悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
上 下
31 / 128

聖母 小悪魔 魔王。

しおりを挟む
ルイス・ルォートは、悩んでいた。セルビィにピンハネを追及されて、狼狽してしまった自分に。やはり、自分にはこう言った事は向いてないのではと。ベンチに、座って考える。熱い、体を そよ風が冷やす。
「ルォート、先輩。」
後から、声を掛けられて心臓が跳ねる。この声の主を、ルイスは知っている。
ドキドキ していると、いつの間にか隣に座る。
覗き込んで来る、セルビィに冷や汗が出る。
「何か、悩み事 ですか? 」
優しく、問いただす。
「いや、別に。私は・・・」
ルイスは、目を反らした。セルビィは気遣うように、微笑む。
「僕には、話せませんか? 」
「いや、その。」
ルイスは、拳を握り締めた。その拳に、セルビィは手を そっ と触れる。
「ルイス 先輩の事が、心配です。」
セルビィの優しい眼差しと、目が合う。
「貴方は、真面目で 頑張り屋 ですから。」
気遣う、言葉が セルビィの可愛らしい唇から囁かれる。
その優しさが、心に染みてルイスは涙を流した。
先程も、ビウェルに小心者と叱咤されたばかりだった。
自分は、小心者で何も出来ないと ルイスは萎縮していた。其れなのに、
今自分は、優しく頭から抱きしめられている。
「何が、貴方を苦しめているのか 分かりません。」
耳元に、優しく囁かれる。
「でも、貴方は良く 頑張ってます。」
抱きしめている、腕が強くなる。苦しい程に。
「自分を、褒めて上げて下さい。貴方は、頑張り過ぎています。」
その言葉に、ルイスは思いが弾けた。
自分は、頑張っていた と誰かに見留めて欲しかった。子供の様に涙が溢れる。
セルビィは、ルイスが落ち着くまで黙って 抱き締めていた。


「面目ない。恥ずかしい、です。」
真っ赤に成って、ルイスは俯いている。ベンチに座っているルイスに、地に膝を尽き下から見上げるセルビィ。両手はルイスの手を、握り絞めている。
「僕で、良かったら。何時でも、愚痴を聞かせて貰います。」
聖母の様に、微笑む。
「体を労って、上げて下さい。」
目を閉じる、唇が
「心も。」
ルイスは、目を見張る。再び、涙が溢れそうだ。
「貴方が、背負う事で 救われる人がいることを 忘れないで 下さい。」
優しい、眼差しを贈る。
「セルビィ 様。」
セルビィは、頰を染めて可愛らしく微笑んだ。
「年下が、偉そうに済みません。」
その場に、立ち上がる。手は握ったままだ。
「馬車を待たせているので、僕は帰ります。」
手を離す。
「先輩も、早く帰ってお休み下さい。」
自分を労る、可愛らしい声。先程の聖母の様な微笑みではない、少女の様な微笑みを。黒い髪が ふわり と、風に靡いて後ろに留めている髪飾りが きらり と、輝く。
去って行く、セルビィの後ろ姿を ルイスはその姿が見えなくなるまで見詰めていた。








「指を食まれ、指を舐められました。フレックス様は、変態です。」
馬車に乗ったセルビィは、ナルトに向かって間一髪 言った。
「男に、ハニートラップを掛ける お前に言われたくは、ないだろう。」
「違います。」
ナルトの言葉に、セルビィは否定した。
「僕は、僕に、優しく協力したくなる様に 彼等に好ましい女 人に 合わせただけです。」
「今、女性て 言い掛けたよな。」
「違います。好ましい人です。」
セルビィは にっこり と、微笑む。
「僕のお願い事を、気分良く 遂行してくれる。優しい人に、成って欲しかったのです。」
「お前、いつか後から 刺されるぞ。」
冷たい目で、ナルトは見る。
「今回は、舐められた位ですんで良かったが。気をつけろよ。男は、狼だからな。」
セルビィは こてん と、首を傾げた。
「指も、食まれました。」
「だから、気をつけろ。お前は、綺麗なんだから自覚しろ。」
「僕が、綺麗なのは自覚してます。」
「言ってろ、ナルシスト。」
「違います。姉様に、そっくりの僕が綺麗なのは 当たり前です。」
嬉しそうに、セルビィは微笑んだ。
「本当、マジ。気をつけろよ、力じゃお前 敵わないんだからな。」
真面目な顔で、ナルトは言う。
「其処は、護衛のナルト様が護って下さい。」
「はあ!? 学園内は無理。俺は、入れない。」
セルビィは こてん と、首を傾げた。
「何の為の秘密通路ですか? 其処から、入って来てください。」
「俺が、混じれは目立つだろ。」
「大丈夫です。変装すれば、紛れます。」
セルビィは、馬車に隠してあるおかっぱの金髪の桂を取り出した。
「これに、制服を着れば。」
「おっさんの俺に、制服を着せる積もりか。」
「ナルト様は、まだ若いですよ。其れに、おっさん見たいな学生もいますし。」
「其れは、俺をおっさんと言ってるのと同じだ。」
セルビィは、微笑みながら目を反らした。
二十代のナルトは、自分から言った事だか『おっさん』呼ばわりはきつかった。ので、
「まさか、あのフレックスも簡単に落ちるとは思わなかったな。」
話をそらす。
「違います。指を食まれ、舐められました。変態です。」
「お前が、ハニートラップに 掛けたんだからな。」
「違います。好ましい女性 人 です。」
「今、完璧に女性と言ったな。」
ナルトは、指摘した。セルビィは、誤魔化す様に微笑んだ。
「男性は、ボディタッチや誉められたり頼られたりするのが弱いと 本に書いてありました。」
「なんだ、その本怖ぇぞ。」
「タイトルは、ずばり。男を落とす、仕草や言葉。」
セルビィは、本を取り出しナルトに見せる。ぱらぱら と、捲る。
「ナルト様は、小悪魔タイプが好きですよね。」
くすくす と、微笑む。
「お前、俺にハニートラップを掛けていたのか? 」
「掛けてませんよ。」
首を、傾げる。
「そうだな、お前は魔王で小悪魔じゃない。」
内心 ドキドキ しながらナルトは言った。
「天使の僕に、そんな事を言うのは ナルト様だけです。」
ナルトの心情を知らず、セルビィは屈託のない笑顔を ナルトに見せる。
楽しい一時が、馬車の中で行われていた。
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

処理中です...