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6章
土曜日
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「着替え持った、荷物も大丈夫」
仁は、出かける準備をしていた。賢の家に泊まり、デートもする。今からとても楽しみだった。デートは繁華街に出る予定だ。家を出て、駅まで歩いて改札を抜ける。ホームに出て電車を待っていると、賢から連絡がきた。
「おはよー。もうこっち向かってるかな。ゆっくりおいで」
どことなくゆっくりで、いつもの賢とは違う印象を受ける。しかし、これもまた賢の一面なのだろう。短い期間で全てが見えるわけではない。長い時間をかけながら、少しずつ見えてくるものもきっとある。
いつのまにか来ていた電車に無意識に乗り込みながら、ぼんやりと考える。春に賢と恋人になってから、夏が過ぎて、今は秋だ。何気ない日常も、意識しなければ、一瞬で過ぎ去っていく。今こうして幸せな時間を過ごせていることに感謝しなければ。
いつもと変わらぬ街の動きも、季節が変われば色が変わる。賢との関係性も、こんなふうに少しずつ変わっていけたら幸せなのだろうか。ということも考える。そして気がつけば、大学の最寄駅に到着していた。つまり降りる駅だ。最初は気がつかなかったが、扉が閉まり始めてから気がついた。なんとかギリギリホームに出ることができたが、心臓の鼓動がかなり大きくなっていた。
駅のホームの階段を降りて、改札を抜ける。そこでふと気付く。さっきの賢からのメッセージの返信をしていなかった。もう最寄駅なのだけど、返信だけでもしておこう。
「最寄駅に着いたよ!」
メッセージを送信しながら改札を抜ける。いつもと同じように駅の出口から出て、賢の家へと向かう。今日から実質5連休。授業とレポートから少しだけ解放される。
駅の改札を抜けて賢の家へと向かう。楽しく過ごすための心の準備もしながら。
駅を出てから、15分ほど歩く。賢の家の近くに来たところで、見覚えのある人影を見た。
「おはよう」
「おはよー」
賢に玄関先で迎え入れられ、部屋に入る。いつも通りの部屋だった。しかし、少しだけ違う点があった。
「なんか、ちょっとだけ片付いた?」
「卒論が終わったから、年明けまでにはちょっとずつ」
「あー、なるほど」
苦笑する賢と一緒に部屋に入る。前に見た状況からかなり片付けが進んでいる。物の置き場所が決まっていたりするのだろうか。意味もなく立ち尽くしていたが、ふと気づいて座る。
「んで、この掃除して気付いたら午前3時でさ、急いで寝たんだけどまだちょっと眠くて」
「だからゆっくりって話だったのか」
「そういうことー。もうちょっと寝るわ」
「はーい」
そういうと賢はベッドに寝転がり寝てしまった。しばらく空き時間になるだろう。それまで何をしようか。ゆっくりと寝ている賢を見ながら、そんなことを考えていた。
仁は、出かける準備をしていた。賢の家に泊まり、デートもする。今からとても楽しみだった。デートは繁華街に出る予定だ。家を出て、駅まで歩いて改札を抜ける。ホームに出て電車を待っていると、賢から連絡がきた。
「おはよー。もうこっち向かってるかな。ゆっくりおいで」
どことなくゆっくりで、いつもの賢とは違う印象を受ける。しかし、これもまた賢の一面なのだろう。短い期間で全てが見えるわけではない。長い時間をかけながら、少しずつ見えてくるものもきっとある。
いつのまにか来ていた電車に無意識に乗り込みながら、ぼんやりと考える。春に賢と恋人になってから、夏が過ぎて、今は秋だ。何気ない日常も、意識しなければ、一瞬で過ぎ去っていく。今こうして幸せな時間を過ごせていることに感謝しなければ。
いつもと変わらぬ街の動きも、季節が変われば色が変わる。賢との関係性も、こんなふうに少しずつ変わっていけたら幸せなのだろうか。ということも考える。そして気がつけば、大学の最寄駅に到着していた。つまり降りる駅だ。最初は気がつかなかったが、扉が閉まり始めてから気がついた。なんとかギリギリホームに出ることができたが、心臓の鼓動がかなり大きくなっていた。
駅のホームの階段を降りて、改札を抜ける。そこでふと気付く。さっきの賢からのメッセージの返信をしていなかった。もう最寄駅なのだけど、返信だけでもしておこう。
「最寄駅に着いたよ!」
メッセージを送信しながら改札を抜ける。いつもと同じように駅の出口から出て、賢の家へと向かう。今日から実質5連休。授業とレポートから少しだけ解放される。
駅の改札を抜けて賢の家へと向かう。楽しく過ごすための心の準備もしながら。
駅を出てから、15分ほど歩く。賢の家の近くに来たところで、見覚えのある人影を見た。
「おはよう」
「おはよー」
賢に玄関先で迎え入れられ、部屋に入る。いつも通りの部屋だった。しかし、少しだけ違う点があった。
「なんか、ちょっとだけ片付いた?」
「卒論が終わったから、年明けまでにはちょっとずつ」
「あー、なるほど」
苦笑する賢と一緒に部屋に入る。前に見た状況からかなり片付けが進んでいる。物の置き場所が決まっていたりするのだろうか。意味もなく立ち尽くしていたが、ふと気づいて座る。
「んで、この掃除して気付いたら午前3時でさ、急いで寝たんだけどまだちょっと眠くて」
「だからゆっくりって話だったのか」
「そういうことー。もうちょっと寝るわ」
「はーい」
そういうと賢はベッドに寝転がり寝てしまった。しばらく空き時間になるだろう。それまで何をしようか。ゆっくりと寝ている賢を見ながら、そんなことを考えていた。
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