18 / 34
三章 共鳴する魂
一、癒えていく傷【1】
しおりを挟む
凜花が天界に来てから一か月以上が経った。
その間に外に出たのは、街に下りた二回だけ。相変わらずひとりで外に出ることは叶わず、屋敷や庭で過ごす日々を送っていた。
天界に来る前なら、こんな生活には耐えられなかったかもしれない。
しかし、傍には常に桜火と蘭丸たちがいてくれる。だから、暇を持て余すようなことはなかった。
屋敷の中ではかくれんぼをしたり、庭に出ては花を愛でたり果実を食べたり。下界にいたときには考えられないような生活だったが、これが意外にも楽しかった。
テレビやネットどころか、スマホも天界では使えないと知って解約してきてしまったため、これまでに暇潰しとして使っていたものはなにもない。
それでも、そういったものを恋しいと思うこともなかった。
唯一、スマホがあれば……と思うことはあったが、ネット環境などない天界においては持っていてもおもちゃ同然である。
もともと友人がおらず、仕事以外で連絡を取るような相手もいなかった凜花にとっては、スマホもなければないで気にせずにいられるものだった。
「姫様―、聖様が帰ってきたです」
「お出迎えするです」
庭で蘭丸と菊丸と遊んでいたとき、ふたりが急になにかの気配を察するように笑い、玄関の方へと促した。
「蘭ちゃんと菊ちゃんって、聖さんが帰ってきたらすぐに気づくよね? どうして?」
蘭丸たちを追いながら、後ろから問いかけてみる。
「龍は気配でわかるです」
「主の気配は特にわかるです」
よくわからないが、龍同士だと感覚でわかるということらしい。
今度、聖か桜火に訊いてみようと考えると、前から彼が歩いてきた。
「ただいま、凜花」
「おかえりなさい。今日は早かったんだね」
「ああ、仕事が片付いたからな。たまには凜花とゆっくりしようと思って」
玄信から、聖がとても忙しい人であるということは聞いている。
そうでなくても、龍神である聖が普通の人よりもずっと多忙なのは、種族こそ違えどなんとなく理解はできる。
それなのに、こうして早くに帰ってきてくれて、自分と過ごそうとしてくれる気持ちが嬉しい。そう感じた凜花は、素直に笑みを零していた。
聖は凜花とふたりきりで過ごすつもりだったようだが、蘭丸と菊丸にせがまれて四人で庭に行くことになった。
蘭丸たちは落ちていたハクの実を拾い、籐のカゴに入れている。
どうやら、料理係に頼んで砂糖で煮詰めてもらうと思っているらしい。
「お砂糖と煮詰めるとおいしいです」
「お餅につけて食べるです」
いわゆる、ジャムやコンフィチュールのようなものになるのだろうか。
お餅と合うのかはさておき、天界の食文化は日本食にとても近く、凜花にとってはそれがありがたかった。
ここで出てくる料理が癖のあるものばかりだとしたら、下界が恋しくなっていたかもしれない。ところが、雲飴を始めとして、出てくる料理は和食に近かった。
これは嬉しい誤算である。
凜花はもともと好き嫌いがほとんどないが、和食を好んでいた。
天界全体のことはわからないが、この屋敷で出てくるものは慣れ親しんだ味付けに近いものが多い。そういった意味ではひとつ安心材料ではあった。
「下界が恋しいか?」
「え?」
蘭丸と菊丸から少し離れた場所にいた凜花は、拾った三つのハクの実を抱えるようにして聖を見上げた。
彼の瞳は真っ直ぐだったが、そこには不安と心配の色が浮かんでいる。
少し考えたあとで、凜花は首を小さく横に振った。
「もし向こうに帰っても、頼れる人はいないから。両親も友達も……。仕事はまた探せるけど、私を必要としてくるような人はいない。だから……」
両親はともかく、友人がいないのはきっと自分のせいでもある。
確かに、友人ができにくい環境下に置かれてはいたが、それだってもっと努力していればなにかが変わっていたかもしれない。
そういった部分を怠ってきた自覚はあったため、この言い方はずるい気もした。
「もしよければ、聞かせてくれないか。あの日、凜花の魂があんなにも傷ついていた理由を」
それがいつのことを言っているのか、すぐにわかった。
聖と嵐山の池で出会ったときのことだろう。
凜花はわずかにためらいつつも、彼を見つめる。
優しい眼差しの聖が、興味本位で尋ねているわけではないのは伝わってくる。
戸惑いを抱えつつも、彼に聞いてほしいと思った。
ずっと誰にも言えずにいた、胸の内を――。
凜花が両親を亡くしたのは、五歳のときだった。
ある日曜日、親子三人で動物園へと出かけ、楽しい一日を過ごした帰り道のこと。
対向車線を走っていたワゴン車が、急に凜花たちが乗っていた車に突っ込んできた。
凜花とともに後部座席に乗っていた母親は、咄嗟に身を挺して凜花を庇った。
父親も大怪我を負って病院に運ばれたが、両親は程なくして息を引き取った。
ただ、凜花はこの頃の記憶が曖昧で、事故のこともよく覚えていない。
恐らく、精神的なショックも大きかったのだろう。
交通事故で両親を亡くしたということ以外、ずっとなにも知らなかった。
のちに、高校を卒業するまでお世話になっていた児童養護施設の職員から、施設を出る直前に詳細を聞いたのだ。
児童養護施設は、凜花にとっては息苦しい場所だった。
生きる場所があったのはありがたいことだったのかもしれないが、施設の職員に疎ましがられていた凜花にとって居心地が好いとは言えなかったからである。
これからひとりで生きていくのは不安だった反面、それでもようやく施設を出られることに当時は心のどこかで安堵感もあった。
そして、就職先のハヤブサ便で出会ったのが凜花よりも四歳年上の茗子だった。
美人で勝気な性格の彼女は、気が強そうな見た目とは裏腹に優しく接してくれた。
なにもわからない凜花に、業務を一から教えてくれたのは茗子である。
わからないことがあれば丁寧に説明して、ミスをしたときにはなにがいけなかったのかを教えてくれ、理解できないでいると根気よく伝え直してくれた。
凜花にとって、茗子は両親以外で初めて頼れる存在となり、彼女も凜花をとても可愛がっていた。
茗子の態度ががらりと変わったのは、凜花が仕事を辞める半年ほど前のこと。
最初は無視をされ、その理由がまったくわからなかったが、半月ほど経った頃に彼女に『なにか気に障ることをしたのなら謝りたい』と言うと怒鳴りつけられたのだ。
『この泥棒猫!』と……。
ドラマでしか聞いたことのないセリフを、まさか自分が浴びせられる日が来るとは思ってもみなかった。
しかも、心当たりがまったくなく、凜花の戸惑いは相当のものだった。
そんな凜花に、茗子は付き合っていた恋人から『凜花ちゃんを好きになったから別れたい』と切り出されて振られたことを、心底悔しげに口にした。
彼女の恋人は一流企業に勤めており、それをよく自慢されていた。
凜花は、幸せそうな茗子を羨ましく思ったことはあったが、彼女の恋人には数回しか会ったことがなく、連絡先も知らない。
茗子に紹介されて何度かふたりと食事を共にしたことはあったが、それだって毎回彼女に誘われて同行していたようなものである。
茗子の手前、できるだけ愛想よく振る舞ってはいたものの、彼女の恋人とはふたりきりで話したこともなく、好きになられる理由もない。
だから、ある日突然始まったいじめの原因を知っても信じられなかった。
ところが、数日後にはそれを証明するように、彼女の元カレが会社の前にいた。
その日は、幸いにして茗子は休みだった。
『君を待ってたんだよ。前からいいなって思ってたんだ。よかったら、俺を恋愛対象として見てもらえないかな』
凜花はもちろん断った。しかし、彼がそう言っていたことを、現場を見ていた茗子の取り巻きが彼女に報告したらしい。
茗子のプライドの高さは、同僚なら誰もが知っている。事情を知った彼女がどういう風になるのかは、想像に容易かった。
以来、無視だけにとどまっていたいじめが、ヒートアップしていった。
私物のポーチを、汚水が張られたバケツに浸けられていた。
アイシャドウが粉々に割られていた。
一か月の間に、制服を二度も弁償することになった。
自転車のタイヤに釘を刺されていた。
いじめがつらかったのはもちろんだが、裕福とは程遠い凜花にとってこれらの被害による出費はとても苦しく、生活を圧迫した。
それでも、ただ黙って耐え抜いた。
きっと、いじめなんていつか終わる……と一筋の希望を信じて。
その間に外に出たのは、街に下りた二回だけ。相変わらずひとりで外に出ることは叶わず、屋敷や庭で過ごす日々を送っていた。
天界に来る前なら、こんな生活には耐えられなかったかもしれない。
しかし、傍には常に桜火と蘭丸たちがいてくれる。だから、暇を持て余すようなことはなかった。
屋敷の中ではかくれんぼをしたり、庭に出ては花を愛でたり果実を食べたり。下界にいたときには考えられないような生活だったが、これが意外にも楽しかった。
テレビやネットどころか、スマホも天界では使えないと知って解約してきてしまったため、これまでに暇潰しとして使っていたものはなにもない。
それでも、そういったものを恋しいと思うこともなかった。
唯一、スマホがあれば……と思うことはあったが、ネット環境などない天界においては持っていてもおもちゃ同然である。
もともと友人がおらず、仕事以外で連絡を取るような相手もいなかった凜花にとっては、スマホもなければないで気にせずにいられるものだった。
「姫様―、聖様が帰ってきたです」
「お出迎えするです」
庭で蘭丸と菊丸と遊んでいたとき、ふたりが急になにかの気配を察するように笑い、玄関の方へと促した。
「蘭ちゃんと菊ちゃんって、聖さんが帰ってきたらすぐに気づくよね? どうして?」
蘭丸たちを追いながら、後ろから問いかけてみる。
「龍は気配でわかるです」
「主の気配は特にわかるです」
よくわからないが、龍同士だと感覚でわかるということらしい。
今度、聖か桜火に訊いてみようと考えると、前から彼が歩いてきた。
「ただいま、凜花」
「おかえりなさい。今日は早かったんだね」
「ああ、仕事が片付いたからな。たまには凜花とゆっくりしようと思って」
玄信から、聖がとても忙しい人であるということは聞いている。
そうでなくても、龍神である聖が普通の人よりもずっと多忙なのは、種族こそ違えどなんとなく理解はできる。
それなのに、こうして早くに帰ってきてくれて、自分と過ごそうとしてくれる気持ちが嬉しい。そう感じた凜花は、素直に笑みを零していた。
聖は凜花とふたりきりで過ごすつもりだったようだが、蘭丸と菊丸にせがまれて四人で庭に行くことになった。
蘭丸たちは落ちていたハクの実を拾い、籐のカゴに入れている。
どうやら、料理係に頼んで砂糖で煮詰めてもらうと思っているらしい。
「お砂糖と煮詰めるとおいしいです」
「お餅につけて食べるです」
いわゆる、ジャムやコンフィチュールのようなものになるのだろうか。
お餅と合うのかはさておき、天界の食文化は日本食にとても近く、凜花にとってはそれがありがたかった。
ここで出てくる料理が癖のあるものばかりだとしたら、下界が恋しくなっていたかもしれない。ところが、雲飴を始めとして、出てくる料理は和食に近かった。
これは嬉しい誤算である。
凜花はもともと好き嫌いがほとんどないが、和食を好んでいた。
天界全体のことはわからないが、この屋敷で出てくるものは慣れ親しんだ味付けに近いものが多い。そういった意味ではひとつ安心材料ではあった。
「下界が恋しいか?」
「え?」
蘭丸と菊丸から少し離れた場所にいた凜花は、拾った三つのハクの実を抱えるようにして聖を見上げた。
彼の瞳は真っ直ぐだったが、そこには不安と心配の色が浮かんでいる。
少し考えたあとで、凜花は首を小さく横に振った。
「もし向こうに帰っても、頼れる人はいないから。両親も友達も……。仕事はまた探せるけど、私を必要としてくるような人はいない。だから……」
両親はともかく、友人がいないのはきっと自分のせいでもある。
確かに、友人ができにくい環境下に置かれてはいたが、それだってもっと努力していればなにかが変わっていたかもしれない。
そういった部分を怠ってきた自覚はあったため、この言い方はずるい気もした。
「もしよければ、聞かせてくれないか。あの日、凜花の魂があんなにも傷ついていた理由を」
それがいつのことを言っているのか、すぐにわかった。
聖と嵐山の池で出会ったときのことだろう。
凜花はわずかにためらいつつも、彼を見つめる。
優しい眼差しの聖が、興味本位で尋ねているわけではないのは伝わってくる。
戸惑いを抱えつつも、彼に聞いてほしいと思った。
ずっと誰にも言えずにいた、胸の内を――。
凜花が両親を亡くしたのは、五歳のときだった。
ある日曜日、親子三人で動物園へと出かけ、楽しい一日を過ごした帰り道のこと。
対向車線を走っていたワゴン車が、急に凜花たちが乗っていた車に突っ込んできた。
凜花とともに後部座席に乗っていた母親は、咄嗟に身を挺して凜花を庇った。
父親も大怪我を負って病院に運ばれたが、両親は程なくして息を引き取った。
ただ、凜花はこの頃の記憶が曖昧で、事故のこともよく覚えていない。
恐らく、精神的なショックも大きかったのだろう。
交通事故で両親を亡くしたということ以外、ずっとなにも知らなかった。
のちに、高校を卒業するまでお世話になっていた児童養護施設の職員から、施設を出る直前に詳細を聞いたのだ。
児童養護施設は、凜花にとっては息苦しい場所だった。
生きる場所があったのはありがたいことだったのかもしれないが、施設の職員に疎ましがられていた凜花にとって居心地が好いとは言えなかったからである。
これからひとりで生きていくのは不安だった反面、それでもようやく施設を出られることに当時は心のどこかで安堵感もあった。
そして、就職先のハヤブサ便で出会ったのが凜花よりも四歳年上の茗子だった。
美人で勝気な性格の彼女は、気が強そうな見た目とは裏腹に優しく接してくれた。
なにもわからない凜花に、業務を一から教えてくれたのは茗子である。
わからないことがあれば丁寧に説明して、ミスをしたときにはなにがいけなかったのかを教えてくれ、理解できないでいると根気よく伝え直してくれた。
凜花にとって、茗子は両親以外で初めて頼れる存在となり、彼女も凜花をとても可愛がっていた。
茗子の態度ががらりと変わったのは、凜花が仕事を辞める半年ほど前のこと。
最初は無視をされ、その理由がまったくわからなかったが、半月ほど経った頃に彼女に『なにか気に障ることをしたのなら謝りたい』と言うと怒鳴りつけられたのだ。
『この泥棒猫!』と……。
ドラマでしか聞いたことのないセリフを、まさか自分が浴びせられる日が来るとは思ってもみなかった。
しかも、心当たりがまったくなく、凜花の戸惑いは相当のものだった。
そんな凜花に、茗子は付き合っていた恋人から『凜花ちゃんを好きになったから別れたい』と切り出されて振られたことを、心底悔しげに口にした。
彼女の恋人は一流企業に勤めており、それをよく自慢されていた。
凜花は、幸せそうな茗子を羨ましく思ったことはあったが、彼女の恋人には数回しか会ったことがなく、連絡先も知らない。
茗子に紹介されて何度かふたりと食事を共にしたことはあったが、それだって毎回彼女に誘われて同行していたようなものである。
茗子の手前、できるだけ愛想よく振る舞ってはいたものの、彼女の恋人とはふたりきりで話したこともなく、好きになられる理由もない。
だから、ある日突然始まったいじめの原因を知っても信じられなかった。
ところが、数日後にはそれを証明するように、彼女の元カレが会社の前にいた。
その日は、幸いにして茗子は休みだった。
『君を待ってたんだよ。前からいいなって思ってたんだ。よかったら、俺を恋愛対象として見てもらえないかな』
凜花はもちろん断った。しかし、彼がそう言っていたことを、現場を見ていた茗子の取り巻きが彼女に報告したらしい。
茗子のプライドの高さは、同僚なら誰もが知っている。事情を知った彼女がどういう風になるのかは、想像に容易かった。
以来、無視だけにとどまっていたいじめが、ヒートアップしていった。
私物のポーチを、汚水が張られたバケツに浸けられていた。
アイシャドウが粉々に割られていた。
一か月の間に、制服を二度も弁償することになった。
自転車のタイヤに釘を刺されていた。
いじめがつらかったのはもちろんだが、裕福とは程遠い凜花にとってこれらの被害による出費はとても苦しく、生活を圧迫した。
それでも、ただ黙って耐え抜いた。
きっと、いじめなんていつか終わる……と一筋の希望を信じて。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
マンドラゴラの王様
ミドリ
キャラ文芸
覇気のない若者、秋野美空(23)は、人付き合いが苦手。
再婚した母が出ていった実家(ど田舎)でひとり暮らしをしていた。
そんなある日、裏山を散策中に見慣れぬ植物を踏んづけてしまい、葉をめくるとそこにあったのは人間の頭。驚いた美空だったが、どうやらそれが人間ではなく根っこで出来た植物だと気付き、観察日記をつけることに。
日々成長していく植物は、やがてエキゾチックな若い男性に育っていく。無垢な子供の様な彼を庇護しようと、日々奮闘する美空。
とうとう地面から解放された彼と共に暮らし始めた美空に、事件が次々と襲いかかる。
何故彼はこの場所に生えてきたのか。
何故美空はこの場所から離れたくないのか。
この地に古くから伝わる伝承と、海外から尋ねてきた怪しげな祈祷師ウドさんと関わることで、次第に全ての謎が解き明かされていく。
完結済作品です。
気弱だった美空が段々と成長していく姿を是非応援していただければと思います。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
紹嘉後宮百花譚 鬼神と天女の花の庭
響 蒼華
キャラ文芸
始まりの皇帝が四人の天仙の助力を得て開いたとされる、その威光は遍く大陸を照らすと言われる紹嘉帝国。
当代の皇帝は血も涙もない、冷酷非情な『鬼神』と畏怖されていた。
ある時、辺境の小国である瑞の王女が後宮に妃嬪として迎えられた。
しかし、麗しき天女と称される王女に突きつけられたのは、寵愛は期待するなという拒絶の言葉。
人々が騒めく中、王女は心の中でこう思っていた――ああ、よかった、と……。
鬼神と恐れられた皇帝と、天女と讃えられた妃嬪が、花の庭で紡ぐ物語。
炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。
だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。
蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。
実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。
戸惑いの神嫁と花舞う約束 呪い子の幸せな嫁入り
響 蒼華
キャラ文芸
四方を海に囲まれた国・花綵。
長らく閉じられていた国は動乱を経て開かれ、新しき時代を迎えていた。
特権を持つ名家はそれぞれに異能を持ち、特に帝に仕える四つの家は『四家』と称され畏怖されていた。
名家の一つ・玖瑶家。
長女でありながら異能を持たない為に、不遇のうちに暮らしていた紗依。
異母妹やその母親に虐げられながらも、自分の為に全てを失った母を守り、必死に耐えていた。
かつて小さな不思議な友と交わした約束を密かな支えと思い暮らしていた紗依の日々を変えたのは、突然の縁談だった。
『神無し』と忌まれる名家・北家の当主から、ご長女を『神嫁』として貰い受けたい、という申し出。
父達の思惑により、表向き長女としていた異母妹の代わりに紗依が嫁ぐこととなる。
一人向かった北家にて、紗依は彼女の運命と『再会』することになる……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
祓い姫 ~祓い姫とさやけし君~
白亜凛
キャラ文芸
ときは平安。
ひっそりと佇む邸の奥深く、
祓い姫と呼ばれる不思議な力を持つ姫がいた。
ある雨の夜。
邸にひとりの公達が訪れた。
「折り入って頼みがある。このまま付いて来てほしい」
宮中では、ある事件が起きていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる