悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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天使の中の悪魔。

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「とお様。ゆきてす、ゆきてす!! 」
セルビィは、岩山に残る雪を見て喜んでいた。
セルビィに『あそこに、いきたい。』と、せがまれ家を出たが。ここまで、三日 掛かってしまった。暗くなったから帰ろうと言っても、セルビィは駄々をこねて帰ろうとしなかった。
出掛けに、まだ開いて無い荷物を持たされて本当に良かったとボルトは友に感謝した。しかし、雪なら王都でも積もらないが目にする物だ。何故ここまで、セルビィが喜んでいるのか ボルトは首を捻った。
「雪なら、王都でも降るだろう。」
ボルトの言葉に、父親の肩に座っていたセルビィは子リスの様に首を傾げた。
「ゆきは、みすになるんてすよ。しらないてすか。」
「えっ!? 」
セルビィの言葉に、二人は驚いた。
「確かに、雪は水になる。だが、町まで運ぶとなると途中で溶けて無くなってしまう。」
セラムは、唸った。セルビィは一生懸命知恵を絞って水の事を考えたに違いない。異を唱えるのは可哀想だが、これは事実だ。
「はこびまてんよ。」
「えっ!? 」
セルビィの言葉に、二人は再び驚いた。
「ここに、すみます。」
「いや、其れだと王都から遠くなってしまうぞ。」
「とおく、なっては だめなのてすか? 」
父親を見下ろして、首を傾げる。
「いや、別に 遠くなっても。ん!? 」
セラムは、唸った。
「確かに、俺達が移転しても 彼奴らは気にしないだろう。」
セルビィは、ボルトの言葉に喜んだ。
「みすを、溜めて ここにすみます。」
セラムとボルトは、呆然とした。長年解決し無かった事が、今解決したのだった。
「つきは、なにが 足りないんてすか? 」
セルビィは、再び足りない物を聞いてきた。
「とお様。なにが、足りないてすか? 」
ぐいぐい と、セルビィが聞いてくる。
「えっと 何が、足りないんだ? 」
セラムは、ボルトに聞いた。
「えっ、そうだな。食い物だな、麦を育てるにもこの土では。」
ボルトは、足元の土を握ってみせる。サラサラと、渇いた痩せこけた土 砂が舞う。
「つち なら、もりにたくさん有りますよ。」
「えっ!? 」
セルビィの言葉に、再度 二人は驚いた。
「もりのつちを、いっぱい ここに ひきつめましょう。」
セルビィは、にっこり笑って言った。
「木も、いっぱい うえましょう。とお様。」
セラムもボルトも、頭を抱えたくなった。今また、長年の悩みが解決した。
確かに、森の土は肥沃で良く植物も育っであろう。
木も移転すれば、日陰もでき住みやすくなる。
「お前、本当に五歳児か!! 転生者じゃないのか!? 」

転生者とは、今王都で流行っている本である。未来や違う世界から来た者や生まれ代わった者が、魔法や便利な道具を創り出すという話しだ。

つい、セラムは口走ってしまった。セルビィは首を傾げて。
「なに、いってるんてす。とお様。てんてい者は、ものがたりてす。けんじつを、見てください。」
子供とは思えない、冷たい目でセルビィは父親を見た。
「うう、天使が冷たい。」
セラムは、情けなくなり落ち込んだ。セルビィは、父親の頭をぽんぽんと撫でた。
「ても ほんを、読む。とお様は、いい子 いい子てす。」
「はふっ、天使!! 」
セラムは、天使を胸に抱き締めて頰をすり寄せた。
「だが、これで彼奴らはから援助を受けなくても済むかもしれない。」
ボルトは、言った。
「なら、セルビアの婚約解消を。」
二人が、顔を見合わせ喜んでいると。
「だめてす。まだ、婚約はきは だめてす。」
セルビィの言葉に、二人は驚いた。セルビィが一番、セルビアの婚約を嫌がっていたはずなのに。何故?
「あほの子の親に、しれたら。きっと、いじわるをされます。」
確かに、彼奴らなら遣りかねない。二人は、難しい顔をした。
「ここを、よくします。
それまて『しみつ』てす。ねえ様にも『しみつ』てす。」
人差し指を、口元に持ってきてセルビィは可愛らしく『しーっ』をした。
「はふっ、天使!! 」
二人は、天使に悶えた。
しかし、これは援助を受けながら、この地を秘密時に開拓し。時が来たら、開封すると言う事だ。
その時、とは。


「とお様、花てす。しろい、花てす。」
てててて と、花に向かってセルビィは駆けていく。
子供らしい、一面を見て二人は安心する。
「セルビィは、五歳児だよな。なんだ、あの頭の良さは。やっぱり、転生者。」
「お前、それ言うと また冷たい目で見られるぞ。」
「そ、其れは、いやだ。」
セラムの顔が青ざめる。
「しかし、いったい誰に似たんだ。」
「お前じゃ無い事は、確かだな。お前、脳筋だし。」
「お前も、だろうが。」
セラムはボルトに、言い返した。
「確かに、子供の思い付く事が 考えられないなんてな。」
ボルトは頭を掻いた。
「将来が、楽しみだな。」
「だろ、だろ。うちの子は、天使なうえに天才だからな。」
満面の笑みで、セラムは言った。親馬鹿で、あった。

(楽しみより、末恐ろしいかな。敵には、回したくはないよな。)
ボルトは、一人思った。

「はやく、ねえ様をおどろかせたいてす。」
にこにこと、白い花を見て微笑んでるセルビィは まさに天使だった。
その天使の笑顔の中に、悪魔を隠してセルビィは成長していく。その事に大人達は、まだ気付いていなかった。
セルビィ 五歳、夏。姉セルビアの婚約破棄の為に、突き進んでいく。
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