65 / 73
イルミネーション
しおりを挟む高島さんと服屋をウロウロすること5軒。2人とも満足のできる買い物ができた。そして、2人でビルから脱出する。外は真っ暗だったけれど、綺麗な灯りが付いていた。
「イルミネーションだ!」
「圧巻の凄さだ」
「これこれ!デートと言えばこれでしょう!」
「趣があるって感じ?」
「それはちょっと違うんじゃないかな」
「そうかな」
微笑を浮かべながら話をする高島さん。これは趣があるわけではないらしい。見事なイルミネーションを2人で歩きながら見て回る。確かに去年のクリスマスはこんなことはしていない。これと比べると、いつも通り地元をうろうろしながら歩いただけだった。
「綺麗だね」
「うん、綺麗だね」
「去年もこんなデートがしたかったなぁ」
「そうだね」
高島さんと会話をしながら後悔する。こんなにも綺麗なものが高島さんと見る機会を一回分失ったことになる。高島さんも実は同じ思いを抱えているから、今日を選んだのかもしれない。見渡す限り全面のイルミネーション。道行く人がそれをスマートフォンで撮影していた。高島さんも撮影するのかと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。
「写真とか撮らないの?」
「うーん、まぁね」
「なんか珍しいね」
「写真撮っても見返さないからかなぁ」
「なんとも現実的だった」
「わたしだってそんな一面くらいあるよ」
「う、うん」
頬を膨らましながら抵抗する高島さん。そんな姿すらも可愛く見える。その時僕は、本当に恋をしているんだなぁと実感した。クリスマス当日の繁華街だけあって人混みがすごい。逸れないようにしないと。そう思った時、高島さんの手を取っていた。
「何?どうしたの?」
「いや、逸れるとめんどくさいなぁって」
「そっか、そうだよね」
思わず握った手を離しそうになったけれど、想像以上に強い力で握り返されてしまう。ふと高島さんの方を見ると、俯いていた。
「逸れると大変だから!私も握ってあげる!」
俯きながらそう言葉を放つ高島さん。どちらともなく歩き始める。どんなに歩いてもどんな人混みにぶつかってもその手を離すことはなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない
セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。
しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。
高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。
パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。
※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる