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姿

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 2人で道を歩くこと10分。昼ごはんを食べる店に到着した。2人とも制服。もはやデート以外に見え方なんてあるだろうか、と考えるがそもそもこれはデートだと言われていたことを思い出す。店自体は、日本全国によくあるファミレスだった。安いことで有名で、学生たちがよく勉強しているとインターネットでも話題になる。店に行くと待つことなく席に通された。

「お昼なのにすぐに座れるなんてラッキーだね!」
「確かにそうかも。平日だからかな」
「多分」
「高島さんとこうやって向かい合う機会ってなかなか無い気がする」
「え、そうかな」
「席は隣だし授業は前向いて受けてるし」
「あ、それはそうか」

 僕は高島さんをみながら授業を受けることはないけれど、実は高島さんからは授業中も見られているのかもしれない。特に視線は感じたことはないのだけれど。メニューを見ながら何を食べるか決める。そこに並んでいる料理がどこの料理か分からないけれど、ヨーロッパであることだけはわかる。

「じゃあ私はパスタ」
「僕はピザにしようかな」

 2人で食べるものを決めてからベルが鳴るボタンを押す。注文を受けてくれる店員にメニューを伝える。店員が戻ってから会話が再開される。

「そういえば冬休みなんかする?」
「冬休みかぁ。なんかするってほどなんかある?」
「クリスマスとか初詣とか」
「なーんにも考えてない」
「じゃあ初詣は行こうよ!」
「うん、分かった」
「それはそれでまた連絡する!」
「はーい」
「今はご飯だよ!ご飯!」

 そんな会話をしている間に料理がテーブルへと届く。僕たち学生が食べるご飯の中では、早くて安くて美味しい。いつの時代も学生の味方の店だった。

「あ、来た!」
「相変わらずここは早いねー」
「本当ね!」

 ニコニコする高島さんと向かい合って座りながらご飯を食べ始める。元気少女で行儀も良くてでもちょっと不思議なところもある。そして気がつけば目で追っている。もう見慣れた姿で、今は輝きを放っているように見える彼女の姿を見る。

「どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないよ」
「そっか」
「う、うん」

 またご飯を食べ始めるその姿を見ながら、僕もご飯を食べる。この心に芽生えている気持ちはなんなのだろうか。考え事をしていても、高島さんと食べるご飯はいつもより美味しかった。
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