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Liberation of Paris(パリの解放)
[Battle until the liberation of Paris Ⅶ(パリ解放までの戦い)]
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真夜中にドレルアン門方面から市内中心部に進入した敵部隊は、明け方前には既に防衛網を突破して俺たちの後ろ側に回り込んで来た。
ドレルアン方面の部隊は壊滅し、敵はこのルートを自由に通り、市内中心部の戦力を固める。
そして夜明けとともに我々の陣地は東西南の3方向からの攻撃に晒されることになる。
唯一の救いは、敵の北からの攻撃なないことと、東側からの攻撃が手薄な事くらい。
ディタリー広場に設置された88mm砲はドレルアン通りからオーギュスト・ブランキ通りを通って西から攻めて来る敵戦車や、南からのポピヨ通りディタリー通りジョワージ通りの4方向から進撃して来る敵戦車をまさに獅子奮迅の活躍で食い止めている。
俺たちは88mm砲の死角に入るシャルル・ムルー通りとその東側のエディソン通りを迂回して来る敵戦車を、パンツァーファーストで撃破して阻止しているが、いつまで持つか。
「なるべく引き付けて、敵戦車が並列になる所を狙え!」
幸いシャルル・ムルー通りとエディソン通りの道幅は狭いので、敵戦車を引き付けておいて先ず1台撃破して、その後は並列になった所をまた撃破すれば道を塞ぐことが出来た。
敵戦車を引き付ける事にかなりのリスクはあったが、引き付けておけば戦車に追従して来た敵の歩兵も孤立させて無力化させることにも成功した。
先行した戦車が道を塞いだことにより、その後の戦車は立ち往生する事になるのでパンツァーファーストの餌食になる事を恐れて近付いて来ない。
戦車が近付いて来なければ、歩兵も容易に近づけない。
これでここは当分大丈夫。
俺たちは陣地の防衛を国防軍に託し、東側にあるナシオナル通りに向かった。
早速出くわしたのは敵の装甲車と、その前を行くM4戦車。
「パンツァーファーストで撃破しますか!?」
「いや、手りゅう弾を使え!」
聞いて来たロスに指示を出し、俺はもう2門しか残っていないパンツァーファーストを俺とホルツで1つずつ持ち、護衛にマイヤーを連れて通りを北に向かった。
オープントップのM3ハーフトラックなら手りゅう弾で充分だし、その薄っぺらな装甲はFG-42の7.92mm弾でも撃ち抜くことは出来る。
それよりも問題なのは、その先を行くM4戦車だ。
既に環状交差点を守る国防軍守備隊は甚大な被害を受け、M4戦車はその目前に迫っていた。
このままだと陣地ごと彼等は戦車に踏みつぶされてしまう。
敵戦車との距離は約50m。
2門のパンツァーファーストは60型なので射程内ではあるが(パンツァーファースト60の射程は60m)敵戦車が遠ざかる方向に移動しているため、ここで狙いをつけて発射しても当てるのは難しいから距離を詰めるために思いっきり走る。
足元をM3ハーフトラックの銃座から放たれた12.7mm弾が襲い掛かるが、ロスの投げた手りゅう弾の爆発音と共に直ぐに沈黙した。
距離30mまで近づいた所でパンツァーファーストを構え発射すると、弾道はゆっくりと放物線を描きやがてM4戦車の後部に命中し、後部から黒煙を吐き出したと思う間もなく炎に包まれた乗員が戦車から飛び出してきた。
「マイヤー、直ぐに止めを!」
残念ながら火を消してやることも出来ないし、もし決してやれたとしても手当ても出来ない。
火傷による負傷は、銃弾によるものに比べてはるかに痛くて酷い。
マイヤーが火だるまになった敵兵を狙撃して殺す。
同じ死ぬのなら、苦しむ時間は短い方が良い。
残酷ではあるが、マイヤーは楽に死ねるように飛び出した3人の敵の脳天を撃ち止めを刺した。
燃え上がる敵戦車の横を抜けて、陣地へとたどり着く。
「指揮官は誰だ!?」
「ベルン少尉ですが既に戦死しています」
「下士官は!?」
「下士官もです!」
残っている兵士は僅か5名。
「戦車はこれ1台か?」
「いえ、もう1台が既に突破して右の通りに」
「右!?」
右に進むとディタリー広場から離れる方向だが、さては迂回して88m砲の背後を狙うつもりか。
「マイヤー、ロス達を呼んで来て、ここを守れ!俺は右に行った戦車を片付ける」
「了解しました!」
最後のパンツァーファーストを持って右の通りに向かう。
直線の道路の先に、敵戦車の姿は無い。
約200mの直線。
2輌の戦車はお互いにカバーし合うはずだから、こんなに間隔を開けるはずがない。
俺は直ぐ30m先にあった通りを更に右に曲がると、そこには歩兵1個分隊を連れた戦車がケツを向けて直ぐ傍に居た。
距離はたったの20m。
敵の歩兵の1人が直ぐに俺に気が付いたが、これに構っている暇はない。
すかさずパンツァーファーストを放つと直ぐに戦車の後部に命中し、爆発で数人の歩兵が吹っ飛ぶとともにあっと言う間に戦車は火に包まれた。
熱風が襲う中、直ぐに使い終わったパンツァーファーストを捨ててFG-42をフルオートで発射しながら更に走って近付いて行くと敵の歩兵がバタバタと倒れていった。
走って距離を詰めたのは、戦車の前にも敵の歩兵が居ることを想定しての事。
こういう場合は距離が離れた方が厄介になる。
燃え盛る戦車を追い越すと、案の定その陰に隠れていた敵の歩兵が居た。
敵は後ろに居た味方が前に逃げてきたと思ったのか一瞬目が合ったが、彼等が俺を敵と認識するよりも早く俺は銃で残った敵を倒した。
そして通りの先に目を移した俺は、茫然と立ち尽くしてしまった。
ドレルアン方面の部隊は壊滅し、敵はこのルートを自由に通り、市内中心部の戦力を固める。
そして夜明けとともに我々の陣地は東西南の3方向からの攻撃に晒されることになる。
唯一の救いは、敵の北からの攻撃なないことと、東側からの攻撃が手薄な事くらい。
ディタリー広場に設置された88mm砲はドレルアン通りからオーギュスト・ブランキ通りを通って西から攻めて来る敵戦車や、南からのポピヨ通りディタリー通りジョワージ通りの4方向から進撃して来る敵戦車をまさに獅子奮迅の活躍で食い止めている。
俺たちは88mm砲の死角に入るシャルル・ムルー通りとその東側のエディソン通りを迂回して来る敵戦車を、パンツァーファーストで撃破して阻止しているが、いつまで持つか。
「なるべく引き付けて、敵戦車が並列になる所を狙え!」
幸いシャルル・ムルー通りとエディソン通りの道幅は狭いので、敵戦車を引き付けておいて先ず1台撃破して、その後は並列になった所をまた撃破すれば道を塞ぐことが出来た。
敵戦車を引き付ける事にかなりのリスクはあったが、引き付けておけば戦車に追従して来た敵の歩兵も孤立させて無力化させることにも成功した。
先行した戦車が道を塞いだことにより、その後の戦車は立ち往生する事になるのでパンツァーファーストの餌食になる事を恐れて近付いて来ない。
戦車が近付いて来なければ、歩兵も容易に近づけない。
これでここは当分大丈夫。
俺たちは陣地の防衛を国防軍に託し、東側にあるナシオナル通りに向かった。
早速出くわしたのは敵の装甲車と、その前を行くM4戦車。
「パンツァーファーストで撃破しますか!?」
「いや、手りゅう弾を使え!」
聞いて来たロスに指示を出し、俺はもう2門しか残っていないパンツァーファーストを俺とホルツで1つずつ持ち、護衛にマイヤーを連れて通りを北に向かった。
オープントップのM3ハーフトラックなら手りゅう弾で充分だし、その薄っぺらな装甲はFG-42の7.92mm弾でも撃ち抜くことは出来る。
それよりも問題なのは、その先を行くM4戦車だ。
既に環状交差点を守る国防軍守備隊は甚大な被害を受け、M4戦車はその目前に迫っていた。
このままだと陣地ごと彼等は戦車に踏みつぶされてしまう。
敵戦車との距離は約50m。
2門のパンツァーファーストは60型なので射程内ではあるが(パンツァーファースト60の射程は60m)敵戦車が遠ざかる方向に移動しているため、ここで狙いをつけて発射しても当てるのは難しいから距離を詰めるために思いっきり走る。
足元をM3ハーフトラックの銃座から放たれた12.7mm弾が襲い掛かるが、ロスの投げた手りゅう弾の爆発音と共に直ぐに沈黙した。
距離30mまで近づいた所でパンツァーファーストを構え発射すると、弾道はゆっくりと放物線を描きやがてM4戦車の後部に命中し、後部から黒煙を吐き出したと思う間もなく炎に包まれた乗員が戦車から飛び出してきた。
「マイヤー、直ぐに止めを!」
残念ながら火を消してやることも出来ないし、もし決してやれたとしても手当ても出来ない。
火傷による負傷は、銃弾によるものに比べてはるかに痛くて酷い。
マイヤーが火だるまになった敵兵を狙撃して殺す。
同じ死ぬのなら、苦しむ時間は短い方が良い。
残酷ではあるが、マイヤーは楽に死ねるように飛び出した3人の敵の脳天を撃ち止めを刺した。
燃え上がる敵戦車の横を抜けて、陣地へとたどり着く。
「指揮官は誰だ!?」
「ベルン少尉ですが既に戦死しています」
「下士官は!?」
「下士官もです!」
残っている兵士は僅か5名。
「戦車はこれ1台か?」
「いえ、もう1台が既に突破して右の通りに」
「右!?」
右に進むとディタリー広場から離れる方向だが、さては迂回して88m砲の背後を狙うつもりか。
「マイヤー、ロス達を呼んで来て、ここを守れ!俺は右に行った戦車を片付ける」
「了解しました!」
最後のパンツァーファーストを持って右の通りに向かう。
直線の道路の先に、敵戦車の姿は無い。
約200mの直線。
2輌の戦車はお互いにカバーし合うはずだから、こんなに間隔を開けるはずがない。
俺は直ぐ30m先にあった通りを更に右に曲がると、そこには歩兵1個分隊を連れた戦車がケツを向けて直ぐ傍に居た。
距離はたったの20m。
敵の歩兵の1人が直ぐに俺に気が付いたが、これに構っている暇はない。
すかさずパンツァーファーストを放つと直ぐに戦車の後部に命中し、爆発で数人の歩兵が吹っ飛ぶとともにあっと言う間に戦車は火に包まれた。
熱風が襲う中、直ぐに使い終わったパンツァーファーストを捨ててFG-42をフルオートで発射しながら更に走って近付いて行くと敵の歩兵がバタバタと倒れていった。
走って距離を詰めたのは、戦車の前にも敵の歩兵が居ることを想定しての事。
こういう場合は距離が離れた方が厄介になる。
燃え盛る戦車を追い越すと、案の定その陰に隠れていた敵の歩兵が居た。
敵は後ろに居た味方が前に逃げてきたと思ったのか一瞬目が合ったが、彼等が俺を敵と認識するよりも早く俺は銃で残った敵を倒した。
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