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Surrender, retreat, or die(降伏か撤退か、それとも死か)
[Second Lieutenant Mark Kruger Ⅰ(マーク・クルーガー少尉)]
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「マルシュ、話はまとまったのか?」
「ああ」
「じゃあ、こいつら全員降伏」
「いや、脱出させる」
「脱出!?? ドイツ軍の肩を持つって言うのか!?」
「嫌なら付いてこなくていい、俺一人でやる! だが約束通りここで会ったことは誰にも話すな!」
驚くピエールたちに俺は啖呵を切った。
いくらルーアンの村人を救ったとは言え、奴等はドイツ兵。
敵の兵隊を護衛して逃がしたとなれば、これは立派な裏切り行為だ。
もしパリの解放後にフランスで何らかの革命が起き、それが過去に起きたフランス革命(1789年~1795年:革命後の裁判で2500人以上が処刑された)と似たような経緯を辿るとすれば、俺は確実にギロチン台に送られるだろう。
ルッツたちの先頭に立って、点検用の縦穴に入り地下鉄のトンネルに入る。
外の明るさになれた眼では、運行を停止している地下鉄のトンネル内は真っ暗闇で何も見えない。
かと言って灯りを点けると遠くからでも簡単に発見されてしまうので、しばらく動かないで目を慣らしてから壁に手を当てながら進む。
地下鉄5号線の難関は、セーヌ川の下をくぐる手前にある“ガール・ドルレアン駅(Gare d'Austerlitz)”思った通り駅のホームには数人の連合軍兵士が立っていた。
「決して撃たないで下さい」
「ああ」
マルシュに言われるまでもなく、俺達は撃たない。
先制攻撃を仕掛ければ簡単に突破できるが、それは地下鉄を通って逃げようとしていることを宣伝しているようなモノ。
しかも見境なく人を殺す凶暴な逃亡者が相手と分かれば、敵も本気で俺達を潰しに掛かって来る。
だがここは島式ホームなので、その島伝いに突破する事が出来たが、ここから5号線は一旦地上に出て橋梁を使ってセーヌ川を渡らなければならない。
夜中なら目立たないが、この警戒網の中で日中に突破するのは無理があるから夜を待つ必要がある。
「こっちに作業用の坑道がある」
今まで一言も口を出していなかったジャンが、先頭に立ってルッツたちを導く。
「坑道を使うと、どこに繋がる?」
「この坑道は7号線に繋がっている」
7号線と言えばセーヌ川はシテ島の地下を通るから昼間でも目立たない。
しかしその真上には警察の本庁舎があり、更にその先にはパリ市庁舎もある。
まさに連合軍の、ド真ん中を通過するという大胆なルート。
もしもジャンが裏切ったら……いや、ジャンが裏切らなくても連合軍兵士に見つかってしまえば到底逃げられない。
“どうする!?”
ジャンはドイツ語が話せないのでフランス語で言った。
ルッツはフランス語が分からないし、地下鉄の路線にも詳しくはない。
これを、どうルッツに説明すればいいだろう?
連合軍本部の真下を通るのだ。
下手な説明をすれば、最初から裏切るつもりで連れてきたと思われてしまうし、もしも厳重な警備体制に気が付けばパニックに陥るかも分からない。
俺はルッツの方を振り返った。
するとルッツは涼しい眼を俺に向けて頷いた。
なるほど、既に“死は覚悟済み”と言うことか。
「よし、ジャン。案内してくれ!」
ゆっくと、静かに開くドア。
真っ先に現れたのは、黒いブーツが見え、その後に青みを帯びたグレーの制服が見えた。
ドイツ空軍!?
いや、胸に付いているマークがアドラーではなく、ロイヤル・エアフォースのパイロット・ウィング。
この制服はイギリス空軍で、袖に細い1本線が入っているので階級は少尉。
袖の後ろにあるホルスターには、リボルバー式の拳銃。
恰好は間違いなくイギリス軍だが……。
「アナタは?」
「私はマーク・クルーガー、イギリス空軍のパイロットです。
「失礼ですが、階級は?」
「少尉ですが」
「ああ、それでエンフィールドを?」
私が、そう言って彼の腰に挿した拳銃を見つめると、マーク・クルーガー少尉はホルスターを手で撫でると、エンフィールドではなくウェブリー Mk VIであると教えてくれた。
理由はエンフィールドの生産が追い付いていないからで、下端将校の自分には残念ながら回ってこなかったと言っていた。
完璧な模範解答。
ドイツ兵ならエンフィールドであろうがウェブリー Mk VIであろうが拘らないだろうし、おそらくその区別もつかないだろう。
だが、それを鵜呑みにするわけにはいかない。
「何故、扉の後ろに隠れていたのですか? 軍人なら、堂々と出ていらしたら良かったのに」
「軍人と言っても、僕はパイロットだから人と面と向かって話すのは苦手だ。おまけに偵察任務が長かったおかげで、随分臆病になってしまってね」
「相手が、女性なのに?」
「確かにそうだけど、僕の推測ではは君は、どちら側かのスパイだ。だから世話はシャルルに頼んでいた」
「どうして私はここに?」
「ああ」
「じゃあ、こいつら全員降伏」
「いや、脱出させる」
「脱出!?? ドイツ軍の肩を持つって言うのか!?」
「嫌なら付いてこなくていい、俺一人でやる! だが約束通りここで会ったことは誰にも話すな!」
驚くピエールたちに俺は啖呵を切った。
いくらルーアンの村人を救ったとは言え、奴等はドイツ兵。
敵の兵隊を護衛して逃がしたとなれば、これは立派な裏切り行為だ。
もしパリの解放後にフランスで何らかの革命が起き、それが過去に起きたフランス革命(1789年~1795年:革命後の裁判で2500人以上が処刑された)と似たような経緯を辿るとすれば、俺は確実にギロチン台に送られるだろう。
ルッツたちの先頭に立って、点検用の縦穴に入り地下鉄のトンネルに入る。
外の明るさになれた眼では、運行を停止している地下鉄のトンネル内は真っ暗闇で何も見えない。
かと言って灯りを点けると遠くからでも簡単に発見されてしまうので、しばらく動かないで目を慣らしてから壁に手を当てながら進む。
地下鉄5号線の難関は、セーヌ川の下をくぐる手前にある“ガール・ドルレアン駅(Gare d'Austerlitz)”思った通り駅のホームには数人の連合軍兵士が立っていた。
「決して撃たないで下さい」
「ああ」
マルシュに言われるまでもなく、俺達は撃たない。
先制攻撃を仕掛ければ簡単に突破できるが、それは地下鉄を通って逃げようとしていることを宣伝しているようなモノ。
しかも見境なく人を殺す凶暴な逃亡者が相手と分かれば、敵も本気で俺達を潰しに掛かって来る。
だがここは島式ホームなので、その島伝いに突破する事が出来たが、ここから5号線は一旦地上に出て橋梁を使ってセーヌ川を渡らなければならない。
夜中なら目立たないが、この警戒網の中で日中に突破するのは無理があるから夜を待つ必要がある。
「こっちに作業用の坑道がある」
今まで一言も口を出していなかったジャンが、先頭に立ってルッツたちを導く。
「坑道を使うと、どこに繋がる?」
「この坑道は7号線に繋がっている」
7号線と言えばセーヌ川はシテ島の地下を通るから昼間でも目立たない。
しかしその真上には警察の本庁舎があり、更にその先にはパリ市庁舎もある。
まさに連合軍の、ド真ん中を通過するという大胆なルート。
もしもジャンが裏切ったら……いや、ジャンが裏切らなくても連合軍兵士に見つかってしまえば到底逃げられない。
“どうする!?”
ジャンはドイツ語が話せないのでフランス語で言った。
ルッツはフランス語が分からないし、地下鉄の路線にも詳しくはない。
これを、どうルッツに説明すればいいだろう?
連合軍本部の真下を通るのだ。
下手な説明をすれば、最初から裏切るつもりで連れてきたと思われてしまうし、もしも厳重な警備体制に気が付けばパニックに陥るかも分からない。
俺はルッツの方を振り返った。
するとルッツは涼しい眼を俺に向けて頷いた。
なるほど、既に“死は覚悟済み”と言うことか。
「よし、ジャン。案内してくれ!」
ゆっくと、静かに開くドア。
真っ先に現れたのは、黒いブーツが見え、その後に青みを帯びたグレーの制服が見えた。
ドイツ空軍!?
いや、胸に付いているマークがアドラーではなく、ロイヤル・エアフォースのパイロット・ウィング。
この制服はイギリス空軍で、袖に細い1本線が入っているので階級は少尉。
袖の後ろにあるホルスターには、リボルバー式の拳銃。
恰好は間違いなくイギリス軍だが……。
「アナタは?」
「私はマーク・クルーガー、イギリス空軍のパイロットです。
「失礼ですが、階級は?」
「少尉ですが」
「ああ、それでエンフィールドを?」
私が、そう言って彼の腰に挿した拳銃を見つめると、マーク・クルーガー少尉はホルスターを手で撫でると、エンフィールドではなくウェブリー Mk VIであると教えてくれた。
理由はエンフィールドの生産が追い付いていないからで、下端将校の自分には残念ながら回ってこなかったと言っていた。
完璧な模範解答。
ドイツ兵ならエンフィールドであろうがウェブリー Mk VIであろうが拘らないだろうし、おそらくその区別もつかないだろう。
だが、それを鵜呑みにするわけにはいかない。
「何故、扉の後ろに隠れていたのですか? 軍人なら、堂々と出ていらしたら良かったのに」
「軍人と言っても、僕はパイロットだから人と面と向かって話すのは苦手だ。おまけに偵察任務が長かったおかげで、随分臆病になってしまってね」
「相手が、女性なのに?」
「確かにそうだけど、僕の推測ではは君は、どちら側かのスパイだ。だから世話はシャルルに頼んでいた」
「どうして私はここに?」
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