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花火
しおりを挟む高島さんと縁日を回ること5時間。美味しいものを食べたり射的のゲームをやってみたりしながら歩くと、外は少しずつ暗くなり始めていた。
「そろそろ花火大会かな」
「あ、今日は花火大会もあるんだ」
「そうだよー楽しみ」
日中の時間より人が集まってきたような気がする。空が暗くなったとは言いつつ、まだまだ花火が上がりそうな気配はない。二人とも浴衣は持っておらず、いつも通りの私服だった。夏らしい風情はどこにもない。それでも十分すぎるほど高島さんは輝いていた。
「神社で縁日って今思えば珍しい気がする」
「確かに。そういうのやっていいんだね」
「今思えば不思議かも」
段々と暗くなる空を見上げながら自動販売機で買ったお茶を飲む。雲ひとつない空を見上げていると、高音と共に緩やかなビブラートが鳴り響く。数瞬の後、大きな音が鳴り響き、にわかに空が明るくなる。
「花火だ!」
「始まったね」
「花火はやっぱり綺麗だなぁ」
「夏の風物詩だねー」
二人で話をしながら近くのベンチに座る。しばし無言で花火を見る。ふとしたタイミングで高島さんを見ると、高島さんもこっちを向いた。
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そっか」
「うん」
高島さんの方を向くと、いつも聞かれる言葉だった。いつも聞かれているのに、いつも素直な言葉が出てこない。それとなく会話が終わると高島さんが満面の笑顔になった。その笑顔に撃ち抜かれる。いつかは、この笑顔をもっと身近に見れるようにしたいと思った。
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