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battle in Paris(パリでの戦い)
[Paris street battle Ⅱ(パリ市街戦)]
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上手く警察の車両は橋の上で食い止めたが、その壊れた車が今度は警官隊の盾となって奴らを近付きやすくさせてしまっている。
「シュパンダウ行くぞ!」
「あいよ‼」
壊れた車両に近付かせないように、火炎瓶を持った俺はシュパンダウを連れて建物から飛び出す。
「隊長の援護に全力を尽くせ‼」
後ろからロスの頼もしい叫び声が聞こえる。
皆の援護射撃のおかげで無事橋の袂まで辿り着いた俺達は、持ってきた火炎瓶を取り出す。
「シュパンダウ、俺から5m離れろ」
「了解!」
シュパンダウを離したのは、火炎瓶に火を付けて投げようとした俺が敵に撃たれた時のため。
近過ぎると、2人一緒に炎に包まれてしまうから。
石の欄干の陰に隠れて、火炎瓶に火を点ける。
「行くぞ!」
「OK!」
「いちにの、3‼」
俺が立ち上がると同時にシュパンダウも立ち上がり、持っていたFG42をフルオートでブッ放す。
宙に舞った火炎瓶が放物線を描き、目標の車の傍に落ちて火柱が上がる。
その火が、あっという間に路上に零れた車のガソリンにも引火してドーンという爆発音が発生して、火だるまになった警官数人が橋からセーヌ川に飛び降りる。
「もう1本、今度は奥に投げるぞ!」
シュパンダウがマガジン交換を終えてOKのサインを出す。
「いちにの、3‼」
遠くに投げた火炎瓶が、また同じように火柱を上げ、2つの炎に囲まれて逃げ場を失った警官たちが次々に川に飛び込む。
「やりぃ!だけど警官を追っ払うなんざ、まるで犯罪者だな」
「戦争だ、仕方ない。戻るぞ!」
「了解!」
軍隊であれば、この状態でも指揮官の命令が出れば突撃を仕掛けて来る確率はある。
特にソ連兵なら。
だが警官や一般市民であるレジスタンスなら、そんな無謀な事は滅多にしない。
彼等と俺達軍人の違いは、生活を切り離しているかどうか。
彼等の多くは、戦闘が終われば家に帰り、家族や恋人や仲間たちと共に食事をして休む。
ところが俺達軍人は、帰る所も無ければ同じ軍人以外の人と食事をするどころか会話さえもすることはない。
24時間常に俺たちに寄り添っているのは、戦争。
家族が居ようが、恋人が居ようが、生きている限りその戦争から逃げ出す事は出来ないのだ。
唯一死のみが、戦争から逃れる手段。
「ザシャは正面の橋を、マイヤーとホルツは左右の橋を見張れ!ロスとシュパンダウは周囲からのレジスタンスの接近に警戒しろ。グリーデン、小隊長に警察隊がそっちに流れる可能性が有る事を伝えろ。それから電話の件は、どうだった?」
「電話は使えません。交換手がストライキだと言っていました」
「交換手が?何故交換手の言葉が分かった?」
「ドイツ語の話せる人でした」
「ドイツ語が話せる……分かった、無線は頼んだぞ」
「了解!」
小隊長が居るのは、ここから200m離れたサン・ミッシェル橋の南岸。
ここは交差点も5差路になっていて、地下鉄の駅も有るので3個分隊が配置されているが、十分とは言えない。
階段を降りてホテルの電話を取り、ケーブルの遥か向こうに居る交換手に英語で話しかける。
「We must inform Allied Forces Headquarters of the situation in Paris in the afternoon. Is the phone ready for use?(午後に連合軍司令部にパリ市内の状況を伝えなければならないのだが、電話は問題なく使えるか?)」
「Yes you can. I hope you get a good answer(はい使えます。良い返事を頂けますようお願いします)」
「OK, thank you!(ありがとう)」
やはり思った通りだ。
電話交換手は、相手が使用する言語で電話を繋ぐか繋がないかを判断している。
電話が使える状態だとマズい事になりそうだ。
直ぐに階段を上りグリーデンに無線を中隊長に繋ぐように言った。
「シュタッヘルシュヴァイン応答せよ、こちらハウンドⅡ。シュタッヘルシュヴァイン応答せよ、こちらハウンドⅡ」
≪こちらシュタッヘルシュヴァイン。ハウンドⅡどうぞ≫
「電話局がレジスタンスによって抑えられている。全守備隊に警戒を厳にするように伝達を頼む。繰り返す。電話局がレジスタンスに抑えられた。全守備隊に警戒を厳にするよう伝達を頼む」
≪シュタッヘルシュヴァイン了解した≫
「隊長、どういう事なんです?」
「電話局は、もはやドイツ軍の手を離れてレジスタンスの管轄下に置かれている。だからお前は知らずにドイツ語で通話の確認を要請して断られ、俺は英語で問い合わせて継がる事が確認できた。つまりレジスタンスと警察本部は、お互いに連絡が取れると言う状況にあると言う事だ」
「すみません」
「謝らんでもいい。これは俺達ではどうする事も出来ない。出来るとすれば……」
ここから先は言わなかった。
いや、言えなかった。
電話交換局はドイツ軍にとって、抑えておかなければならない重要な拠点。
ここが簡単にレジスタンスの手に堕ちると言う事は、ひょっとすると俺の読み通りパリ軍事総督コルティッツ大将は、本当にパリを連合軍に明け渡すつもりなのかも知れない。
「シュパンダウ行くぞ!」
「あいよ‼」
壊れた車両に近付かせないように、火炎瓶を持った俺はシュパンダウを連れて建物から飛び出す。
「隊長の援護に全力を尽くせ‼」
後ろからロスの頼もしい叫び声が聞こえる。
皆の援護射撃のおかげで無事橋の袂まで辿り着いた俺達は、持ってきた火炎瓶を取り出す。
「シュパンダウ、俺から5m離れろ」
「了解!」
シュパンダウを離したのは、火炎瓶に火を付けて投げようとした俺が敵に撃たれた時のため。
近過ぎると、2人一緒に炎に包まれてしまうから。
石の欄干の陰に隠れて、火炎瓶に火を点ける。
「行くぞ!」
「OK!」
「いちにの、3‼」
俺が立ち上がると同時にシュパンダウも立ち上がり、持っていたFG42をフルオートでブッ放す。
宙に舞った火炎瓶が放物線を描き、目標の車の傍に落ちて火柱が上がる。
その火が、あっという間に路上に零れた車のガソリンにも引火してドーンという爆発音が発生して、火だるまになった警官数人が橋からセーヌ川に飛び降りる。
「もう1本、今度は奥に投げるぞ!」
シュパンダウがマガジン交換を終えてOKのサインを出す。
「いちにの、3‼」
遠くに投げた火炎瓶が、また同じように火柱を上げ、2つの炎に囲まれて逃げ場を失った警官たちが次々に川に飛び込む。
「やりぃ!だけど警官を追っ払うなんざ、まるで犯罪者だな」
「戦争だ、仕方ない。戻るぞ!」
「了解!」
軍隊であれば、この状態でも指揮官の命令が出れば突撃を仕掛けて来る確率はある。
特にソ連兵なら。
だが警官や一般市民であるレジスタンスなら、そんな無謀な事は滅多にしない。
彼等と俺達軍人の違いは、生活を切り離しているかどうか。
彼等の多くは、戦闘が終われば家に帰り、家族や恋人や仲間たちと共に食事をして休む。
ところが俺達軍人は、帰る所も無ければ同じ軍人以外の人と食事をするどころか会話さえもすることはない。
24時間常に俺たちに寄り添っているのは、戦争。
家族が居ようが、恋人が居ようが、生きている限りその戦争から逃げ出す事は出来ないのだ。
唯一死のみが、戦争から逃れる手段。
「ザシャは正面の橋を、マイヤーとホルツは左右の橋を見張れ!ロスとシュパンダウは周囲からのレジスタンスの接近に警戒しろ。グリーデン、小隊長に警察隊がそっちに流れる可能性が有る事を伝えろ。それから電話の件は、どうだった?」
「電話は使えません。交換手がストライキだと言っていました」
「交換手が?何故交換手の言葉が分かった?」
「ドイツ語の話せる人でした」
「ドイツ語が話せる……分かった、無線は頼んだぞ」
「了解!」
小隊長が居るのは、ここから200m離れたサン・ミッシェル橋の南岸。
ここは交差点も5差路になっていて、地下鉄の駅も有るので3個分隊が配置されているが、十分とは言えない。
階段を降りてホテルの電話を取り、ケーブルの遥か向こうに居る交換手に英語で話しかける。
「We must inform Allied Forces Headquarters of the situation in Paris in the afternoon. Is the phone ready for use?(午後に連合軍司令部にパリ市内の状況を伝えなければならないのだが、電話は問題なく使えるか?)」
「Yes you can. I hope you get a good answer(はい使えます。良い返事を頂けますようお願いします)」
「OK, thank you!(ありがとう)」
やはり思った通りだ。
電話交換手は、相手が使用する言語で電話を繋ぐか繋がないかを判断している。
電話が使える状態だとマズい事になりそうだ。
直ぐに階段を上りグリーデンに無線を中隊長に繋ぐように言った。
「シュタッヘルシュヴァイン応答せよ、こちらハウンドⅡ。シュタッヘルシュヴァイン応答せよ、こちらハウンドⅡ」
≪こちらシュタッヘルシュヴァイン。ハウンドⅡどうぞ≫
「電話局がレジスタンスによって抑えられている。全守備隊に警戒を厳にするように伝達を頼む。繰り返す。電話局がレジスタンスに抑えられた。全守備隊に警戒を厳にするよう伝達を頼む」
≪シュタッヘルシュヴァイン了解した≫
「隊長、どういう事なんです?」
「電話局は、もはやドイツ軍の手を離れてレジスタンスの管轄下に置かれている。だからお前は知らずにドイツ語で通話の確認を要請して断られ、俺は英語で問い合わせて継がる事が確認できた。つまりレジスタンスと警察本部は、お互いに連絡が取れると言う状況にあると言う事だ」
「すみません」
「謝らんでもいい。これは俺達ではどうする事も出来ない。出来るとすれば……」
ここから先は言わなかった。
いや、言えなかった。
電話交換局はドイツ軍にとって、抑えておかなければならない重要な拠点。
ここが簡単にレジスタンスの手に堕ちると言う事は、ひょっとすると俺の読み通りパリ軍事総督コルティッツ大将は、本当にパリを連合軍に明け渡すつもりなのかも知れない。
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