悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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美しい花は、手折ってはいけない。

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ビウェルは、第二生徒会室の隣の扉を開けた。そして、溜息を付いた。

「おはよう御座います、ビウェル様。お茶にしますか? お菓子にしますか? 」
両手を広げて、セルビィが待っていた。何時もの様にビウェルは、鞄を差し出した。

「ナルト様、お茶を入れて下さい。」
「おう、ビウェルも飲むよな。」
ナルトの明るい声。鞄を開けながら、ソファに座るセルビィ。セルビィは何時もの事だが、今日はナルトが何時もと違う。昨日まで セルビィの女性関係で二人、頭を悩ませていた筈なのに。

「今日は、明るいな? 」
「おう、愁いは解消したからな。」
ナルトはビウェルに、お茶を渡しながら笑った。それを受け取りながらビウェルは、真相を聞いた。

「成るほど、阿呆様達に宛がうために女性を探していたのか。」
「そうなんだ、女性にとち狂って無くってよかった。」
ビウェルは、同時する様に頷いた。
「では、令嬢達も真相を。」
「ああ、昨日全部セルビィが。嬉々として、話していた。」
ナルトは、嬉々としてお菓子を頬張るセルビィを見た。
「だろうな。」
ビウェルも、目線を投げ掛ける。その目線に気が付いたセルビィは にっこりと、微笑んだ。

「ビウェル様。舞踏会の準備は、出来てますか。」
「ああ、出来ている。」

【舞踏会】は【決行】を意味する。

「私達は、騎士伯だ。領民がいないから、楽なものだ。」

爵位は二通り有る。領地を持つ貴族と持たない貴族。領地を持たない貴族は、騎士泊と呼ばれている。
要するに騎士泊は、宮仕え。役職を失えば、お金が入ってこない。爵位は有るが、土地を持たないから持つ者より地位は下がる。
警邏隊などは、騎士伯が殆どだ。土地持ちでない者は騎士とは、呼ばれない。其処にも身分の差があった。

王家がこの国を持ち。公爵家が、領地を四分割している。
元々の三公は、国の三分割し支配している。その分割した地に、貴族達は領地を割り当てられている。それは、貴族と言う名の領地管理者。
つまりは ランドール公爵家領のΟΟ伯爵と、呼ばれる様なものだ。ランドール公爵家領とは豪の者が住んでいた【不毛の大地ルナ】だ。

王家と公爵家は親戚筋に辺り、仲がよく。同族同士の争いは、宗教で禁止されているので争いはない。だから、騎士伯は土地持ちの貴族と婚姻するか、養子に入らない限りその地位は変わらない。
宮仕えの為、クビに成らないよう怯えて暮らしている。裏で、副職をしてお金を稼いでいる者も多く。貧乏人も、多いい。公爵家の庇護下に有る者と、無い者では金銭面での差も含まれる。
フレックス侯爵家の様に、頭の切れる者は少ない。

「警邏隊の家族は、旅行に行く予定だ。既に行っている者もいる。」
「春休みを機に、旅行ですか。いいですね。」
ビウェルの言葉に、セルビィは微笑む。
「王都の不良児達は、警邏隊が王都外に追放をしている。」
「道理で、路地裏が綺麗になってるのですね。いいことです。」
にっこりと、応える。

「何時もながら、王都の警備は警邏隊が行う。舞踏会の日もだ。」
「それは、良好です。」

「だが、舞踏会会場の聖堂には手が出せない。」

卒業式は、聖教会の聖堂で行われる。神に卒業を報告し、その後その聖堂で舞踏会が執り行われる。卒業式が終わるまでは、家族は二階の部屋で待っている様になっている。
その警備は、王家の兵士達が訪う。要するに土地持ちの騎士だ。
「其方は、僕達が何とかします。ねっ、ナルト様。」
「えっ、俺? 」
話を急に振られて、ナルトは驚いた。セルビィは にっこりと、微笑む。圧力。

「う、うん。何とか、します。」
ナルトは、汗を流しながら頷いた。
(なんか、解き放たれた圧力を感じる。)

令嬢達に隠すことが無くなったセルビィは、生き生きしていた。

「しんがりは、僕が受け持ちますから。安心して下さい。」
嬉々として、言う。
「其れは、不安だ。」
「不安? 何故です。」
ビウェルの言葉に、セルビィは首を傾げた。
「いや、忘れてくれ。」
「変な、ビウェル様です。」
にっこりと、微笑む。

「そうです。週末は、東の砦に向かいますので宜しくお願いします。」
「「東の砦? 」」
セルビィの言葉に、二人は首を傾げた。

「保険です。」
くすくすと、笑う。
何故か、二人は背筋に寒い物が走った。本能が聞くなと、訴えている。

「聞きたいです? 」
嬉々として、セルビィは言った。二人は、首を振った。

「守備よく行ったら、教えてあげます。」
くすくすと、笑う。

「「いや、聞きたくない。」」
二人は、心の底から訴えた。
「面白いのに。変な、二人です。」
セルビィは くすくすと、笑う。
((いや、絶対面白く無い。))
断固として、核心が持てる二人だった。

セルビィは くいっと、お茶を飲み終えると。
「そろそろ、女神の降臨の時間帯です。阿呆様達を、導かないと。」

「女神とは? 」
「令嬢達の事だ。」
ナルトの言葉に、頷く。

「ビウェル様も、来ます? 姉様達の美しい姿が、拝められます。」
セルビィは、満面の笑顔で言った。

「いや、遠慮しておく。」
「そうですか、残念です。」
セルビィは、本当に残念そうな顔をした。
「姉様達、女神様の様に綺麗です。」
「ああ、其れは解っている。」
ビウェルの言葉に、セルビィの目が細まった。

「其れは、姉様達の事を 」
「ほら、セルビィ。令嬢達は、何時も綺麗だと言う事だ。他意は無い!! 」
ナルトは、慌てて取り繕う。

「な、ビウェル そうだろう。」
「あ、ああ? 」
ナルトの剣幕に、ビウェルは頷いた。

「そうですか、そうですね。僕、勘違いしそうに成りました。ビウェル様が、姉様達を好いて折られるのかと。」
にっこりと、微笑む。

「美しい花に目が行くように、美しい令嬢達にも目が向くのは当然だろセルビィ。」
「ええ、その通りです。」
セルビィは、天使の様な無垢な笑顔を向けた。そして、

「美しい花を、手折っては駄目ですよ。」
釘を刺すように、セルビィは天使の笑顔のまま付け足した。二人は、凍える寒さを感じながら頷いた。

「では、行ってきます。」
セルビィは、足取り軽く扉へと向かう。女神の降臨を、迎えるために。









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