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【番外編】 二 それから
【番外編】 二 それから【3】
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「もうすぐ年が明けますねぇ」
年の瀬が近づいてきた頃、縁側で温かいほうじ茶を啜っていたコンがしんみりと呟いた。
数日前から降り続けている雪のせいで、今日はいっそう寒さが厳しい。
底冷えするような気候の中、抹茶ぜんざいとほうじ茶で体を温めたが、またすぐに体の芯が冷えていった。
「今年もあっという間でしたねぇ」
「そうですか? 私はなかなか長い一年に感じましたよ」
「ギンは修行に勤しんでいるからでしょう」
「コンだって、毎日忙しいではありませんか」
「忙しいからこそ、あっという間に感じるのです」
「私は、忙しいときこそ、振り返れば長い日々だったように思いますよ」
「前から思っていたのですが、私とギンは双子なのに感性は似ていませんねぇ。姿はそっくりなのに」
「双子でも、個々で特性がありましょう」
私の両隣に座るコンとギンの会話に、ふっと笑みが零れる。
確かに、コンとギンは外見こそそっくりではあるが、内面はあまり似ていない。
ひょうきんでお調子者のコンと、真面目で物静かなギン。
どちらが兄でどちらが弟なのか……と思うときも珍しくはない。
滅多にないが、喧嘩をしたときには双方譲らないところなんかはそっくりだと思うものの、双子とはいっても性格はまったく違っている。
「似ていないからこそ、おもしろいのではないか」
「ええ」
「さすがは雨天様! 素晴らしいお言葉にございます! 雨天様のおっしゃる通りですね! 似ていないからこそ、こうして楽しい時間が過ごせるのです」
大袈裟なくらい騒ぐコンに、ギンが「コン、お茶が零れますよ」とたしなめる。
「わかってますよ。ギンは母上みたいですねぇ」
仲のいいふたりのやり取りに、また笑みが零れる。
「そうだ、お前たち」
その姿を見ながら、「今年の褒美はなにがいい?」と尋ねた。
一年に一度、どこぞの国からやってきた〝クリスマス〟というイベントがある。
もう過ぎてしまったが、それに倣うように年の瀬にはコンとギンの一年の働きを労い、ひとつ願いを聞いてやることにしている。
ギンはたいてい料理に関すること。
昨年は『ひとりで夕飯を作らせてくださいませ』と願い、その前の年は『秘伝の味噌の作り方を教えていただきたいです』と言われた。
さらにその前の年には、『私が一からひとりで作った甘味を明日のおやつにしてください』だった。
真面目で修業熱心のギンらしい望みなのだ。
反して、コンは毎年必ず『好きな甘味をたらふく食べたいです』と言う。
選ぶ甘味もほぼ毎年変わることなく、食いしん坊のコンらしい願いなのだ。
「私にできることなら、なんでもしてやろう」
「では……今年もお言葉に甘えまして」
先に口を開いたのは、ギンだった。
いつもコンの方がいち早く願いを口にするが、どうやらギンの願いははっきりと固まっているようだ。
「ああ。ギン、なにを望む?」
「……私が考案した甘味を食べていただけませんでしょうか」
「考案?」
「は、はい」
「お前が一からすべて考えたということか」
「はい。以前よりずっと、作ってみたい甘味がございまして……。少し前から頭の中で考えておりました。雨天様のご許可をいただけましたら、ぜひそれを作ってみたいのです」
ギンが緊張の面持ちでいるのは、自分の役目をしっかりとわきまえているからだろう。
年の瀬が近づいてきた頃、縁側で温かいほうじ茶を啜っていたコンがしんみりと呟いた。
数日前から降り続けている雪のせいで、今日はいっそう寒さが厳しい。
底冷えするような気候の中、抹茶ぜんざいとほうじ茶で体を温めたが、またすぐに体の芯が冷えていった。
「今年もあっという間でしたねぇ」
「そうですか? 私はなかなか長い一年に感じましたよ」
「ギンは修行に勤しんでいるからでしょう」
「コンだって、毎日忙しいではありませんか」
「忙しいからこそ、あっという間に感じるのです」
「私は、忙しいときこそ、振り返れば長い日々だったように思いますよ」
「前から思っていたのですが、私とギンは双子なのに感性は似ていませんねぇ。姿はそっくりなのに」
「双子でも、個々で特性がありましょう」
私の両隣に座るコンとギンの会話に、ふっと笑みが零れる。
確かに、コンとギンは外見こそそっくりではあるが、内面はあまり似ていない。
ひょうきんでお調子者のコンと、真面目で物静かなギン。
どちらが兄でどちらが弟なのか……と思うときも珍しくはない。
滅多にないが、喧嘩をしたときには双方譲らないところなんかはそっくりだと思うものの、双子とはいっても性格はまったく違っている。
「似ていないからこそ、おもしろいのではないか」
「ええ」
「さすがは雨天様! 素晴らしいお言葉にございます! 雨天様のおっしゃる通りですね! 似ていないからこそ、こうして楽しい時間が過ごせるのです」
大袈裟なくらい騒ぐコンに、ギンが「コン、お茶が零れますよ」とたしなめる。
「わかってますよ。ギンは母上みたいですねぇ」
仲のいいふたりのやり取りに、また笑みが零れる。
「そうだ、お前たち」
その姿を見ながら、「今年の褒美はなにがいい?」と尋ねた。
一年に一度、どこぞの国からやってきた〝クリスマス〟というイベントがある。
もう過ぎてしまったが、それに倣うように年の瀬にはコンとギンの一年の働きを労い、ひとつ願いを聞いてやることにしている。
ギンはたいてい料理に関すること。
昨年は『ひとりで夕飯を作らせてくださいませ』と願い、その前の年は『秘伝の味噌の作り方を教えていただきたいです』と言われた。
さらにその前の年には、『私が一からひとりで作った甘味を明日のおやつにしてください』だった。
真面目で修業熱心のギンらしい望みなのだ。
反して、コンは毎年必ず『好きな甘味をたらふく食べたいです』と言う。
選ぶ甘味もほぼ毎年変わることなく、食いしん坊のコンらしい願いなのだ。
「私にできることなら、なんでもしてやろう」
「では……今年もお言葉に甘えまして」
先に口を開いたのは、ギンだった。
いつもコンの方がいち早く願いを口にするが、どうやらギンの願いははっきりと固まっているようだ。
「ああ。ギン、なにを望む?」
「……私が考案した甘味を食べていただけませんでしょうか」
「考案?」
「は、はい」
「お前が一からすべて考えたということか」
「はい。以前よりずっと、作ってみたい甘味がございまして……。少し前から頭の中で考えておりました。雨天様のご許可をいただけましたら、ぜひそれを作ってみたいのです」
ギンが緊張の面持ちでいるのは、自分の役目をしっかりとわきまえているからだろう。
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