短編集

ぽよ

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私は友達

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 私には男友達が少ない。そんな中でも、何人かの男友達はいる。趣味が同じだったり、地元が同じだったりする。この人もまた、数少ない男友達の1人。東京に住んでいる彼は、たまに小説の題材を探しにここまでくる。在来線と新幹線で3時間はかかるというのに、よく来れるなと思う。
 彼が駅に着いたのは10時30分頃らしい。私もそれに合わせたかったのだけれど、服が決まらず11時頃に合流の連絡をした。
 私もかつては関東に住んでいたことがある。都内ではないが、23区にはそれなりの時間で出られる地域だった。その頃彼は別の地域に住んでいて、頻繁に会えることは今までなかった。
 電車に揺られて市街地を目指す。あの人は今街を練り歩いているのだろう。わざわざ会いに行きたいと思うほど、私は彼に想いが残っている。
 予定通り11頃に待ち合わせの駅に到着する。彼は改札を出てすぐの椅子に座っていた。

「やぁ」
「やぁやぁ」

 そこに座っていたのは、見慣れた服装で聞き慣れた挨拶をする彼だった。駅を歩いて構内を抜ける。特に予定もないまま北出口を出る。

「何する?」
「特に予定はない」
「そっか」

 短い会話で終わっても、気まずいことはほとんどない。彼が会話を好んでするタイプじゃないのも恐らくある。
 ショッピングモールに行くことに決まって、バスに乗り込む。近くまで行けるバス停があるからだった。
 隣同士で座って、2人とも特に何もないままスマートフォンを操作する。私も彼もSNSを見ていた。
 15分も走れば最寄りのバス停に到着する。運賃を払ってからバスから降りる。私にとっては見慣れた景色。彼にとっても見慣れた景色に変わりつつあるかもしれない。
 バスから降りて、手を繋ぐこともなく歩いていく。3階建てで、服屋とゲームコーナーと映画館がある。普通のショッピングモールだった。
 中に入り、ちょうどいい気温になった空調を浴びながら、適当にフラフラと歩く。そんな時にふと思う。私は、あなたの彼女にはなれなかったんだと。私が一回告白したけど、彼は私を振ったのだ。それでもまだ友達でいられる。けれど、彼が何を考えているのかわからない時もある。
 服屋を見て、ゲームコーナーを見る。彼はゲームが得意だった。私は彼ほどは上手くない。一緒にやるかと言われても遠慮してしまう。踏み出す勇気が出なかった。
 あの時、私は振られてから、彼に対して踏み込んであれこれとは言わなくなっていた。私は友達ではあっても、それ以上にはなれないんだと、分かってしまったから。

「さて、何しようか」
「行きはバスだったし、帰りは歩くのも手だよ」
「そうするか」

 一通り見て回って、やることが無くなってしまった。このままいけば恐らく解散になってしまう。それが嫌だった。だから、歩いて帰ろうと提案した。彼は二つ返事で了承してくれた。それが嬉しかった。
 2人で歩きながら、駅へと戻っていく。このペースなら1時間くらいかかるかもしれない。けれど、それでもよかった。むしろ、それがよかった。
 次に彼がここに来るのがいつか分からない。だから、友達として接している今、こうして会って話をしている今を、長く享受したかった。
 私は友達だけど、友達だからできることがある。友達だからこそ、できることがある。そうして生きていけば、過去の私も救われる。その行動、その思いの先にある幸せを、掴み取れるように、頑張ろうと思った。
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