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放課後

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 今日も6時間目の授業までの授業が終わった。5時間目の授業が始まった時はどうなるかと思ったけれど、なんとか授業は受けることはできた。ダッシュで2人で教室に入ってきても誰からも変な絡みをされることなく放課後になった。この1週間で気付いたことがある。このクラスは特段団結力があるわけでもなければ仲が良いわけでもない。しかし、仲が悪いわけでもない。流石に始まって1週間ともなればグループと思しきものは出来上がってくる。僕と高島さんもそのグループの一つだと認識されているはずだ。影で何かを言われている可能性はあるけれど、直接何かを聞かれることはなかった。好きな動画投稿者などが同じだと性別を超えたグループが作られるからだろうか。放課後の教室に残っている生徒は少なかった。

「おつかれー!」
「おつかれ」
「弁当を食べよう」
「そういえばそんな話してたね」

 完全に弁当の存在を忘れていた。中身がどうなってるかと不安になりながら鞄から取り出す。蓋を開けると残っていたのは卵焼きと少しのご飯だった。どうやら混ざったりはしていないらしい。

「あ、私その卵焼きもらって良い?私もこの卵焼きあげるから」
「え、いいけど」
「やったね」

 そう言うと高島さんはお互いの弁当箱にある卵焼きを交換したて、そのままの勢いで食べた。それに応じるように僕も高島さんの弁当にあった卵焼きを食べる。いつも食べる卵焼きとは違う味がした。少しだけしょっぱい気がする。高島さんを見ると、笑顔で頬張っていた。そんなに大きくない卵焼きなのだけれど。

「おいしい!」
「甘い?」
「あ、分かった?私の家の卵焼きがしょっぱいかもしれない!」
「うん、そんな感じ」

 放課後に食べる弁当は、昼休みに食べる弁当とはまた違った良さがある。窓から下校する生徒を見たり、今日の授業の話をしたり。景色も変われば話題も変わる。

「山口くんって、好きな人いないの?彼女でも良いけど」
「うーん、いないなぁ」
「そっかぁ」

 意図のわからない質問だった。彼女はいない。好きな人もいない。そんな返答に高島さんはどこか不満そうな顔をしていた。2人とも無言のまま時間だけが過ぎる。そのまま2人とも弁当が食べ終わり、どうしようかという話になった。

「今日は金曜日だし、帰り遅くても大丈夫?」
「え、あぁ、まぁ。多少なら」
「ちょっと散歩して帰ろう!」
「あ、うん」

 さっきの謎の質問からの謎の提案。断る理由はない。同級生と散歩というのも久しぶりだった。男友達となら中学校の頃にしていたこともある。2人で夕方にしては明るい空を見ながら下校の準備をして、教室を出た。
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