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地獄の入り口。
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目の前に座る筋肉質の男性は、恭しく頭を下げた。
「ジャック・ネルソンです。よろしく、お願いします。」
年下の少女も、侮る事なく礼儀正しく挨拶をする。
温和な顔をしているが、目の奥に鋭さを感じさせた。明るい茶色の髪を整え、身なりもきちっとしていた。
「セルビィ・ランドールです。お見知り置きを。」
セルビィは、微笑んだ。
「公爵家のセルビィ様。」
「はい。この姿は、変装です。」
ジャックは居心地悪そうに、俯いた。
「今日は、チャイニ国の豪の者について お願いがありまして。」
セルビィは、切り出した。
セルビィの横に座るナルトも、ジャックの横に座るフレックス親子も セルビィの言葉に驚いた。
「申し訳ない、セルビィ様。私の商店も、豪の方々を奴隷として買って働いて貰っています。」
ジャックは、深く深く頭を下げた。
「顔を、上げて下さい。」
セルビィは、優しく語りかける。
「ネルソン様は、分け隔てなく豪の者を 従業員として扱って下さっている事は知っています。」
その言葉に、フレックス親子は ほっとする。
「チャイニ国では、誰かの所有物の証の首輪がないと さらわれ 何処かで売られてしまう事がある事も分かっています。」
セルビィは、哀しそうに首を振った。
「首輪以外は、普通の従業員と同じ扱いに 感謝しています。」
「そう言って頂けると、ありがたい。」
ネルソンも ほっと、息を付いた。
「それで、お願いとは。」
「チャイニ国の豪の者を、買い取って頂きたいのです。」
「「えっ!! 」」
其処にいる者、全員が驚きの声を上げた。
「そ、それは 構いませんが。その、」
ジャックは、言葉を濁した。
豪の者は、真面目で人が良く。奴隷として、高値で取引されていた。その真面目な働き振りに、チャイニ国は 豪の奴隷を王都から外に出す事を許さない程に。
「資金は、勿論用意します。お願い出来ますか。」
セルビィは、微笑む。
「はい、私が力になれるなら。」
ジャックは、頷いた。
「セルビィ そんな金、何処に有るんだ!? 」
ナルトは、セルビィの肩を掴んだ。
「有りますよ。」
しれっと、セルビィは言った。ナルトは、驚いた。
「何処に、そんな金が。」
セルビィ達は、国造りの為に金は無かった。殆ど、オースト国から金はせしめていたが。豪の者達を、買い戻すほどの余裕はなかった筈だ なのに。
「姉様達の結納金が、有ります。」
「「結納金!? 」」
セルビィ以外の者が、首を傾げ呟いた。
「はい。思い切り、阿呆様達に泣きつきました。」
セルビィは、満面の笑みを湛えた。
数日前。
セルビィは、アラン達の前で泣き崩れた。
「如何した、セルビィ!? 」
アラン達は、驚いて声を掛けた。
「僕は、僕は、不甲斐ないのです。姉様達が、」
「セルビアが、如何した? 」
セルビィは涙を ぽろぽろ落としながら。
「ランドール家は、豪の者達はとても貧乏で。姉様達の花嫁衣装も、道具も粗末な物しか用意出来なくて。」
「花嫁衣装!? 」
アラン達は、食いついた。
「このままでは、姉様達に恥を掻かせてしまいます。姉様達は『そんなお金が有るなら、皆の為に使って。』そう言って、微笑まれて。」
セルビィは、泣き崩れた。
「セルビア、なんと健気な。」
「流石は、テレジアです。」
「アイリーンの優しさに、心が染み入ります。」
「リリアナは、愛らしい。」
アラン達は、令嬢達の優しさに感動していた。
「恥を掻くのは、姉様達だけではありません。王族の方達に恥を掻かす位なら、姉様達は きっとこの婚約を解消しようとするかも知れません。」
「婚約解消!? 」
アラン達は、その言葉に驚いた。
「『殿下達に、恥を掻かせる訳にはいかないわ。此処は、私が身を引くのが。』そう、哀しそうに言われて。僕は、僕は。」
「通常の五倍は、出してくれました。」
セルビィは にっこり、笑った。其処に居る者は、開いた口が塞がらなかった。
「お前は、また国から出させるか。」
ナルトは、呆れて言った。
(また? とは。)
ジャックとフレックス親子は、ナルトの言葉に疑問を持った。
「しかし、それは花嫁道具を買わないと。」
「何故です。」
セルビィは きょとんとした顔を向ける。
「何故って? 」
「結婚しないのに。」
セルビィは きっぱりと、言った。
「「「えっ!? 」」」
「あーー。」
ジャックとフレックス親子は、驚きの声を上げて ナルトは、天を仰いだ。
「結婚しない? 」
代表してビウェルが、セルビィに問い掛けた。
「はい。姉様達は、阿呆様達と結婚しません。」
「いや、婚約しているが。」
ビルケンが、聞いてくる。
「婚約しているからと言って、何故結婚しなくてはならないのですか? 」
「婚約は、結婚前提の話では? 」
ジャックが、頭を捻りながら聞いてくる。
「結婚前提ですが、結婚するとは決まってません。」
「「いや、決まっているだろう!! 」」
フレックス親子は、突っ込んだ。
「阿呆様達と、結婚。冗談じゃ有りません。」
「「いや、冗談じゃないから!! 」」
フレックス親子は、突っ込む。ジャックは、
「結婚しないと成ると、結納金は返さなくては。」
「何故です。」
「何故って、そう言うもので。あれ、私が間違って いるの かな? 」
ジャックは、混乱していた。フレックス親子は、
「「間違って無い、ジャック。」」
フレックス親子も、混乱しつつ有る頭を振った。
ナルトは、可哀想な者を見る目で皆を見ていた。
「姉様達は、阿呆様達の不貞のため婚約破棄をするのです。返す必要は有りません。」
是には、ナルトが驚いた。
「えっ、とんずらこくんじゃないのか? 」
「勿論、とんずらしますよ。」
「「とんずら!? 」」
フレックス親子とジャックは、何か 恐ろしい事を耳にしたような気がした。
セルビィは、三人に微笑んだ。フレックス親子とジャックは、その微笑みは 地獄の入り口の様な気がした。
「ジャック・ネルソンです。よろしく、お願いします。」
年下の少女も、侮る事なく礼儀正しく挨拶をする。
温和な顔をしているが、目の奥に鋭さを感じさせた。明るい茶色の髪を整え、身なりもきちっとしていた。
「セルビィ・ランドールです。お見知り置きを。」
セルビィは、微笑んだ。
「公爵家のセルビィ様。」
「はい。この姿は、変装です。」
ジャックは居心地悪そうに、俯いた。
「今日は、チャイニ国の豪の者について お願いがありまして。」
セルビィは、切り出した。
セルビィの横に座るナルトも、ジャックの横に座るフレックス親子も セルビィの言葉に驚いた。
「申し訳ない、セルビィ様。私の商店も、豪の方々を奴隷として買って働いて貰っています。」
ジャックは、深く深く頭を下げた。
「顔を、上げて下さい。」
セルビィは、優しく語りかける。
「ネルソン様は、分け隔てなく豪の者を 従業員として扱って下さっている事は知っています。」
その言葉に、フレックス親子は ほっとする。
「チャイニ国では、誰かの所有物の証の首輪がないと さらわれ 何処かで売られてしまう事がある事も分かっています。」
セルビィは、哀しそうに首を振った。
「首輪以外は、普通の従業員と同じ扱いに 感謝しています。」
「そう言って頂けると、ありがたい。」
ネルソンも ほっと、息を付いた。
「それで、お願いとは。」
「チャイニ国の豪の者を、買い取って頂きたいのです。」
「「えっ!! 」」
其処にいる者、全員が驚きの声を上げた。
「そ、それは 構いませんが。その、」
ジャックは、言葉を濁した。
豪の者は、真面目で人が良く。奴隷として、高値で取引されていた。その真面目な働き振りに、チャイニ国は 豪の奴隷を王都から外に出す事を許さない程に。
「資金は、勿論用意します。お願い出来ますか。」
セルビィは、微笑む。
「はい、私が力になれるなら。」
ジャックは、頷いた。
「セルビィ そんな金、何処に有るんだ!? 」
ナルトは、セルビィの肩を掴んだ。
「有りますよ。」
しれっと、セルビィは言った。ナルトは、驚いた。
「何処に、そんな金が。」
セルビィ達は、国造りの為に金は無かった。殆ど、オースト国から金はせしめていたが。豪の者達を、買い戻すほどの余裕はなかった筈だ なのに。
「姉様達の結納金が、有ります。」
「「結納金!? 」」
セルビィ以外の者が、首を傾げ呟いた。
「はい。思い切り、阿呆様達に泣きつきました。」
セルビィは、満面の笑みを湛えた。
数日前。
セルビィは、アラン達の前で泣き崩れた。
「如何した、セルビィ!? 」
アラン達は、驚いて声を掛けた。
「僕は、僕は、不甲斐ないのです。姉様達が、」
「セルビアが、如何した? 」
セルビィは涙を ぽろぽろ落としながら。
「ランドール家は、豪の者達はとても貧乏で。姉様達の花嫁衣装も、道具も粗末な物しか用意出来なくて。」
「花嫁衣装!? 」
アラン達は、食いついた。
「このままでは、姉様達に恥を掻かせてしまいます。姉様達は『そんなお金が有るなら、皆の為に使って。』そう言って、微笑まれて。」
セルビィは、泣き崩れた。
「セルビア、なんと健気な。」
「流石は、テレジアです。」
「アイリーンの優しさに、心が染み入ります。」
「リリアナは、愛らしい。」
アラン達は、令嬢達の優しさに感動していた。
「恥を掻くのは、姉様達だけではありません。王族の方達に恥を掻かす位なら、姉様達は きっとこの婚約を解消しようとするかも知れません。」
「婚約解消!? 」
アラン達は、その言葉に驚いた。
「『殿下達に、恥を掻かせる訳にはいかないわ。此処は、私が身を引くのが。』そう、哀しそうに言われて。僕は、僕は。」
「通常の五倍は、出してくれました。」
セルビィは にっこり、笑った。其処に居る者は、開いた口が塞がらなかった。
「お前は、また国から出させるか。」
ナルトは、呆れて言った。
(また? とは。)
ジャックとフレックス親子は、ナルトの言葉に疑問を持った。
「しかし、それは花嫁道具を買わないと。」
「何故です。」
セルビィは きょとんとした顔を向ける。
「何故って? 」
「結婚しないのに。」
セルビィは きっぱりと、言った。
「「「えっ!? 」」」
「あーー。」
ジャックとフレックス親子は、驚きの声を上げて ナルトは、天を仰いだ。
「結婚しない? 」
代表してビウェルが、セルビィに問い掛けた。
「はい。姉様達は、阿呆様達と結婚しません。」
「いや、婚約しているが。」
ビルケンが、聞いてくる。
「婚約しているからと言って、何故結婚しなくてはならないのですか? 」
「婚約は、結婚前提の話では? 」
ジャックが、頭を捻りながら聞いてくる。
「結婚前提ですが、結婚するとは決まってません。」
「「いや、決まっているだろう!! 」」
フレックス親子は、突っ込んだ。
「阿呆様達と、結婚。冗談じゃ有りません。」
「「いや、冗談じゃないから!! 」」
フレックス親子は、突っ込む。ジャックは、
「結婚しないと成ると、結納金は返さなくては。」
「何故です。」
「何故って、そう言うもので。あれ、私が間違って いるの かな? 」
ジャックは、混乱していた。フレックス親子は、
「「間違って無い、ジャック。」」
フレックス親子も、混乱しつつ有る頭を振った。
ナルトは、可哀想な者を見る目で皆を見ていた。
「姉様達は、阿呆様達の不貞のため婚約破棄をするのです。返す必要は有りません。」
是には、ナルトが驚いた。
「えっ、とんずらこくんじゃないのか? 」
「勿論、とんずらしますよ。」
「「とんずら!? 」」
フレックス親子とジャックは、何か 恐ろしい事を耳にしたような気がした。
セルビィは、三人に微笑んだ。フレックス親子とジャックは、その微笑みは 地獄の入り口の様な気がした。
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