悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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セルビア、丸投げする。

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聖堂を出て、アーチ状の屋根のある廊下を歩く。
「ポカリス殿、先に行かれてたのか。」
「探しましたよ。」
アラン達が、アメリゴ帝国の第三皇子を連れて聖堂の方へと歩いていた。
「どうされた? 顔色が優れない様だが。」
アメリゴ帝国の皇子カバードが気付く。
よく見れば、後の護衛に支えられている侯爵は更に顔色が優れない。その後を オロオロと、侯爵のお付きが続いている。
アラン達が、思案している処に
「聞いてやるな。武士の情けだ。」
リオル達が、合流する。
「何か、有ったのですか? 兄上。」
「まあな。」
リオルは、軽く言う。
「先程は、口添え感謝いたします リオル殿。」
「いやぁ、一つ 貸しですぞ。」
リオルは、高らかに笑った。ポカリスは、悔しそうに微笑んだ。
「いったい、何が? 」
アラン達は、首を傾げた。


リオルとロレンスは、自分の部屋へと廊下を歩いていた。
「めっけものだったな。チャイニ国に、貸しを作れたことは。」
「はい。ですが、こっちは無理やり あの少年に貸しを作らされてしまいました。」
「ん? 」
目を見張るリオルに、溜息を突く。
「気づきませんでしたか? 彼は、此方に向いて微笑んだのを。」
「そうだったか。」
「ええ、別に此方に振らなくても 令嬢の願いだけで場を修めることは出来たはずですが。わざと此方を、見てきました。あれは『貸しを作らして、やる。』と、目で言ってましたね。」
「そうか。」
リオルは、赤い髪を掻いた。
「で、どう見る。」
「あれは、曲者ですね。腹の中、真っ黒ですね。」
「お前が、言うか。」
驚きの目を、向ける。
「失礼な。俺は見た目も真っ黒ですが、彼は見た目が奇麗ですから その差は大きいですね。」
「つまり? 」
「天性の魔性ですね。」
ロレンスは、微笑んだ。
「敵には、回したくないですね。」
「お前が、そう言うか。」
「ええ、あれは令嬢達の為になら国をも滅ぼしかねないですね。」
「うん、確かに。戦争まで、仄めかしてたからな。」
部屋の前と付き、扉を開く。
「この国は、良くあんな魔性を飼ってますね。下手をすれば、喉元に食らい付いて来ますよ 恐ろしい。」
「お前が、言うならそうなんだろう。」
リオルは、ロレンスを心の底から信用していた。
「リオル様。敵には、回さぬよう。」
ロレンスの言葉と共に、扉は閉じられた。


「貴様、何を考えている。オースト国ならず、アメリゴ帝国にまで 貸しを作ってしまったぞ。」
「申し訳御座いません。」
宛がわれている部屋に戻ったポカリスは、ドービル侯爵を叱咤する。侯爵は汗をかきながら、謝罪をする。
「オースト国に戦の道理を、与えるとは。」
「申し訳御座いません。」
侯爵は、益々頭を下げる。
「この事は、父上 陛下に報告する。ただで済むとは思わない事だ 下がれ。」
「はい。申し訳御座いませんでした。」
侯爵は頭を下げ、王子の部屋を出る。自分の部屋に戻り、枕を思い切り床に叩き付けた。
「餓鬼が!! チャイニ国が、栄えているのは誰の御陰だと思っているんだ!! 」
枕を踏み付ける。
「ドービル様。」
お付きの者は、黙って部屋の端に佇んでいた。
「あの 黒髪の餓鬼も!! 私に恥を掻かせ負って!! 奴隷の民族が!! 」
「ドービル様、声が大きく御座います。誰かに、聞かれたら。」
お付きの者が、制するが。
「そうだ、奴隷だ。令嬢達も、あの奇麗な餓鬼も、私の奴隷にしてやる。」
侯爵は、笑いだす。
「この国の商業を、牛耳れば。国が奴等を、差し出すだろう フハハハ。」
侯爵は、奇麗な令嬢達と少年を思う。
「私の奴隷に、慰み者にしてやろう。」
侯爵は、高らかに笑った。


令嬢達は、馬車に乗っていた。騒ぎがあった後、直ぐさまその場を後にしたからだ。
「姉様、お菓子を食べますか? 」
セルビアの隣に座り、セルビィは袋に入れたお菓子を差し出す。
「ええ、今は いいわ。」
セルビィは可愛らしく、首を傾げた。
「姉様達は? 」
袋を両手に持ち、差し出す。令嬢達は、首を振った。沈黙が、続く。
「姉様。」
セルビィは、目を閉じ
「やはり あの、脂肪。もっと、搾ってやれば良かったですか? 」
囁いた。
「だ、大丈夫よ。あれで、十分よ ねえ。」
「ええ、もちろん。セルビィ君、凄かったよ。」
「本当、驚きましたわ。」
「ええ、恐ろしい程。」
令嬢達は、首を振る。
「ごめんなさい。姉様達を、驚かせてしまいましたか。」
目を潤ませる。
「でも、僕。許せなかったんです。姉様達を、傷付けるなんて。」
「セルビィ。」
セルビアは袋を持つ手を、握り締める。
「セルビィは、悪くないわ。御免なさい 少し、驚いてしまって。」
「姉様。」
二人は見詰め合う、そしてセルビアはセルビィを抱き締めた。そんな二人を、令嬢達は複雑な思いで見詰めていた。
「ところで、姉様。」
「何? セルビィ。」
セルビアは、抱き締める腕を放した。セルビィは顔を上げた。
「娼館て、なんです? 」
「えっ!? 」
セルビア達は、目を見張った。セルビィは汚れのない瞳を向ける。
「知らなかったの? 」
テレジアが、聞いた。
「はい。」
「でも、すっごく 怒ってたよね。」
リリアナが、驚く。
「だって、姉様達が辛そうだったから。」
もじもじ と、上目遣いで令嬢達を見る。
「どう言う事かしら、セルビア。」
令嬢達は、セルビアを見る、彼女は目を反らした。
「姉様? 」
「セルビィ君、赤ん坊の作り方知ってる? 」
「赤ん坊ですか。」
きょとん と、した目を向ける。セルビアが、慌てて
「駄目!! 聞かないで!! 」
叫んだ。
「セルビィ君。」
「赤ん坊は、結婚するとコウノトリが運んで来てくれるんです。ね、姉様。」
セルビィは、微笑んだ。

令嬢達の冷たい視線が、セルビアに注がれる。令嬢達の視線耐えかねて、セルビアは言った。
「だって、セルビィを汚したく無かったんだもん。」
「「「だもんじゃ、ないでしょう!! 」」」
令嬢達は、突っ込んだ。

「姉様。娼館て、なんですか? 」
無邪気な、瞳を向ける。
セルビアは、戸惑った。
「そ、それは。」
「それは? 」
首を傾げる。
「ナルト様に、聞きなさい。」
セルビアは、ナルトに総てを丸投げした。

そして、次の日。
セルビィは、姉が言う通りナルトに聞くのであった。
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