4 / 5
無知ゆえのしくじり。
しおりを挟む
まさかそこまで酷い不良物件とは知らずアルテミスは王命として婚約を受けてしまった。
(だって、普通王からの打診て王命だと思うじゃない。)
しかし王は年頃の令嬢を持つ貴族総てに打診をして断られていた。
(ずっと辺境にいたからそんなことを知らなかったわ。)
アルテミスは都会の噂に疎かった。
(だって、お兄様は何時もため息をつきながら王の命令を聞いていたじゃない。)
王は信用おける辺境侯に色んなことを最終的に泣き落としで縋っていた、アポロも仕方がないとその仕事をため息ながらしていた。
(王命の婚姻を断ると、辺境に益々嫌がらせを受けると思ったのよ。)
王家、王はギリシャ侯爵家を信用しまくっていた。寧ろ護りの要の侯爵家に離れていかないでと、立てまくっていた。それはこの国の殆の貴族も国民も分かっていた。
(私達、野蛮な田舎者だと馬鹿にされてないの? )
『野蛮な田舎者』と辺境をそう思い言う者はいない。もしいようなら貴族社会では馬鹿にされ蔑まれる存在になる。
つまり『なにこの人、無知ね』になる。自身の馬鹿を象徴したいのならうってつけだ。
先程王子達の田舎者発言と野蛮人発言に笑った貴族は、そう発言したクピド王子とプシュケー公爵令嬢。そう思って笑っている王妃に向けて、嗤笑していたのだ。
クピドは馬鹿だがプシュケーは本来頭が良かった。馬鹿なピクドを支えるために彼女は猛勉強に励んだ。総て令嬢に婚姻を断られ、最終的に王の泣き落とし(十八番)で自分にクピドとの婚姻が回って来ると思っていた。
しかしそこでアルテミスの登場だ、国の護りの要の侯爵家の御令嬢の願いを国が断るわけはない。
プシュケーもまた追い詰められていた。
愛するクピドと結ばれるには総べてを捨てるしかないと、この茶番を演じるしかなかったのだ。
ギリシャ侯爵令嬢を怒らせ、周りから嘲りを受けようとも、自らクピドと共に国から追放をせしめようとしていた。
方や無知ゆえに婚約を承諾したアルテミス、方や国を捨ててまでクピドに思いを貫こうとするプシュケー。
アルテミスに勝てる見込みはなかった。
(いえ、勝ちたくないんですけど!! )
貴族社会を鬱陶しがり、辺境で自由気儘に生きてきたアルテミスは己の迂闊さに頭を悩ませていた。
(少しでも社交界に出ていれば、こんなことにはならなかったのね。)
己の無知ゆえのしくじりを恥じた。
(どうすればいいの? このままではクピド王子が好きだとみんなに思われるかも知れない。本当に王命だと思っていたと言えば、自分が無知の馬鹿だと知られてしまう。)
その場の貴族達は思った。
まさかアルテミス令嬢がクピド王子を好いていたとは。相手が相手、あのクピドゆえに。
国の為に、辺境と王都の貴族の橋渡しのために自ら犠牲になられたのではと彼等は思っていたのだ。
だが先程のギリシャ辺境候の言葉の『花よりだんご虫が好き』ならば、それもあり得ると。
まさかギリシャ侯爵の令嬢が無知の為、あのクピドと婚約を望むとは思ってもいなかった。
「や、やめろ!! 喧嘩はやめてくれ!! 」
ふらふらと、頭にたん瘤をこしらえたクピド王子がアルテミスとプシュケーの二人の間に入り込む。
「頼む、私の為に争わないでくれ!! 」
片頬を膨らませ鼻血を垂らしながらクピド王子はアルテミスの前で膝を折った。
「許してくれ、アルテミス。どうか、私と婚約を破棄してくれ!! 」
土下座する。
(いえ、もう婚約破棄してるんですけど!! )
頭を床にこすりつけて、元婚約者アルテミスに懇願した。
「君の気持ちは分かっている、だが私にはプシュケーがいるのだ!! 」
「クピド様!! 」
(私の気持ちて、なに!? )
プシュケーは土下座をするクピド王子に縋り付いた。
「君と話したことも会ったこともない私を、君が何処で見初めたかは分からない。」
(会ったこともないのに見初めるはずないじゃない。王都に来たのも今回が初めてよ!! )
「君がプシュケーを嫉妬のあまり虐めていたのも分かっている!! 」
(辺境からどうやって虐めるのよ!! )
「総てはカッコいい、私が悪いのだ!! 」
(いえ、普通ですわ。)
「カッコよすぎて、すまない!! 」
(普通ですわよ!! )
自称イケメンのクピド王子は自分をカッコいいと卑下する。
(ちょっとやめて!! これ以上騒ぎを大きくしないで!! )
「君の気持ちを弄んでしまった。」
(弄ばれてないから!! )
「ほら、歌にもあるだろ。違うタイプの人を好きになってしまうと。」
(そんな歌あったかしら!? )
「揺れる男心~ よくあるだろう~♪ 」
なぜか歌い出すクピド。
(知らないわよ!! )
「こめんなさいね、私の所為よ♪
二人の心~ 弄んで、ちょっぴり楽しんでたの~ 思わせぶりな態度で~♪ だから… けんかはやめて~ 二人を止めて~ 私の為に、争わないで~ もう、こ・れ・い・じょう~ ♪ て。」
【けんかはやめて・by河合奈保子】
(なに気持ちよさそうに歌いきっているのよ!! )
みんなの前で、クピドは歌いきった。
「許してくれ!! 二人に好かれちょっぴり優越感に慕っていた!! 思わせぶりな態度を取って悪かった!! 」
「いつ、思わせぶりな態度を取ったのよ!! 」
アルテミスは王子の言葉に切れ、心の声を表に吹き出した。
(だって、普通王からの打診て王命だと思うじゃない。)
しかし王は年頃の令嬢を持つ貴族総てに打診をして断られていた。
(ずっと辺境にいたからそんなことを知らなかったわ。)
アルテミスは都会の噂に疎かった。
(だって、お兄様は何時もため息をつきながら王の命令を聞いていたじゃない。)
王は信用おける辺境侯に色んなことを最終的に泣き落としで縋っていた、アポロも仕方がないとその仕事をため息ながらしていた。
(王命の婚姻を断ると、辺境に益々嫌がらせを受けると思ったのよ。)
王家、王はギリシャ侯爵家を信用しまくっていた。寧ろ護りの要の侯爵家に離れていかないでと、立てまくっていた。それはこの国の殆の貴族も国民も分かっていた。
(私達、野蛮な田舎者だと馬鹿にされてないの? )
『野蛮な田舎者』と辺境をそう思い言う者はいない。もしいようなら貴族社会では馬鹿にされ蔑まれる存在になる。
つまり『なにこの人、無知ね』になる。自身の馬鹿を象徴したいのならうってつけだ。
先程王子達の田舎者発言と野蛮人発言に笑った貴族は、そう発言したクピド王子とプシュケー公爵令嬢。そう思って笑っている王妃に向けて、嗤笑していたのだ。
クピドは馬鹿だがプシュケーは本来頭が良かった。馬鹿なピクドを支えるために彼女は猛勉強に励んだ。総て令嬢に婚姻を断られ、最終的に王の泣き落とし(十八番)で自分にクピドとの婚姻が回って来ると思っていた。
しかしそこでアルテミスの登場だ、国の護りの要の侯爵家の御令嬢の願いを国が断るわけはない。
プシュケーもまた追い詰められていた。
愛するクピドと結ばれるには総べてを捨てるしかないと、この茶番を演じるしかなかったのだ。
ギリシャ侯爵令嬢を怒らせ、周りから嘲りを受けようとも、自らクピドと共に国から追放をせしめようとしていた。
方や無知ゆえに婚約を承諾したアルテミス、方や国を捨ててまでクピドに思いを貫こうとするプシュケー。
アルテミスに勝てる見込みはなかった。
(いえ、勝ちたくないんですけど!! )
貴族社会を鬱陶しがり、辺境で自由気儘に生きてきたアルテミスは己の迂闊さに頭を悩ませていた。
(少しでも社交界に出ていれば、こんなことにはならなかったのね。)
己の無知ゆえのしくじりを恥じた。
(どうすればいいの? このままではクピド王子が好きだとみんなに思われるかも知れない。本当に王命だと思っていたと言えば、自分が無知の馬鹿だと知られてしまう。)
その場の貴族達は思った。
まさかアルテミス令嬢がクピド王子を好いていたとは。相手が相手、あのクピドゆえに。
国の為に、辺境と王都の貴族の橋渡しのために自ら犠牲になられたのではと彼等は思っていたのだ。
だが先程のギリシャ辺境候の言葉の『花よりだんご虫が好き』ならば、それもあり得ると。
まさかギリシャ侯爵の令嬢が無知の為、あのクピドと婚約を望むとは思ってもいなかった。
「や、やめろ!! 喧嘩はやめてくれ!! 」
ふらふらと、頭にたん瘤をこしらえたクピド王子がアルテミスとプシュケーの二人の間に入り込む。
「頼む、私の為に争わないでくれ!! 」
片頬を膨らませ鼻血を垂らしながらクピド王子はアルテミスの前で膝を折った。
「許してくれ、アルテミス。どうか、私と婚約を破棄してくれ!! 」
土下座する。
(いえ、もう婚約破棄してるんですけど!! )
頭を床にこすりつけて、元婚約者アルテミスに懇願した。
「君の気持ちは分かっている、だが私にはプシュケーがいるのだ!! 」
「クピド様!! 」
(私の気持ちて、なに!? )
プシュケーは土下座をするクピド王子に縋り付いた。
「君と話したことも会ったこともない私を、君が何処で見初めたかは分からない。」
(会ったこともないのに見初めるはずないじゃない。王都に来たのも今回が初めてよ!! )
「君がプシュケーを嫉妬のあまり虐めていたのも分かっている!! 」
(辺境からどうやって虐めるのよ!! )
「総てはカッコいい、私が悪いのだ!! 」
(いえ、普通ですわ。)
「カッコよすぎて、すまない!! 」
(普通ですわよ!! )
自称イケメンのクピド王子は自分をカッコいいと卑下する。
(ちょっとやめて!! これ以上騒ぎを大きくしないで!! )
「君の気持ちを弄んでしまった。」
(弄ばれてないから!! )
「ほら、歌にもあるだろ。違うタイプの人を好きになってしまうと。」
(そんな歌あったかしら!? )
「揺れる男心~ よくあるだろう~♪ 」
なぜか歌い出すクピド。
(知らないわよ!! )
「こめんなさいね、私の所為よ♪
二人の心~ 弄んで、ちょっぴり楽しんでたの~ 思わせぶりな態度で~♪ だから… けんかはやめて~ 二人を止めて~ 私の為に、争わないで~ もう、こ・れ・い・じょう~ ♪ て。」
【けんかはやめて・by河合奈保子】
(なに気持ちよさそうに歌いきっているのよ!! )
みんなの前で、クピドは歌いきった。
「許してくれ!! 二人に好かれちょっぴり優越感に慕っていた!! 思わせぶりな態度を取って悪かった!! 」
「いつ、思わせぶりな態度を取ったのよ!! 」
アルテミスは王子の言葉に切れ、心の声を表に吹き出した。
45
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
今、婚約発表した2人は聞かせたいことがある!
白雪なこ
恋愛
短編「今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!」に出てきた王弟ジーリアス・エンゲレスの婚約発表の話です。
彼から大事な話があるそうなので、聞いてあげてください。
幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。
白雪なこ
恋愛
「婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。」に出てきた、王女殿下視点の話です。親友を害そうとしたアレンが許せないそうで、ものすごーーーく怒ってます。怖いです。可愛いアリアンは出て来ません。アレンのやらかしが凶悪です。前作でのざまあが足りないようなので、家族にも責任をとってもらいました。最後の〆はコメディです。(作品に含まれる要素の異世界転生は前話のヒロイン=ボスのことです)
*外部サイトにも掲載しています。
私の婚約者を狙ってる令嬢から男をとっかえひっかえしてる売女と罵られました
ゆの
恋愛
「ユーリ様!!そこの女は色んな男をとっかえひっかえしてる売女ですのよ!!騙されないでくださいましっ!!」
国王の誕生日を祝う盛大なパーティの最中に、私の婚約者を狙ってる令嬢に思いっきり罵られました。
なにやら証拠があるようで…?
※投稿前に何度か読み直し、確認してはいるのですが誤字脱字がある場合がございます。その時は優しく教えて頂けると助かります(´˘`*)
※勢いで書き始めましたが。完結まで書き終えてあります。
婚約破棄ですって?私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?
花見 有
恋愛
「ダーシャ!お前との婚約を破棄する!!」
伯爵令嬢のダーシャ・パレデスは、婚約者であるアーモス・ディデス侯爵令息から、突然に婚約破棄を言い渡された。
婚約破棄ですって?アーモス様は私がどうして婚約者になったのか知らないのかしら?
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。
window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。
「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」
ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。
今、婚約破棄宣言した2人に聞きたいことがある!
白雪なこ
恋愛
学園の卒業と成人を祝うパーティ会場に響く、婚約破棄宣言。
婚約破棄された貴族令嬢は現れないが、代わりにパーティの主催者が、婚約破棄を宣言した貴族令息とその恋人という当事者の2名と話をし出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる