸の御陰で顔は無事だったけど。」
「あれは、衝撃でしたわ。胸の辺りが血塗れになって。」
「その後来たアラン殿下達の顔ったら、笑えるのよ セルビィ。」

胸スライディングしたフローネの服は破れて、胸が露わに成っていた。フローネが セルビア達に押されたと泣き崩れ、現れたアラン殿下達は令嬢達を責めたり フローネの胸に鼻の下を伸ばしたりしていた。
「もう、笑いを堪えるのに必死だったんだから。」
セルビア達は、嬉しそうに話している。

「セルビィ君、聞いて。今日、あの娘 ふふっ。」
「教科書を、自分で噴水に投げ込んで 自分で拾ってたのよ。」
「その時、噴水に落ちて ぷっ。」
「その後来た、アラン殿下達の慌て振りたら 笑ったわ。」

噴水の縁に置いてた手を滑らして、噴水へ頭から落ちるフローネ。胸が重くて、なかなか頭を上げられず 溺れ掛かった処に現れたアラン達は慌ててフローネを助け出していた。
「もう、可笑しくって。笑うのを堪えるのに ふふふっ。」
セルビア達は、楽しそうに話していた。


「凄いのセルビィ君。あの娘、飛んだの。ピョーンて、階段を。」
「それも、後ろ向きでしてよ。」
「猫の様に、空中で1回転したのよ。」
「後から来たアラン殿下の上に、落ちたの。顔面で、胸を受け止めて潰れていたわ。」

令嬢達の前で、階段の上から飛んだフローネは。空中で、スカートを飜し1回転。下にいた殿下の上に落ちて潰していた。
「もう、ふふふっ。」
セルビア達は、笑いが止まらなかった。

「姉様達が、楽しそうで。僕、嬉しいです。」
セルビィは、姉達の楽しそうな姿に 幸せそうに微笑んだ。

ここ数日のフローネの奇行が、笑いを誘っていた。どうやらフローネは、令嬢達が自分に意地悪をしてる様に見せかけたい様であった。セルビィが言った『相応しく無い』を、作り上げようとしていた。嫉妬の余りか弱い自分を虐める、『悪役令嬢』をフローネは作り上げようとしていた。
そして、公の場所で自分がアラン殿下の『恋人』として、愛を語りあってもいた。周りの学生達が、引いているのも知らずに。

「あま、皆様。頭の中はお花畑の様ですし。」
くすくすと、セルビィは笑った。
「何だ、セルビィ。思いだし笑いか? 」
「はい。姉様達が、幸せそうで嬉しいです。」
「ああ、ビッチか。凄ぇぜ。」
ナルトも感心して、フローネを褒めた。


そこは、西の砦の真ん中ウォンット砦から一番近い街 ユーヨク。

優雅にお茶を飲む。輝く白金の髪に、白いワンピース。何処から見ても、慎ましく美しい令嬢。同じ席で連れの男は、ガッチリ飯を食う。明るい茶色の髪の男。

「相席、宜しいかな? 美しいお嬢さん。」
令嬢の横に現れた男性は、優しく問い掛ける。
「どうぞ。」
令嬢は、当然の様に返事をした。赤い髪の美丈夫な男性が、令嬢の目の前の開いている席に座った。その後ろに、茶色髪の騎士が立っている。

「アメリゴ国の前線の街に、お忍びかい お嬢さん。」
「いえ、会いたい人がいまして。」
気付けば、周りのお客は総ていなくなっていた。いるのは数人の騎士。がらんとした店内に、客はこの席にいる者だけだった。

「それは その男性が、羨ましい。逢えましたか? お嬢さん。」
「ええ、今 やっと。」
令嬢は、目の前の男性に微笑んだ。連れの男は、チラリと目で見て 気にする事なく飯を食う。

「今朝 不思議な事に、書斎の机の上にメッセージカードが置いてあって。使用人が一人消えていた。」
「其れは、心配ですね。無事でしょうか、メイドさんは。」
令嬢は、何気なく言った。

「貴様!! 」
赤髪の男性の後の騎士が、殺気立つ。令嬢の連れの男は、動きを止めた。
「やめろ。」
赤髪の男性は、殺気立つ騎士を手で制した。

「5年も前からいた、お嬢さんと変わらない年の可愛らし少女だった。」
「其れは、心配ですね。でも、きっと無事です。」
令嬢は、優しく微笑んだ。

「リオル様。」
令嬢は、男性の名を呼んだ。

「貴様!! やはり、間者を!! 」
『ガシャン!! 』と、騎士がテーブルに手を付いた。その首に、食事用のナイフが突きつけられる。令嬢の連れの男が、いち早く動いた。

「殺気立っては、話になりません。座って、下さい。」
令嬢は くすくすと、笑う。
連れの男は、ナイフをクルリと回すと席に付いた。

「ロレンス、お前も、座れ。」
リオルは、腹心の騎士ロレンスに座る様に促した。

「すまん、ロレンスは心配症でな。」
「ええ、知ってます。」
令嬢は くすくすと、笑う。

ロレンスは、唇を噛んだ。
十歳位の幼い少女が間者として屋敷に潜り込んでいた事に。普通の少女だった。何の鍛えた後もなく、ごく普通の少女。その少女が、間者として屋敷の中に。5年もの間、普通のメイドとして動いていた。信用されて、書斎の掃除を任される程にまで成っていた。
其れは、何時でも自分の主人を殺せる場所にいたと言う事だ。
ロレンスは、射殺すような目で目の前の令嬢を見据える。

「お茶を。」
令嬢が言うと、連れの男がお茶を淹れて二人の前には差し出した。
手を出そうとするリオルに、ロレンスは首を振った。

「心配ですか。」
令嬢は、リオルのカップを取り一口飲んで再び リオルの目の前に置いた。毒を淹れてないと、証明するために。

「すまんな。」
リオルは、差し出されたお茶を一気に飲んだ。

「それで、お嬢さん。君は、誰だ? 」
リオルは、直接答を聞いた。
令嬢は コロコロと、鈴の様な笑い声をあげた。

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