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「婚約解消、致しましょう。」

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「私と、婚約解消してくれ。」
彼の言葉は会場内に響いた。婚約披露パーティーが、婚約解消パーティーに変わる一言であった。

彼ガレットの言葉に、婚約者の女性は目を見開いた。

女性の名はエンゼル・フォン・パイ候爵令嬢。燃えるような赤毛に青い瞳、赤いドレスがよく似合っている。
男性にモテそうな美女である。モテではなく、彼女はとてもモテていた。色気のある顔立ち、はち切れそうな肉体美、何故か彼女は今まで婚約者が居なかった為、の令息と出会いを謳歌していた。

婚約披露であるが故、婚約者である令息のエスコートに付き合っていたが、親に無理矢理決められた婚約に彼女の顔には誰が見ても分かる愛想笑いを貼り付けていた。

(はあ…… 目が笑っていない。)
婚約者である彼は、エスコートを一応されながら心の中で愚痴た。

(愛想笑いが、引き攣っているぞ令嬢。)
口元を引き攣らせているエンゼルを彼は上から覗き見る。つい自分の眉間に皺がよる。

(親に決められた俺が嫌なのは分かるが、俺だって親に無理矢理婚約を決められたんだ。)
彼は、エンゼルの添えた手を振りほどきたくなってきた。

(君みたいに顔が良いだけのビッチ、結婚したいなんて思う訳ないだろ。)
親が勝手に決めてきた婚約者は男性と出会いを謳歌するビッチときた。彼は心の底から、彼女に対する嫌悪感で不快を示した。

何度かの顔合わせも、彼は嫌で嫌で堪らなかった。顔を合わせれば引き攣った愛想笑いで会話すらままならない。挨拶だけで無言、早く終わらないか何度も何度も時計を気にして見ている女性。そしてお開き。数回の顔見せを試みて、今日の婚約披露のパーティーに突入していた。

(そんなに嫌なら親に婚約解消を言えよ。俺は何時だって受けてやる。)
眉間の皺が深くなるのを彼は感じていた。

(貴族だから政略結婚は仕方ないのは分かるが、もう少しマシな女性は居なかったのか母上。こんなビッチ、下半身に慎みのない女性など俺は嫌だ。)
聞くところによると、数日付き合っただけで男性と別れていると言う。一日デートをしただけで別れを告げられた男性も居ると言う。

(貢がせるだけ貢がせて、金が無くなったらポイだと。)
現にポイさられた男性はエンゼルの事を『ビッチ』と罵っている。

(つまりヤル事はヤッてるって事だ。『ビッチ』と言われるからには。)
最初は誘ってきて、『飽きた』とポイ捨てされたと嘆いている男性もいる。

(結婚しても絶対浮気をするだろう。この顔は絶対浮気をする顔だ!! )
豊満な身体と美人であり過ぎるエンゼルを彼は苦々しく睨みつけた。

(俺は恋愛結婚がしたいんだ!! それが無理なのは分かっている、だがせめてお互い尊敬し合える夫婦になりたい。)
出会いは政略結婚でも、愛し愛される仲になる夫婦はいる。彼は其れを期待して、エンゼルの名前を聞いて足元から崩れた。それでも眉間に皺を寄せながらも、歩み寄ろうと努力はしてみたがビッチへの不快感はぬぐえなかった。

(貞操観念の無い女性は嫌だ!! 俺だけを好きになってくれる、妻だけを好きになれる女性がいい!! 愛人なんて作りたくもないし、作られたくもない!! )
彼は心の中で葛藤する。

(結婚したら、俺をを思ってくれるか? いや、無理だろう。)
彼は、今を逃したら駄目だと一大決心をする。

(この場所で駄目だ。後がない。)

ふっ、とエンゼルから彼は離れた。

「こんな場所で言うのはナンだが、エンゼル嬢。」
彼の声にエンゼルは顔を上げた。向かい合うエンゼルの青いの瞳に自分が写し出される。

何事かと、会場が静まり返った。

「私と、婚約解消をしてくれ。」
静まり返った会場にガレットの声が響いた。

ガレットの言葉に目を見開いたエンゼルはその目を細めた。

「婚約解消、致しましょう。」
満面の笑みで彼女エンゼルは彼ガレットに応えた。

会場内が驚きに声を上げた。

特に、両家の親が。







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