世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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デート

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 11時30分に最寄りの駅に到着すると、ちょうど電車がホームから出発していた。一歩間違えれば熱中症になりそうな炎天下の中、少しでも日陰の面積が多い部分へと移動し、タオルで汗を拭きながらスマートフォンを操作する。5分ほど操作したところで高杉から連絡が来た。どうやら次に来る電車に乗っているらしい。あと8分で来るという連絡だった。
 35度になるという暑さの中でも、高杉を待つというのは苦痛ではなかった。改札の外側からでも見える電光掲示板の発車時刻を見ながら待ち焦がれていると、高杉が乗っているであろう電車が到着した。休日ということもあり、パラパラと人が降りてくる。その中に見慣れた人影を見つけた。彼も梨咲を見つけると手を振った。

「おはよう」
「うん、おはよう。行くところは決まってるの?」
「まぁね。っていっても買い物なんだけど」
「買い物好きだよねー」
「趣味が散歩くらいしかないからデートって言うと買い物くらいしかできないんだけどね」

 苦笑してみせる高杉だが、勢いよく誘ったもののデートの引き出しは買い物しかない。梨咲はそれでもよかった。高杉と楽しくデートができるならそれだけで良かったのだ。会話が終わってから梨咲が改札を抜けて、電車へと乗り込む。今日はここから30分くらいの街で買い物の予定だ。高杉の服と靴は相変わらず変化がないが、それでも似合っているならおしゃれと呼ばれるのだろうか。
 予定が決まってから服であれこれと悩んだ梨咲とは大きく違っている部分がある。それを認識した時に、梨咲はこれからどうするべきなのか。少しだけ考える必要があるかもしれないと思った。次に来た電車に乗って高杉と話をしている間も、自分自身のこれからについて考えていた。これから変わっていくためにはどうしていくべきなのか。それが変われば、高杉との関わり方も変わっていくかもしれない。休日にしては空いている電車の座席に座っている2人。灼熱の外気とは対極の冷気を全身で浴びながら、電車に揺られていた。
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