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Liberation of Paris(パリの解放)
[Battle until the liberation of Paris Ⅳ(パリ解放までの戦い)]
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「俺は混成突入部隊の、アメリカ軍ジョンソン中尉だ」
「ドイツ空軍降下猟兵、ルッツ少尉」
ここで、お互いに初めて名乗り合う。
「自由フランス軍だけの突入じゃあないんだな」
「ド・ゴールがアメリカ軍の貢献も尊重して、はじめの一歩に加えてくれたのさ」
「イギリス軍は?」
「上の方がヘソを曲げてな……」
「違う国が協力し合うのも難しいものなんだな」
「マルシュ、ここから早く逃げ出そうぜ!」
アパートから様子を窺っていると、部下のピエールが騒ぎ出した。
「なんでだ?」
「だってよう、見ろよ、あのドイツ野郎の余裕を。きっと少人数と思わせておいて、今頃は仲間がワンサカきて周りを取り囲んでいるに違いねえ」
「馬鹿、見ただろう、ドイツ兵が3人しか居なかったのを。それに空軍の降下猟兵みたいに希少価値の高い兵隊が大規模な攻撃作戦でもない限り、ワンサカ集まりはしねえ」
「だったら、あのアメリカ兵に教えてやろうぜ!?」
「なにを?」
「ドイツ兵が3人しか居ない事をさ」
「そんな事をして、何になる?」
「そうすりゃあ、あのドイツ兵は捕えられるか殺されるかして、隠れている2人もお陀仏さ!」
「ピエール……お前、そんなに殺し合いをさせたいのか?」
「だってようマルシュ、アイツはドイツ兵だぜ。ドイツは俺達の敵だ」
「ドイツ兵と言っても、ドイツ人で、元は俺達と同じ人間だぞ。それに俺たちは何のために戦っている?ドイツ兵を殺すためか?違うだろう、自由の為だ」
「そりゃあ、そうだけど……でも」
「やめておけ」
「なんで!?」
「お前の眼は節穴か?見ろよあの2人を、あれが敵対する者同士に見えるか?」
窓の向こうに見える2人は、お互いに持っている煙草を交換し合い、共にお互いの煙草に火を点け合い穏やかな表情で何かを話していた。
「シュパンダウさん……ルッツ少尉、大丈夫でしょうか?」
2階の窓からルッツの様子を食い入るように見ているホルツ。
話し掛けられたシュパンダウは窓に目を向けている程度で、ホルツに比べて1箇所に集中している風ではなく、どちらかと言うとノンビリ外を眺めているような様子。
「大丈夫じゃねえの」
「もーっ、そんな他人事みたいに言わないで下さいよ」
「だってよう、ルッツの事を真面目に心配していたら、キリがねえ。自分で爆破した敵の戦車に飛び乗って逃げたり市民を虐殺しようとする親衛隊の少佐にタテついてみたり、そして今は敵の戦車と歩兵それぞれ1個小隊の前進を1人で止めて何かしようとしている。こんな事に付き合わされるだけで、こっちは寿命が縮んじまうぜ」
「確かに、それはそうですけど戦争だから仕方ないでしょう?勇気ある行動だと思いますよ、僕は」
ルッツ少尉と親友だとばかり思っていたシュパンダウ兵長の、まるで心配していない様子に苛立ちながらホルツは窓に貼り付くようにルッツたちの様子を睨んでいた。
「そうそう。戦争で思い出したんだがな。あんまり窓に近付き過ぎると、敵の狙撃兵の良い的になっちまうぜ。それに敵は窓の向こうばかりとは限らねえ」
「えっ!?狙撃兵は分かりました。でも後半のは、どういう意味です?」
「つまり、敵は建物の裏からも侵入して来るってこと。これでハリコフやスターリングラードで手痛い被害が出たんだぜ」
ホルツは驚いて、はじめて後ろを振り向いた。
「大丈夫、俺様が両方見ているから」
「で、市庁舎には何の用がある?」
ルッツは、ここでようやく本来の目的をジョンソン中尉に聞いた。
「作戦の内容を敵であるドイツ兵に教える事は出来んが、通してくれると言うのなら教えてもいい」
「内容による」
「……レジスタンスの中で、特に過激な組織の暴走を抑える事が目的の一部。その他の目的は話せない」
「ほう……レジスタンスの暴走を抑えて何かいいことでもあるのか?」
「パリの街を傷付けたくはない。レジスタンスが大々的に蜂起すれば、街は混乱に陥り市街の至る所が戦場になる」
「そうなれば、連合軍の進撃は容易くなるのではないのか?」
「いや、俺もド・ゴールもそれは逆だと考えている」
「逆?」
「つまり戦火は憎しみを生み、新たなより激しい戦火を生み出す」
「ここでレジスタンスが蜂起して、そこに連合軍が突入してパリが解放された事になれば、フランスの各地域でも同じようにレジスタンスの蜂起が始まる」
「まあ、そうなるだろうな」
「だけど、その全てに我々連合軍が対処できるとは限らないし、君たちドイツ軍の方が優勢な場合もあるだろう」
「つまるところはレジスタンスの蜂起により、ドイツ軍を混乱に陥れる事は出来るが、混乱した兵士たちによるフランス市民の虐殺を止める術はない。というわけか?」
「その通り。我々は常に秩序のある戦闘を心掛けなければならない」
「秩序のある戦闘」
復唱して思わず失笑してしまい。その拍子にこの男の事を思い出した。
この男は、ハンバーガーヒルで逃がしてやった敵の偵察部隊に居た男!
そして戦争が始まる前、俺がまだアメリカの大学に居て見様見真似でベースボールの対外試合に出た時に対戦した相手のピッチャー。
あの時俺はコイツの前になすすべもなく3球三振して、その時にコイツはニヤッと笑いやがった。
「ドイツ空軍降下猟兵、ルッツ少尉」
ここで、お互いに初めて名乗り合う。
「自由フランス軍だけの突入じゃあないんだな」
「ド・ゴールがアメリカ軍の貢献も尊重して、はじめの一歩に加えてくれたのさ」
「イギリス軍は?」
「上の方がヘソを曲げてな……」
「違う国が協力し合うのも難しいものなんだな」
「マルシュ、ここから早く逃げ出そうぜ!」
アパートから様子を窺っていると、部下のピエールが騒ぎ出した。
「なんでだ?」
「だってよう、見ろよ、あのドイツ野郎の余裕を。きっと少人数と思わせておいて、今頃は仲間がワンサカきて周りを取り囲んでいるに違いねえ」
「馬鹿、見ただろう、ドイツ兵が3人しか居なかったのを。それに空軍の降下猟兵みたいに希少価値の高い兵隊が大規模な攻撃作戦でもない限り、ワンサカ集まりはしねえ」
「だったら、あのアメリカ兵に教えてやろうぜ!?」
「なにを?」
「ドイツ兵が3人しか居ない事をさ」
「そんな事をして、何になる?」
「そうすりゃあ、あのドイツ兵は捕えられるか殺されるかして、隠れている2人もお陀仏さ!」
「ピエール……お前、そんなに殺し合いをさせたいのか?」
「だってようマルシュ、アイツはドイツ兵だぜ。ドイツは俺達の敵だ」
「ドイツ兵と言っても、ドイツ人で、元は俺達と同じ人間だぞ。それに俺たちは何のために戦っている?ドイツ兵を殺すためか?違うだろう、自由の為だ」
「そりゃあ、そうだけど……でも」
「やめておけ」
「なんで!?」
「お前の眼は節穴か?見ろよあの2人を、あれが敵対する者同士に見えるか?」
窓の向こうに見える2人は、お互いに持っている煙草を交換し合い、共にお互いの煙草に火を点け合い穏やかな表情で何かを話していた。
「シュパンダウさん……ルッツ少尉、大丈夫でしょうか?」
2階の窓からルッツの様子を食い入るように見ているホルツ。
話し掛けられたシュパンダウは窓に目を向けている程度で、ホルツに比べて1箇所に集中している風ではなく、どちらかと言うとノンビリ外を眺めているような様子。
「大丈夫じゃねえの」
「もーっ、そんな他人事みたいに言わないで下さいよ」
「だってよう、ルッツの事を真面目に心配していたら、キリがねえ。自分で爆破した敵の戦車に飛び乗って逃げたり市民を虐殺しようとする親衛隊の少佐にタテついてみたり、そして今は敵の戦車と歩兵それぞれ1個小隊の前進を1人で止めて何かしようとしている。こんな事に付き合わされるだけで、こっちは寿命が縮んじまうぜ」
「確かに、それはそうですけど戦争だから仕方ないでしょう?勇気ある行動だと思いますよ、僕は」
ルッツ少尉と親友だとばかり思っていたシュパンダウ兵長の、まるで心配していない様子に苛立ちながらホルツは窓に貼り付くようにルッツたちの様子を睨んでいた。
「そうそう。戦争で思い出したんだがな。あんまり窓に近付き過ぎると、敵の狙撃兵の良い的になっちまうぜ。それに敵は窓の向こうばかりとは限らねえ」
「えっ!?狙撃兵は分かりました。でも後半のは、どういう意味です?」
「つまり、敵は建物の裏からも侵入して来るってこと。これでハリコフやスターリングラードで手痛い被害が出たんだぜ」
ホルツは驚いて、はじめて後ろを振り向いた。
「大丈夫、俺様が両方見ているから」
「で、市庁舎には何の用がある?」
ルッツは、ここでようやく本来の目的をジョンソン中尉に聞いた。
「作戦の内容を敵であるドイツ兵に教える事は出来んが、通してくれると言うのなら教えてもいい」
「内容による」
「……レジスタンスの中で、特に過激な組織の暴走を抑える事が目的の一部。その他の目的は話せない」
「ほう……レジスタンスの暴走を抑えて何かいいことでもあるのか?」
「パリの街を傷付けたくはない。レジスタンスが大々的に蜂起すれば、街は混乱に陥り市街の至る所が戦場になる」
「そうなれば、連合軍の進撃は容易くなるのではないのか?」
「いや、俺もド・ゴールもそれは逆だと考えている」
「逆?」
「つまり戦火は憎しみを生み、新たなより激しい戦火を生み出す」
「ここでレジスタンスが蜂起して、そこに連合軍が突入してパリが解放された事になれば、フランスの各地域でも同じようにレジスタンスの蜂起が始まる」
「まあ、そうなるだろうな」
「だけど、その全てに我々連合軍が対処できるとは限らないし、君たちドイツ軍の方が優勢な場合もあるだろう」
「つまるところはレジスタンスの蜂起により、ドイツ軍を混乱に陥れる事は出来るが、混乱した兵士たちによるフランス市民の虐殺を止める術はない。というわけか?」
「その通り。我々は常に秩序のある戦闘を心掛けなければならない」
「秩序のある戦闘」
復唱して思わず失笑してしまい。その拍子にこの男の事を思い出した。
この男は、ハンバーガーヒルで逃がしてやった敵の偵察部隊に居た男!
そして戦争が始まる前、俺がまだアメリカの大学に居て見様見真似でベースボールの対外試合に出た時に対戦した相手のピッチャー。
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