悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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阿呆様と頓珍漢の夏休み。

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王城の離宮。
王太子に与えられた離宮の一室、ゴテゴテとした飾りの付いたド派手な応接室で 公爵子息の三人と王太子は集まっていた。
それぞれ、個別に送った筈の手紙の返事が王太子宛で 送られてきていたからだ。

表に書かれた、文字。

王太子殿下様 公爵子息様方々へ

裏に、家紋が蝋に寄って封印されている 送り主は。

セルビィ・ランドール

その為、王太子アランは彼等を離宮に呼び出したのだ。
封筒の封を、アランは皆の前で開けた。
はらり と、四枚のカードと一枚の手紙が現れる。四枚のカードには、それぞれの婚約者への手紙の返事が書かれていた。


草木が生い茂る熱き夏。
最後の夏を、愛する家族との語らいに心弾ましています。
セルビア・ランドール

「どうだ? セルビアの文は、詩的で美しい。」
アランが、手のひらサイズのカードを読んだ。

暑さの厳しい折から、家族との日々の幸せを 祈っています。
テレジア・メシスト

「私のテレジアは、神への祈りが溢れています。」
シモンが、瞳を閉じて頷く。

暑さに負けず、家族一同。元気に暮らしております。
リリアナ・ファイア

「我が リリアナは、元気で愛らしい。」
レイモンドが、笑う。

夏の休み、家族と共に過ごしています。せめてこの爽やかな 一時が続けば良いと存じます。
アイリーン・メラルド

「私の婚約者アイリーンの優しい家族への心遣い、なんと素晴らしい。」
エリックは、眼鏡の掛け直す。
四人は自分の婚約者のカードを、自慢していた。初めて贈った、手紙の返しであった。
「しかし、手紙に対しカードとは 解せぬが。」
アランが首を捻って見せるが、レイモンドが笑って返す。
「あはは、きっと照れているんだろ。」
「そうですね、初めて私達からの手紙に 舞い上がったに違いありません。」
「目に浮かぶ、様です。」
エリックがカードに口付けをすると、シモンが聖書を持っ様に胸に抱き締める。
「そうだな、セルビィも そう書いてあった。」

王太子殿下達の初めての手紙。夏の楽しい日々を患わせたく無いので、カードで御返事をお返しする事をお許し下さい。姉上達の家族との語らいを、慮って頂き 私は嬉しい限りです。姉上との最後の夏を、家族の思い出を作りたいと思います。
セルビィ・ランドール

一枚の手紙には、王太子達に対する謝罪と感謝が書かれてあった。
「此では、セルビアを茶会にも呼べないな。」
「家族との、最後の夏と言われればな。」
「これも、神の試練ですね。」
「秋学期まで、我慢するしか無いですね。」
四人は、仕方なく頷いた。
学園を卒業すれば婚姻の儀に入る、其れまでの辛抱であった。そうすれば、名実ともに自分の妻と成る。
四人は幸せな未来を思って、微笑み合うのであった。



王都を少し外れた所にある、ランドール公爵家 会議室。
連絡会議だ。

「砦は、ほぼ建築完了だ。」
ボルトが、会議室に集まった者達に報告をする。
「街の建物も、畑も順調だ。何時でも、住める。」
三伯爵の三人は、声を上げて喜んだ。
「では、直ぐにでも帰郷を。」
「此で、娘を助けられる。」
「奴等に、婚約破棄を言ってやるぞ。はははは。」


「駄目です。」
喜ぶ三伯爵に、セルビィは 冷や水を掛ける。
「な、何故だ? セルビィ君。」
誰とも無く、質問をする。
掃き溜めに鶴の如くのセルビィが、応える。
「国を相手にするには、戦力が足りません。」
「そ、それは。」
「戦力が足りない上に、唯一の橋を押さえられれば終わりです。」
冷静にセルビィが、言葉にする。三伯爵は、押し黙った。

ルナの大地に渡るには、オースト国の北の門を通った先の橋を渡らなければ行けない。其処を押さえられれば、いくら自給自足が適っていても物資が滞る。其れは、負けを意味する。其れに、人口が余りにも豪の者が少なすぎる。
「では、どうするのだ。」
「此処までやって来て、これで終わるのか? 」
「無駄な、努力だったと言う事なのか? 」
三人は、沈痛な顔で押し黙る。
「優秀な者を引き抜けば良いのです。」
セルビィは にっこり 笑って言った。
「引き抜くとは、オースト国の者をか? 」
「信用出来るのか? 」
「信用出来ぬ!! 」
伯爵三人が、騒ぐ。
セルビィの目が、細まる。
微笑み称えているが、目は笑っていなかった。其れを見た二人が、背筋に冷や汗をかき出す。ボルトとナルトだ。
「ナルト様。どうやら、三伯爵様はルナの大地を冒険なさりたい様です。」
ナルトに顔を向けて、微笑む。ナルトは、慌てた。
「其れは、ちょっと 不味いんじゃないのか? なあ、叔父さん。」
助けを求めて、ボルトに振る。ボルトは、頭を抱えた。
「セルビィ、其れは ちょっと な。」
冒険の意味を知る二人は、顔を青くして三伯爵を見る。
三伯爵とセラムは、分かっていないので呆けた顔をしていた。特にセラムは、何も考えて無かった。
「無能な者は、いりません。」
セルビィは、静かに三伯爵を見据える。
「其れが、例え 姉様達のお父様でも。」
その天使の様な、美しい笑顔から背筋を凍らす言葉が発せられる。三伯爵は、凍った。

「オースト国の者が総て、悪い者とは限りませんよ。」
「そうそう、中には俺達の力に成ってくれる者もいる。ロビンとか。」
「うむ、彼等は良い子だな。」
ボルトとナルトが、場を溶かす。セラムは、思ったままの事を言う。
「少し、良い過ぎた様だ。」
「ああ、つい カッとしてしまった。」
「済まない、セルビィ君。」
二人の慌て振りに、三人は何かを察した。
「やっぱり、姉様達のお父様。分かってくれます。」
セルビィは、手を合わせて喜んだ。
「ああ、よかった。姉様達のお父様を、ミイラにしなくて済みます。」
セルビィは、微笑む。
その場にいた者は、押し黙る 一人を覗いては。
「天使よ、ミイラとは? 」
(聞くなよ!! )
セラム以外の者は、心の中で突っ込んだ。
「はい、父様。炎天下のルナの大地を、冒険するとミイラになる かも と言う事です。」
「なる程。いやー、うちの天使。天使の上に、博識だろう。」
(何がだ!! )
心の中で突っ込んむ、五人。
嬉しいそうに、セラムは笑った。静まり返る会議室に、セラムの笑い声が響いていた。
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