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3章
夜
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「はっ、今何時?!」
「19時だよ」
「朝ではないのか」
「ぐっすり寝てたけどね」
「おはよう」
「おはよー」
日常的な会話をしながら、まだ眠い体を起こす。晩ご飯かぁと思いながら恋人を見る。賢もまだ眠そうだった。
「賢も寝てたの?」
「まぁね」
「そっか」
「そんなことはいいんだよ、ご飯だよご飯」
「行こうか」
「おうともよ」
「なんでそんなにルンルンなの?」
「行きたいところが見つかったんだよ」
そう言いながら靴を履いている恋人。いつにも増して準備が早い。会話をしながら頭を起こして自分も靴を履く。
カバンを持って、部屋を出て鍵を閉める。閉まってるかどうかを確認してから、ロビーへと行く。鍵を渡して外出の意図を伝えた後、ホテルを出る。しかし賢がそこまでルンルンなのも珍しい。そんなにいいものを見つけたというのか。
「えーっとねー、ホテルを出て駅のほうに行ったらあるはずなんだよ」
「ついていく」
「おうともよ!マップ見ながら行くか」
本当にいつもより数段テンションが高い。それでも冷静に地図を見ながら歩いていく。きちんと方角も合わせてマップを見る。適当に数歩歩いて確認をした上で正しい方角へと進んでいく。テクテクと歩いて行った先にあったのは、飲み屋。
「ここは魚が美味しいらしいんだよ」
「へぇ、楽しみだ」
「入ろう」
「はーい」
賢は魚がとても好きらしい。初めて知った。食べる方が好きということは見る方も好きなんだろうか。この県に水族館があるかどうかはわからないけど、地元にはある。またデートで行ってもいいかもしれない。ぼんやりとそんなことを考える。
店に入ると、程よく居酒屋の騒がしさがあるが、大騒ぎというほどではない喧騒が伝わる。二人と伝えると、すぐに席へと案内された。二人で席に座り、一息つく。
「夜とはいえ流石に暑いな」
「暑いね」
「ま、のんびり食べて飲んで宿に戻ろう」
「うん」
夜といえども流石に夏。歩いている間に軽く汗をかいた。その汗を拭きながらメニューを見る。
中身は見事に魚。まぁ酒類は適当に飲めそうなものを頼もう。時間制限の類は無いようなので、のんびり出来そうだ。ある程度頼むメニューを決めたところで、店員を呼ぶ。
「これと、これと、これで」
「かしこまりました」
酒を飲む機会がまだまだ無い。20歳にはもうなっているが、なったばかりである。そうそう飲む機会があるものでも無いのだが、誘われることもない。恋人と飲む酒も多いわけではない。しかし、楽しめるのなら、すすんで飲みたい。
仁はもともと酒を飲む家に生まれたわけではないが、酒が嫌いと言う家でもなかった。それが良かったのかもしれない。気がつけば恋人と話しながら1時間ほどが過ぎていた。お腹もかなり膨れてきた頃だ。
「まだなんか食べる?」
「いや、俺は大丈夫」
「じゃ、出るか」
そう言い、会計ボタンを押す。伝票を渡され、レジへと向かう。わざわざ半分を出すのがめんどくさかったのか、ここは賢が出してくれた。会計を済ませた後、店を出て、宿へと戻る。
「今日はお疲れ」
「うん、明日もデートだね」
「そうだなぁ」
少しだけ涼しくなった外を歩いて、来た道を戻って宿に入る。エントランスで鍵を受け取って部屋に入る。
2人でベッドで横になりながら話をする。寝てしまいそうになるが、このまま寝てしまうと風呂に入れない。
「風呂だけ入ろう」
「そうだな」
賢から見た自分は思ってるより疲労が溜まってるように見えたらしく、先に入れてくれた。大人しく服を脱いでお風呂に入る。
明日もデート。そのことが嬉しくてたまらなかった。明日は終電に間に合うように動かなければならないが、それでも十分楽しめる時間はあるはずだ。いつもよりじっくり頭と体を洗ってから風呂を出る。そして、持ってきた着替えを着る。
「じゃ、俺入るわ」
「はーい」
もはや返事をするときですらベッドに寝転がっていた。賢がお風呂に入るのを見届けた瞬間に、仁の意識は落ちた。
「19時だよ」
「朝ではないのか」
「ぐっすり寝てたけどね」
「おはよう」
「おはよー」
日常的な会話をしながら、まだ眠い体を起こす。晩ご飯かぁと思いながら恋人を見る。賢もまだ眠そうだった。
「賢も寝てたの?」
「まぁね」
「そっか」
「そんなことはいいんだよ、ご飯だよご飯」
「行こうか」
「おうともよ」
「なんでそんなにルンルンなの?」
「行きたいところが見つかったんだよ」
そう言いながら靴を履いている恋人。いつにも増して準備が早い。会話をしながら頭を起こして自分も靴を履く。
カバンを持って、部屋を出て鍵を閉める。閉まってるかどうかを確認してから、ロビーへと行く。鍵を渡して外出の意図を伝えた後、ホテルを出る。しかし賢がそこまでルンルンなのも珍しい。そんなにいいものを見つけたというのか。
「えーっとねー、ホテルを出て駅のほうに行ったらあるはずなんだよ」
「ついていく」
「おうともよ!マップ見ながら行くか」
本当にいつもより数段テンションが高い。それでも冷静に地図を見ながら歩いていく。きちんと方角も合わせてマップを見る。適当に数歩歩いて確認をした上で正しい方角へと進んでいく。テクテクと歩いて行った先にあったのは、飲み屋。
「ここは魚が美味しいらしいんだよ」
「へぇ、楽しみだ」
「入ろう」
「はーい」
賢は魚がとても好きらしい。初めて知った。食べる方が好きということは見る方も好きなんだろうか。この県に水族館があるかどうかはわからないけど、地元にはある。またデートで行ってもいいかもしれない。ぼんやりとそんなことを考える。
店に入ると、程よく居酒屋の騒がしさがあるが、大騒ぎというほどではない喧騒が伝わる。二人と伝えると、すぐに席へと案内された。二人で席に座り、一息つく。
「夜とはいえ流石に暑いな」
「暑いね」
「ま、のんびり食べて飲んで宿に戻ろう」
「うん」
夜といえども流石に夏。歩いている間に軽く汗をかいた。その汗を拭きながらメニューを見る。
中身は見事に魚。まぁ酒類は適当に飲めそうなものを頼もう。時間制限の類は無いようなので、のんびり出来そうだ。ある程度頼むメニューを決めたところで、店員を呼ぶ。
「これと、これと、これで」
「かしこまりました」
酒を飲む機会がまだまだ無い。20歳にはもうなっているが、なったばかりである。そうそう飲む機会があるものでも無いのだが、誘われることもない。恋人と飲む酒も多いわけではない。しかし、楽しめるのなら、すすんで飲みたい。
仁はもともと酒を飲む家に生まれたわけではないが、酒が嫌いと言う家でもなかった。それが良かったのかもしれない。気がつけば恋人と話しながら1時間ほどが過ぎていた。お腹もかなり膨れてきた頃だ。
「まだなんか食べる?」
「いや、俺は大丈夫」
「じゃ、出るか」
そう言い、会計ボタンを押す。伝票を渡され、レジへと向かう。わざわざ半分を出すのがめんどくさかったのか、ここは賢が出してくれた。会計を済ませた後、店を出て、宿へと戻る。
「今日はお疲れ」
「うん、明日もデートだね」
「そうだなぁ」
少しだけ涼しくなった外を歩いて、来た道を戻って宿に入る。エントランスで鍵を受け取って部屋に入る。
2人でベッドで横になりながら話をする。寝てしまいそうになるが、このまま寝てしまうと風呂に入れない。
「風呂だけ入ろう」
「そうだな」
賢から見た自分は思ってるより疲労が溜まってるように見えたらしく、先に入れてくれた。大人しく服を脱いでお風呂に入る。
明日もデート。そのことが嬉しくてたまらなかった。明日は終電に間に合うように動かなければならないが、それでも十分楽しめる時間はあるはずだ。いつもよりじっくり頭と体を洗ってから風呂を出る。そして、持ってきた着替えを着る。
「じゃ、俺入るわ」
「はーい」
もはや返事をするときですらベッドに寝転がっていた。賢がお風呂に入るのを見届けた瞬間に、仁の意識は落ちた。
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