悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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生徒会室、前。

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「姉様、行ってきます。」
セルビィは、元気に挨拶をした。裾野に広がる黒髪が、ふわり と揺れる。
「待って、セルビィ。やっぱり、私も行くわ。」
「駄目です。」
「でも。」
心配そうにセルビアは、セルビィを抱き締める。
「姉様、僕は男です。いつまで姉様に護られては、いられません。」
(こんな可愛い、姉様をあの阿呆様達に見せて溜まるか です。)
「姉様達の力に、なりたいのです。」
セルビィは、セルビアの後に佇む三人の令嬢に顔を向ける。令嬢達も心配そうに、セルビィを見ていた。
「姉様達を護る、騎士になります。」
「セルビィ。」
令嬢達は感激に震え、セルビアはセルビィを強く抱き締めた。


「行ってきます、姉様。」
セルビィは、元気に挨拶する。
「ええ、気をつけて。」
「はい。」
心配する姉に、笑顔で応える。そして足早に、その場を後に生徒会室にセルビィは向かうのであった。

放課後の生徒会室の前の廊下でセルビィは、可愛らしく首を傾けた。誰も観ていないが。
「どちら、でしょう。」
生徒会室が二部屋あった、第一生徒会室と第二生徒会室。

「普通、第一ですね。」
セルビィは ぱん と手を合わせて、首を傾ける。

「おい、そこで何をしている。此所は、一年の しかも豪の者の来るところではないぞ。」
セルビィが、声のする方へ振り向くと。其処には、太り気味の短身長の男が立っていた。ネクタイの色で三年生だと、分かる。
「此所は、高貴な方々来る処だ。お前が、来る処ではないぞ。」
偉そうに、男がふんぞり返る。セルビィは、柔やかに笑った。途端に、男は頰を紅くする。
「王太子殿下に、挨拶に来ました。」
「アラン殿下に? 」
怪訝そうに男は、セルビィを見る。何処かでみたことがあるが、この様に美しい少年を忘れる筈は無い。
「名前を言え。」
男は、偉そうに言う。
「セルビィです。セルビィ・ランドールです。」
天使の笑顔で、応えた。

「ランドール? ランドール公爵家。公爵。」
男は、顔を青くする。
「失礼しました、私はオレヲ・バレット。バレット伯爵家のオレヲです。」
オレヲは頭を下げながら、思った。去年間で毎日やって来た、あの華やかな令嬢達の一人。セルビア・ランドール公爵令嬢に、似ていたのだ。あの美しい、令嬢に。
「バレット様。王太子殿下に、お逢いしたいのですが。」
セルビィは、首を傾げる。
オレヲは、去年間での殿下の態度を思い出した。

「彼奴らを、此所に通すな。鬱陶しい。」
殿下が、先輩の生徒会役員に叫んでいるのを。
此所で彼を通すと、不況をかうのでは。追い返せば、気に入られるのでは。
オレヲは、腹の中で考える。

「ランドール様、申し訳御座いません。其れは、出来かねます。」
オレヲは、顔を上げて笑った。
他の公爵令息も、特に聖教長の子息のシモン様は豪の者を毛嫌いしていた。
「豪の者に、殿下達が会うはずはないのです。ご迷惑を殿下に掛けないでいただきたいですな。ランドール様。」
上から目線で、横柄な態度をとる。セルビィは にっこり と、微笑んで。
「解りました。殿下には、セルビィ・ランドールが挨拶に来たとの事だけはお報せ下さい。バレット様。」
「いいでしょう。確かに、承りました。」
オレヲは、蔑んだ目でセルビィを見る。
「有難う御座います、バレット様。では僕は、これで失礼します。」
「さっさと、お引き取り下さい。」
オレヲは、野良猫を追い払う様に手を振った。
セルビィは、踵を返してその場を放れていった。その足取りは、軽い。


「其れは、去年間での話し。」
セルビィは くすくす と、笑った。
「昨日間では あの阿呆様は、姉様を嫌っていたかも知れないけれど ね。」
セルビィは、後を振り向いて
「僕を通さなかったら、どうするかな? あの阿呆様は。」

セルビィは、オレヲの態度に頭にきていたのだった。
殿下の呼び出しと聞けば、彼はきっとセルビィを通しただろう。だけどセルビィは、わざと殿下の呼び出しとは言わなかった。

「今までの事を思えば、姉様との繋がりを持つには僕しかいませんね。」
足取り軽く、歩き出す。
「まあ、今だけです。淡い恋心など、僕が完膚なきまでに消してあげます。」
セルビィは、楽しくて仕方がなかった。
「あの阿呆様は、バレット伯爵令息を どうするかな。」



セルビアの待つテラスへと、セルビィは急ぐ。
テラスでは、心配そうになセルビアと三人の令嬢達が待っていた。
「姉様。」
「セルビィ。」
セルビィは、セルビアに抱き付いた。
「セルビィ、早かったわね。大丈夫だった? 」
セルビィは、微笑んで
「はい。でも、王太子殿下には逢えませんでした。」
セルビア達は、困惑の顔をして
「アラン殿下達に、逢えなかったの? 」
「殿下達が、呼び出したのに? 」
「やはり、お加減が悪いのでしょうか? 」
「そうですね、熱でも出たのかしら。」
令嬢達は、会えなかった理由を模索する。
「扉の前までは、行きました。」
セルビィは、話し出す。
「そこで、バレット伯爵令息と言う方にあって。」
セルビィは、哀しそうに目を反らした。
「王太子殿下は、豪の者には会わないそうです。」
「セルビィ。」
セルビアは、強くセルビィを抱き締めた。
「その為に、呼んだのね。」
「哀しい、ですわ。」
「シモン様は。殿下達は、本当に私達の事を嫌っていらっしゃるのね。」
セルビア達は、哀しそうに目を伏せた。
「姉様。」
セルビィは、姉様達に哀しい思いをさせた事に胸を痛めた。
(其れも之も、総てあの阿呆様達の所為です。神が許しても、僕が許しません。絶対に、許しません。)

セルビィは、阿呆様達を叩き潰す日を夢見て微笑むのであった。
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