10 / 22
勇者の誕生。
しおりを挟む
それはまるで儀式のようであった。皆に囲まれ見守る中、アゼリア・フォン・ライラック伯爵令息はフォークの先に刺された緑の野菜を見つめていた。
ゴクリとつばを飲み込む。
皆の目が、自分と緑の野菜を交互し祈るように見つめていた。
逃げ場はない。
アゼリアの行動で、ローズとスコットの人生が決まる。
カタカタと震える手で、持っているフォークを口元に持ってくる。
皆が固唾を呑んで見つめている。
アゼリアはギュッと目を瞑って、その野菜の先を咥えた。キャシと歯で切る、口いっぱいに青臭い苦味がアゼリアを襲った。
アゼリアは直ぐに口の中から、吐き出したかった。だが、祈るように見つめる皆の同調圧力に吐くことは許されなかった。
噛まずにゴクリと飲み込んだ。
「「「「「うおおぉぉぉぉーーーっ!! 」」」」」
その場が歓喜に湧いた。
「「やりましたわ、坊ちゃま!! 」」
「「漢だぜ、アゼリア様!! 」」
「「アゼリア君、ありがとう。」」
「アゼリア、よく頑張ったわ。」
「アゼリア、我が義弟よ。この恩は忘れない。」
パチパチと拍手喝采が鳴り止まない。そして、アンコールの声が何処からか上がった。
「「「もう一口、もう一口!! 」」」
同調圧力に、アゼリアの逃げ場はない。アゼリアはもう一口、その緑の野菜を口の中に入れた。
アゼリアの頬に、涙が一筋流れた。『死なばもろとも』『毒を食らわば皿まで』、アゼリアはフォークの先に付いている。緑の野菜を全て口の中に入れて、飲み込んだ。ガクリと、アゼリアは全身の力が抜け、その場に両膝を付く。
その時、アゼリアは漢になった。
皆の見守る中、ローズが戦いに疲れ打ちひしがれるアゼリアにゆっくりと近づいた。
「アゼリア、ありがとう。あなたのおかげで、私とスコット様の婚約解消は無くなりました。」
きらきらと女神のように優しい笑顔でローズは感謝の言葉をアゼリアに、述べる。
「ああ、ローズ。私を許してくれるんだね。」
「ええ、スコット様。アゼリアの頑張りに、私も応えなくては。」
((ありがとう、アゼリア!! ))
二人は手を握り合い、心の中でアゼリアに感謝の言葉を呟いた。
「今よ、スコット様。」
「「そうよ、今よ!! 」」
リラとローズの友達が、声をあげた。
スコットはローズから手を放すと、一歩下がり片膝をその場に付いた。そして懐から、小さな箱を取り出した。
箱を開けると、品のよいエメラルドグリーンの指輪が光った。自分色の指輪をローズに差し出す、スコット。
「ローズ、どうか受け取って欲しい。これからの人生、共に歩いて欲しい。」
それは、公開サプライズプロポーズであった。家同士で婚約は決まっていたが、スコットは自分の気持ちを伝えたかった。若い令嬢の意見ローズの好みを聞き、自ら選んだ指輪をこの日の為に用意したのだ。
「ローズ、愛している。私と、結婚しておくれ。」
「ええ、喜んて。スコット様。」
真っ赤になって、すっと左手を差し出す。スコットは立ち上がり、ローズの左手の中指に指輪を通した。
きらきらと輝く指輪よりも輝く笑顔で見詰め合う、二人。
「「おめでと。」」
「「おめでとうございます!! 」」
割れんばかりの祝福の声と、拍手。
(アゼリア、ありがとう。ピーマンを食べてくれて、ありがとう。)
ローズは、左手の婚約指輪を皆に見せながら心の中で弟に感謝の言葉を呟いた。
打ちひしがれたアゼリアは忘れ去られ、前途ある未来へ進む二人へと皆の目は向けられる。
ありがとうアゼリア、君の勇気を称えよう。
ありがとうアゼリア、君は二人の救世主だ。
ありがとうアゼリア、君の事は忘れない。
ありがとうアゼリア、ありがとう、ありがとう。
「ぼ、僕、ここにいるよ。」
アゼリアは嗚咽に苦しみなが、手をあげてアピールする。
ゴクリとつばを飲み込む。
皆の目が、自分と緑の野菜を交互し祈るように見つめていた。
逃げ場はない。
アゼリアの行動で、ローズとスコットの人生が決まる。
カタカタと震える手で、持っているフォークを口元に持ってくる。
皆が固唾を呑んで見つめている。
アゼリアはギュッと目を瞑って、その野菜の先を咥えた。キャシと歯で切る、口いっぱいに青臭い苦味がアゼリアを襲った。
アゼリアは直ぐに口の中から、吐き出したかった。だが、祈るように見つめる皆の同調圧力に吐くことは許されなかった。
噛まずにゴクリと飲み込んだ。
「「「「「うおおぉぉぉぉーーーっ!! 」」」」」
その場が歓喜に湧いた。
「「やりましたわ、坊ちゃま!! 」」
「「漢だぜ、アゼリア様!! 」」
「「アゼリア君、ありがとう。」」
「アゼリア、よく頑張ったわ。」
「アゼリア、我が義弟よ。この恩は忘れない。」
パチパチと拍手喝采が鳴り止まない。そして、アンコールの声が何処からか上がった。
「「「もう一口、もう一口!! 」」」
同調圧力に、アゼリアの逃げ場はない。アゼリアはもう一口、その緑の野菜を口の中に入れた。
アゼリアの頬に、涙が一筋流れた。『死なばもろとも』『毒を食らわば皿まで』、アゼリアはフォークの先に付いている。緑の野菜を全て口の中に入れて、飲み込んだ。ガクリと、アゼリアは全身の力が抜け、その場に両膝を付く。
その時、アゼリアは漢になった。
皆の見守る中、ローズが戦いに疲れ打ちひしがれるアゼリアにゆっくりと近づいた。
「アゼリア、ありがとう。あなたのおかげで、私とスコット様の婚約解消は無くなりました。」
きらきらと女神のように優しい笑顔でローズは感謝の言葉をアゼリアに、述べる。
「ああ、ローズ。私を許してくれるんだね。」
「ええ、スコット様。アゼリアの頑張りに、私も応えなくては。」
((ありがとう、アゼリア!! ))
二人は手を握り合い、心の中でアゼリアに感謝の言葉を呟いた。
「今よ、スコット様。」
「「そうよ、今よ!! 」」
リラとローズの友達が、声をあげた。
スコットはローズから手を放すと、一歩下がり片膝をその場に付いた。そして懐から、小さな箱を取り出した。
箱を開けると、品のよいエメラルドグリーンの指輪が光った。自分色の指輪をローズに差し出す、スコット。
「ローズ、どうか受け取って欲しい。これからの人生、共に歩いて欲しい。」
それは、公開サプライズプロポーズであった。家同士で婚約は決まっていたが、スコットは自分の気持ちを伝えたかった。若い令嬢の意見ローズの好みを聞き、自ら選んだ指輪をこの日の為に用意したのだ。
「ローズ、愛している。私と、結婚しておくれ。」
「ええ、喜んて。スコット様。」
真っ赤になって、すっと左手を差し出す。スコットは立ち上がり、ローズの左手の中指に指輪を通した。
きらきらと輝く指輪よりも輝く笑顔で見詰め合う、二人。
「「おめでと。」」
「「おめでとうございます!! 」」
割れんばかりの祝福の声と、拍手。
(アゼリア、ありがとう。ピーマンを食べてくれて、ありがとう。)
ローズは、左手の婚約指輪を皆に見せながら心の中で弟に感謝の言葉を呟いた。
打ちひしがれたアゼリアは忘れ去られ、前途ある未来へ進む二人へと皆の目は向けられる。
ありがとうアゼリア、君の勇気を称えよう。
ありがとうアゼリア、君は二人の救世主だ。
ありがとうアゼリア、君の事は忘れない。
ありがとうアゼリア、ありがとう、ありがとう。
「ぼ、僕、ここにいるよ。」
アゼリアは嗚咽に苦しみなが、手をあげてアピールする。
8
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。
藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」
憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。
彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。
すごく幸せでした……あの日までは。
結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。
それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。
そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった……
もう耐える事は出来ません。
旦那様、私はあなたのせいで死にます。
だから、後悔しながら生きてください。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。
感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。
たくさんの感想ありがとうございます。
次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。
このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。
良かったら読んでください。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる