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セルビィの欲しいもの。
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ガタガタと、馬車が揺れている。園遊会を後に馬車は、北に向かって進んでいた。このまま、進むと王都を出てしまう。
「セルビィ、何処に行くんだ? 」
ナルトは、声を掛けた。
「欲しい『もの』が、有るです。」
セルビィは、ナルトの疑問に答えた。
「欲しいもの? 」
セルビィは、微笑んだ。その微笑みに、ナルトは背筋を寒くする。
セルビィは、嬉しそうに馬車の窓から外を眺めている。有る一画に来ると、
「止めて下さい。」
そう言って、馬車を降りる。その姿は簡素な白いドレスと、金色の髪のまま。
慌てて、ナルトも馬車を降りる。
其処は、街の寂れた場所。簡単に言うと、スラムである。昼間と言うのに、何故か薄暗い。気にする事も無く、セルビィはその一画に入って行く。
「おい、何処に行く気だ。」
ナルトは、手を掴んでセルビィを止めた。当然だ、昼とは言え場所はスラム。セルビィの様な綺麗な子供が、入る場所ではない。直ぐに目に付き、カモにされるか。誘拐、されるか。
「ここは、お前の行く所じゃない。」
「欲しい『もの』が、有るです。」
セルビィは、ナルトの手を放した。そのまま、スラムに入って行く。
「欲しいものって!? 」
ナルトも、セルビィを追い掛けてスラムに入った。
スラムと言っても、働かなければ生きては行けない。
王都の汚い仕事や危ない仕事を、ここに住む住民は安い賃金でやっていた。
昼間は、どちらかと言うと大人より、働く場所さえ無い子供がスラムに残っていた。子供達は、人が多く暗い夕暮れ時。その時期に街に出て店から、食べ物を盗んでは その日を暮らしていた。そんな、場所にいったい何があるのか。
「こんな場所に、何が有るんだ? 何が、欲しいだ? 」
ナルトは、周りを警戒しつつセルビィを問いただす。
「うん、と。もう直ぐ、吊れます。」
「吊れる? 」
話している時には、もう周りを囲まれていた。
ナルトは、セルビィを庇う様に前に出る。
「こんな所に、綺麗なお嬢様が何のようだ。」
一人の少年が、現れた。年の頃は、十四 五歳か。
睨み付ける様に、角から出て来る。ナルトは、剣に手を置く。
「物見遊山か、お嬢様。」
右手の方から、声が上がる。先ほどの少年と同じ位の少年が顔を出す。
十四から十二歳位の少年少女がざっと十人程、セルビィとナルトを囲んでいた。
髪の色は、豪の者と言うより鮮やかな色合いであった。でも、中にはやはり黒い色合いの子供も混じっていた。
「出て行きな、お嬢様。有り金全部、置いて。」
リーダー格の少年が、凄んで言った。
「お金なんて、持って無いです。」
セルビィは、高飛車に言った。
「お金を持ち歩くほど、僕は身分が低くは有りません。」
「なっ!? 」
少年少女が、怒りを露わにする。
「おい、セルビィ。挑発するな。」
ナルトが、セルビィを背に庇いながら言う。
「欲しいなら、上げます。ナルト様、持ってる? 」
何の気なしに、セルビィは言う。其れが、僅かに残る少年少女のプライドを刺激する。
「いい気になるな!! 護衛が、居るからって。一人位で、俺達を倒せると思うなよ!! 」
セルビィは、首を傾げて少年達を見る。
「一人じゃ、無いです。」
「お前、いつから知ってた。」
ナルトが、呟いた。
「最初から。」
セルビィが、応えた。ナルトは、顔を押さえた。
「だから、か。」
こんな危ない所に、平気で入って行けたのは。俺以外の護衛が付いている事を、知っていたからかとナルトは頭を抱えた。
「あの父様が、護衛を一人だけなんて信じられません。」
「まあ、な。」
あの激愛、オヤジが護衛一人で納得するはずはない。
(やっぱ、こいつ怖ぇ。)
そんな、話しをしている内に次々と子供達は捉えられていく。
「くそう!! 役人だったのか!! 」
リーダー格の少年が叫ぶと、セルビィは応えた。
「違うです。」
「教会の奴等か!! 俺達は、孤児院なんて入らねぇからな!! 」
セルビィは、微笑みながら言った。
「神は、幼き貴方達を救うために施設を作られたのです。」
祈る様に手を胸元で、組んだ。それは、天使の様に神々しかった。
だが、ナルトの背筋に冷たいものが流れる。
「うるせえ!! 俺達は知ってるんだ!! 」
リーダー格の少年が、声を上げる。
「そうだ、俺達なんか小間使いとしか思ってないだろ!! 」
黒に近い髪の少年達が、叫んだ。
「大きくなれば、他国に奴隷として売るつもりの癖に!! 」
「そうだ、俺達だって。奴隷として、この国の商人達に売られるんだ。」
明るい髪の少年達も、言った。
「この国に、奴隷は無いです。」
セルビィは、首を傾げて言う。
「仕事斡旋て言いながら、今までの生活費用だ何のって言って借金負わせて売り払うんだ。」
「表向きは、雇用ですか。」
何で、こいつは(セルビィ)こうも難しい言葉を知っているのか。ナルトは、頭を抱えたくなった。
「そうだ、お嬢様には解らないだろ。」
「国から、出るです。」
「国を出るにも、身分証が無いんだよ。」
「なるほど。勉強に、なりました。」
セルビィは、微笑みながら頷いた。
「まあ、そんな事はどうでもいいです。」
「「そんな事!? 」」
少年達は、声を上げる。
「僕は、欲しい『もの』があって此所に来たんです。」
「欲しいもの、そう言えば言ってたな。何だ? 」
ナルトの言葉に、セルビィはリーダー格の縛られている少年の前に行き 目線を合わせる様に膝を折った。
「友達になって、下さい。」
天使の笑顔で、セルビィは言った。
「「「はあぁ!? 」」」
其所に居る、総ての者が意表を突かれ固まった。
「あれ? 」
セルビィは、不思議そうに こてん と愛らしく首を傾げた。
「セルビィ、何処に行くんだ? 」
ナルトは、声を掛けた。
「欲しい『もの』が、有るです。」
セルビィは、ナルトの疑問に答えた。
「欲しいもの? 」
セルビィは、微笑んだ。その微笑みに、ナルトは背筋を寒くする。
セルビィは、嬉しそうに馬車の窓から外を眺めている。有る一画に来ると、
「止めて下さい。」
そう言って、馬車を降りる。その姿は簡素な白いドレスと、金色の髪のまま。
慌てて、ナルトも馬車を降りる。
其処は、街の寂れた場所。簡単に言うと、スラムである。昼間と言うのに、何故か薄暗い。気にする事も無く、セルビィはその一画に入って行く。
「おい、何処に行く気だ。」
ナルトは、手を掴んでセルビィを止めた。当然だ、昼とは言え場所はスラム。セルビィの様な綺麗な子供が、入る場所ではない。直ぐに目に付き、カモにされるか。誘拐、されるか。
「ここは、お前の行く所じゃない。」
「欲しい『もの』が、有るです。」
セルビィは、ナルトの手を放した。そのまま、スラムに入って行く。
「欲しいものって!? 」
ナルトも、セルビィを追い掛けてスラムに入った。
スラムと言っても、働かなければ生きては行けない。
王都の汚い仕事や危ない仕事を、ここに住む住民は安い賃金でやっていた。
昼間は、どちらかと言うと大人より、働く場所さえ無い子供がスラムに残っていた。子供達は、人が多く暗い夕暮れ時。その時期に街に出て店から、食べ物を盗んでは その日を暮らしていた。そんな、場所にいったい何があるのか。
「こんな場所に、何が有るんだ? 何が、欲しいだ? 」
ナルトは、周りを警戒しつつセルビィを問いただす。
「うん、と。もう直ぐ、吊れます。」
「吊れる? 」
話している時には、もう周りを囲まれていた。
ナルトは、セルビィを庇う様に前に出る。
「こんな所に、綺麗なお嬢様が何のようだ。」
一人の少年が、現れた。年の頃は、十四 五歳か。
睨み付ける様に、角から出て来る。ナルトは、剣に手を置く。
「物見遊山か、お嬢様。」
右手の方から、声が上がる。先ほどの少年と同じ位の少年が顔を出す。
十四から十二歳位の少年少女がざっと十人程、セルビィとナルトを囲んでいた。
髪の色は、豪の者と言うより鮮やかな色合いであった。でも、中にはやはり黒い色合いの子供も混じっていた。
「出て行きな、お嬢様。有り金全部、置いて。」
リーダー格の少年が、凄んで言った。
「お金なんて、持って無いです。」
セルビィは、高飛車に言った。
「お金を持ち歩くほど、僕は身分が低くは有りません。」
「なっ!? 」
少年少女が、怒りを露わにする。
「おい、セルビィ。挑発するな。」
ナルトが、セルビィを背に庇いながら言う。
「欲しいなら、上げます。ナルト様、持ってる? 」
何の気なしに、セルビィは言う。其れが、僅かに残る少年少女のプライドを刺激する。
「いい気になるな!! 護衛が、居るからって。一人位で、俺達を倒せると思うなよ!! 」
セルビィは、首を傾げて少年達を見る。
「一人じゃ、無いです。」
「お前、いつから知ってた。」
ナルトが、呟いた。
「最初から。」
セルビィが、応えた。ナルトは、顔を押さえた。
「だから、か。」
こんな危ない所に、平気で入って行けたのは。俺以外の護衛が付いている事を、知っていたからかとナルトは頭を抱えた。
「あの父様が、護衛を一人だけなんて信じられません。」
「まあ、な。」
あの激愛、オヤジが護衛一人で納得するはずはない。
(やっぱ、こいつ怖ぇ。)
そんな、話しをしている内に次々と子供達は捉えられていく。
「くそう!! 役人だったのか!! 」
リーダー格の少年が叫ぶと、セルビィは応えた。
「違うです。」
「教会の奴等か!! 俺達は、孤児院なんて入らねぇからな!! 」
セルビィは、微笑みながら言った。
「神は、幼き貴方達を救うために施設を作られたのです。」
祈る様に手を胸元で、組んだ。それは、天使の様に神々しかった。
だが、ナルトの背筋に冷たいものが流れる。
「うるせえ!! 俺達は知ってるんだ!! 」
リーダー格の少年が、声を上げる。
「そうだ、俺達なんか小間使いとしか思ってないだろ!! 」
黒に近い髪の少年達が、叫んだ。
「大きくなれば、他国に奴隷として売るつもりの癖に!! 」
「そうだ、俺達だって。奴隷として、この国の商人達に売られるんだ。」
明るい髪の少年達も、言った。
「この国に、奴隷は無いです。」
セルビィは、首を傾げて言う。
「仕事斡旋て言いながら、今までの生活費用だ何のって言って借金負わせて売り払うんだ。」
「表向きは、雇用ですか。」
何で、こいつは(セルビィ)こうも難しい言葉を知っているのか。ナルトは、頭を抱えたくなった。
「そうだ、お嬢様には解らないだろ。」
「国から、出るです。」
「国を出るにも、身分証が無いんだよ。」
「なるほど。勉強に、なりました。」
セルビィは、微笑みながら頷いた。
「まあ、そんな事はどうでもいいです。」
「「そんな事!? 」」
少年達は、声を上げる。
「僕は、欲しい『もの』があって此所に来たんです。」
「欲しいもの、そう言えば言ってたな。何だ? 」
ナルトの言葉に、セルビィはリーダー格の縛られている少年の前に行き 目線を合わせる様に膝を折った。
「友達になって、下さい。」
天使の笑顔で、セルビィは言った。
「「「はあぁ!? 」」」
其所に居る、総ての者が意表を突かれ固まった。
「あれ? 」
セルビィは、不思議そうに こてん と愛らしく首を傾げた。
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