【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。

❄️冬は つとめて

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切れました。

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辺境から初めて訪れた王都で、アルテミスは初めて舞踏会と言うものに出席をした。

その日は国王主催の舞踏会で、アルテミスは兄のエスコートで会場入りをした。兄が離れたその隙に、とんでもない事が起こるとは彼女は思いもよらなかった。

キラキラと煌く王城の広いダンスホールの王座の前で、この国の第三王子が婚約者である辺境候の妹君の御令嬢アルテミス・ギリシアに婚約破棄を叩きつけた。

「アルテミス、お前との婚約は破棄させてもらう!! 」
そう宣ったのは、この国の第三王子クピド・フォン・オリンパス。イケメンの、本当はイケメンの、本当の本当は上の金髪碧眼の王子である。

「そうですわ。あなたのようなに、クピド様は相応しくないわ。」
クピド王子の横で肩を抱かれた御令嬢、プシュケー・フォン・オリンピア公爵令嬢が王子に寄り添いアルテミスを罵倒する。柔らかい金髪に豊満な肉体を誇示するような真っ赤なドレスを身に纏い、真っ赤な唇を歪ませアルテミスを罵倒する。

周りにいた貴族達は、突然何が起こったかと呆然としていた。何故なら今日はおめでたい秋穫祭、神に感謝の意を現す祭りの舞踏会。

そして此処は玉座の前、国王陛下と王妃陛下のおわす前。

「お前はプシュケーを嫉妬のあまり虐めたと言うではないか!! なんと、恐ろしい。」
「恐かったですわ~、クピドさま~ぁ。」
プシュケー公爵令嬢はクピド王子の腕に、豊満な胸を擦り寄せる。鼻の下を伸ばした王子はアルテミスに振り返ると見下すように言い放った。

の令嬢め!! 」

静かに黙って話を聞いていたアルテミスは、下げていた顔を上げた。その澄んだ水のように青い瞳を目の前の二人に向ける。流れる白金の髪は光を浴びてキラキラと輝いていた。ゴテゴテとした飾りなどなく、動きやすい淡い水色のドレスは彼女の流動的な美しさを物語っていた。

「まあ恐い。今、私を睨みましたわ。」
「やはりだな!! で育っただけのことはある!! 」

王子は殊のほか、辺境の地の野蛮さを強調する。その言葉に促されて嘲り笑う者と、何とかしろよと目を漂わせる者とに別れた。国王ヘパイトスはオロオロ瞳を漂わせ、王妃アフロディテは何食わぬ顔でアルテミスを卑笑していた。

「本当にですわ。クピド様には、辺境で育ったは相応しくありませんわ。」
「そうだ。私には、プシュケーのように宣伝された美しさを持つ公爵令嬢が似合っている!! 」
王子はプシュケーの肩をますます抱き締める。プシュケーの豊満な胸が王子の胸にあたり、潰れている。

「……分かりました。そのを慎んで、お受けいたします クピド様。」
アルテミスは無表情だった顔を笑顔に変えて、二人に応えた。

「そうか、辺境で育った野蛮な者だが聞き分けはよいな。」
「身の程を知ったのですわ。王都で知識を得て、野蛮ながらに。」
何処までも辺境を野蛮と二人は嘲り笑う。王妃もクスクスと笑えば、周りの貴族達も大半は笑いだした。
国王は宰相に縋るように目を向けたが、宰相は貴方が何とかしろよと睨み返す。

「これで、私はプシュケーと婚約が出来るな。」
「嬉しいですわ~ クピドさま~ぁ。」
見詰め合い喜び合う二人に、アルテミスは静しずと近づいていく。

「ご婚約、おめでとうございます。クピド様、プシュケー様。」

アルテミスは淑女の礼を二人に向ける。優しく微笑みながら二人に声をかけた。

「最後に一言、宜しいでしょうか? クピド様。」

自分達を祝福した、に機嫌がよくクピド王子はそれを許した。

「何だ? 言ってみろ。」
「はい。」

寛大さを見せるようにクピド王子は聞き返す。

「あら…… 」
「えっ? 」
「頬に蚊が、」

アルテミスは静かに扇子を取り出しクピド達の目の前で広げ、閉じた。

バコーーン!!

アルテミスの左手に持った扇子が、横一文字にクピド王子の右頬に炸裂した。クピドは白い小さな個体を何個か空に飛ばし、赤い鼻血と共にコロコロと床に何回か転がり大きな柱に当たって止まった。

「ク、クピド様!! 」
「「「「  !!  」」」」

プシュケーは叫び慌てて転がるクピド王子に駆け寄った。
周りの貴族達は何が起こったか頭が追い付かず呆然と見ていた。

アルテミスは一言ではなく、一打をクピド王子の頬に食らわせたのであった。




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