悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
上 下
41 / 128

夏休みの会議室の怪。

しおりを挟む
会議室で笑うセラムをボルトは、蹴った。近頃、ボルトはセラムの扱い方が乱暴に成った。事ある事に、天使の話しをするセラムに肝心袋の尾が切れたのだ。
昔はまだ マトモだったセラムだが、セルビィが優秀すぎて考えるのを放棄した様だった。天使の話しからコトがばれるかも知れないとボルトは ヒヤヒヤしていた。
「静かにしろ!! うるさい!! 邪魔だ!! 」
其処にいた者達は、ボルトのセラムの扱い方に口を開けて驚いている。一人を覗いて。
「父様を、制御出来るのは ボルト様しかいません。」
「丸投げ、するな。」
セラムを踏み付けながら、ボルトはセルビィに向き合う。セルビィは にっこり 笑って、無視をした。

「目下の目標は、人材確保と言う事です。」
円卓に座りながら、セルビィは話しを進める。
無視されたボルトは、鬱憤を晴らす様に何度かセラムを踏み付ける。
『グェ!! グェ!! 』と、変な声が聞こえて来る。セルビィ以外の者は、黙って下を向いていた。そして、ボルトが席に戻る気配がする。
「目下の目標は、人材確保です。」
セルビィは、同じ事を二度言った。ボルトとナルトは、頭を抱えた。
「あてが、あるのかい。」
おずおず と、三伯爵の一人がセルビィに聞いた。
「はい。」
セルビィは、今日一番の笑顔と弾んだ声を上げた。
「御存知ですか? フレックス侯爵様の事を。」

「フレックス侯爵。」
「確か、憲兵隊総括の。」
「彼は、豪の者分け隔て無く 法を遂行してくれる人物です。」
三人は、頷いた。
「あては、彼ですか。」
「はい。」
「フレックス侯爵ですか。」
「はい。」
「彼なら、信用出来る。」
「彼は、良い奴だ。天使だけで、セルビィと解った。はははは。」
復活して来たセラムが、笑う。ボルトは、静かに立ち上がった。
『ドコッ!! 』音がする。四人は、心の耳を塞いだ。
「フレックス侯爵様は、とても優秀で 素晴らしい方です。」
セルビィは夢見る乙女の様に うっとりと、言った。
「セルビィ君が、言うならそうなんだろうが。」
「彼は、この国を愛しているのだろう。」
「我らと共に、来てくれるのだろうか。」
三人は、複雑な顔をした。
「侯爵様が、この国を愛しても。この国が、侯爵様を愛するとは限りません。」
セルビィは、微笑む。その微笑みに三人は、再び背筋を凍らす。
「既に、三馬鹿様に 目を付けられているみたいです。」

「そ、そうか。」
「セルビィ君が、何かをしたかと思ってしまったよ。」
「いくら何でも。」
三人は、顔を見合わせた。
くすくす と、セルビィの笑い声が聞こえる。
其処にいた者の、血の気が引く。
「阿呆様達の御陰です。裏で遣っていた事が、表に出て来たのです。」
セルビィは、首を傾げて微笑む。その微笑みが、恐ろしすぎて皆黙った。

「きっと、フレックス侯爵様は 僕達の力に成ってくれる事でしょう。」
楽しそうに、微笑む。
三伯爵は黙り、ボルトとナルトは侯爵を思い涙した。

(哀れなる、侯爵よ。)

其処にいる者の、心の声だった。
「既に、貸しは作ってます。ねっ、ナルト様。」
「哀れな事に。」
「ボルト様。」
「ああ、可哀想に。」

(ああ、逃がす積もりは無いのだな。)

三伯爵は、自分達の事を思い出して 侯爵の事に涙ぐむ。
其れは、既に決定事項の様であった。

(ようこそ、侯爵。)

三伯爵は、彼に優しくしてあげようと心に誓うのであった。
「フレックス侯爵様経由で、優秀な人材が手に入ります。裏で働いて居た方を、ごっそり 頂きましょう。」
セルビィは、微笑む。

(この国、終わったな。)

其処にいる者は、確信した。一人を覗いては。
「物流も、ネルソン商家が手に入ります。」
「あの、ネルソン商か。」
「他国にも、支店の多いい。」
「いつの間に。」
三伯爵の問いに、
「是も、阿呆様達の御陰です。良い働きをして下さいます。」
セルビィは、笑う。
三伯爵は、座っているのでやっとだった。
「ビウェル先輩は、ネルソン商家に貸しがありますから。そのビウェル先輩に貸しが有る 僕のお願いを、きっと聞いて下さいます。」

(其れって、どうかと。)

言葉に出来ない、三伯爵であった。
「いつ、ビウェルに貸しを作ったんだ? 」
ナルトが思い付く辺り、無かった。セルビィは くすくすと、笑う。
「ナルト様。ケーキ、美味しかったです。」
「うっ!! 」
ナルトが、声を上げた。
他の者達は何が貸しだか解らなかったが、ナルトには心辺りが有りそうだと放置した。
(だが、ケーキ? )

「美味しかったです。」
「そうか、良かったな。」
ナルトは、引き攣った笑顔を向けた。

(此奴、泣かされた事を貸しにする気だな。)

普通、泣いた事を 黙ってて欲しいと言うはずが 逆である。セルビィは、自分を泣かした事を、貸しとする。ただでは起きない、セルビィで有った。

(あの親馬鹿に、言えば俺達は殺される。其れを、)

「また、買って下さい。」
「分かった。」
ナルトは、お手上げ状態で有った。

「次に、流通の為に橋を架けようと思います。」
「橋、だと。」
セルビィは、地図を取り出し ルナの大地と大陸に走る亀裂の西と東を指差した。
「此処と、此処に。橋を架けます。」
他国へと通ずる場所を、示す。是には、其処にいる者達は顔を歪める。
「セルビィ、橋を掛けるには何年かかるか。」
ボルトが、頭を振る。
「娘が、結婚してしまう。」
「もう、終わりだ。」
「パパを、許してくれ。」
三伯爵は、悲嘆に暮れる。
「結婚なんて、神が許しても 僕が許しません。」
セルビィは、当然の様に言った。
「だが、しかし。」
「橋なら、直ぐに作れます。」
「なっ!? 」
「どうやって!? 」
セルビィは、微笑んだ。
その笑顔は、背筋を凍らすが 安心の出来る微笑みで有った。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...