Jesus Christ Too Far(神様が遠すぎる)

湖灯

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[Savagery of the SS I(親衛隊の蛮行)]

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 だがこれで俺たちの存在は暴露された。

 のうのうと休んでいる暇はもうない。

 レジスタンスは連合軍に俺たちの情報を流すだろう。

 こんな小部隊と言えども、俺たちは村でM4戦車4台を破壊し1個中隊を退却に追い込んでいるから只では済まない。

 俺たちは特に空からの攻撃を警戒して、より道から離れた森の奥を進んだ。

 しばらく進むと案の定上空に双発の地上攻撃機ロッキードP38ライトニングが現われたが、難なくこれに発見されることなくやりすごすことに成功し、それから俺たちは3日3晩歩き続けてようやく本隊が居るルーアンの街はずれの村まで辿り着くことが出来た。

 村に到着すると、今度は意外なものが俺たちの行方を阻んだ。

 阻むと言っても、敵ではなく味方であるはずの同じドイツ軍。

 村の教会の前に40人程の住民たちを集めていたのは、ドイツ軍の親衛隊。



「何やっているんだ、アイツ等?」


 目を丸くしてシュパンダウが口を開く。

 親衛隊員達が銃口を市民に向けていることから、友好的な集会で無いのは一目瞭然だった。

 他の町や村からも撤退してくる兵士が通り過ぎて行くが、その誰もが見て見ぬ振りをして道を抜けて行く。


「ロス、本部の場所は分かるな」

「はい」

「ではすまないが、先に行っていてくれ」

「……分かりました。でも隊長は?」

「用を思い出した」




 分隊と別れて教会に向かう。


「おい、コラ!どこに行こうとしている!」

 教会の中に入ろうとすると、親衛隊員に怒鳴られた。

 やつの襟に付いている星は1つ。


「俺は“おい”でもなければ“コラ”でもない。言葉に気をつけろ、伍長」


 言われても分からないでいる伍長は、嫌な顔をして黙って俺を睨んでいた。


「どこに行こうというのかね。ここは立入禁止の場所だ」


 今度は襟に4つ星の少佐が威圧的な態度で手招きをする。


「教会にお祈りを捧げるのことが、親衛隊の規則では禁止なのか?」


 敬礼もせず、手招きもワザと見えなかった素振りで教会の中に入ろうとするのを奴の部下に腕を掴まれて止められた。

「何をする‼」

 予想はしていたが、ここも驚いたふりをして腕を掴んできた2人の兵士を打ん殴った。




「やめたまえ!こっちに来い‼」


 親衛隊の少佐が拳銃を俺に向けて、蛇のような目で睨む。

「ところで、ここで、一体何を?」

「黙れ、空軍。階級は!?」

 俺の迷彩服には階級を示すものは何も付いていない。

「軍曹だ」

 外に来ていた迷彩服を開いて、中に来ていた空軍の軍服を見せた。

 この服には階級章も勲章も付いている。



「先ず上官に向かって敬礼をしろ」

 仕方無しに敬礼をした途端、拳銃を握ったままの手で頬を殴られた。

「丁度いい、お前にも撃つ権利を与えてやる。この銃を持て」

 渡されたのはKar98k。

「これで一体何を?」

「撃て」


「貴方を?」

「ふざけるな‼」


 またビンタを食らい、少佐の顔が集めた市民に向けられる。


「虐殺か」

 言った途端に拳銃を喉に突きつけられ、胸ぐらを掴まれる。

「軍曹、言葉を慎み給え。この者たちはレジスタンスの協力者だ」

「証拠は、あるのか」

「彼らは、レジスタンスを匿っている」

「彼ら?一家庭に1人ずつ?」

「黙れ‼上官侮辱罪で軍法会議に掛けられたいか!」

 また、拳銃を持った手で打たれた。


「上官侮辱罪!?軍法会議?それより一般市民を虐殺する行為は国際法に違反している事を知っているのか!?」

「黙れ!虐殺ではない。私は罪深いものに罰を与えているのだ‼」

 また少佐に殴られ、今度は腹も蹴られて倒れた。

「罰?誰の許可を得ている?法務官でもないお前に何の権限がある?」


「権限?……では聞くが、軍曹、お前は戦場で何の権限があって人殺しをしているのだ?」

「俺たちは戦争を遂行しようとする意志を持つ祖国の命令により、敵対する兵士と戦う権限が与えられている。だがそれは武器を持った敵の兵士が対象で、武器を持たない市民は対象ではない。もし何らかの罪を犯したとしても、それを裁くのは軍ではなく司法のはずだ」

「敵兵の中にスパイがいたら、どうする?」

「スパイ?」

「そうだ。スパイなら見つけ次第射殺しても構わないだろう?」

「少佐のお話しでは、まるでここに居る者達がスパイの様に聞こえますが、聞き違いでしょうか?」

「聞き違いではない。奴等はスパイだから我々が処刑する。至極当然の事だ」


「……ク、ククク……ワハハハハ」


 おれは、とうとう堪え切れずに、大声で笑い出してしまった。

 俺の笑い声に、今まで見て見ぬ振りをして通り過ぎていた兵隊たちが立ち止まる。


「どうした!?なにが可笑しい‼」


「だってそうだろう?一挙に40人ものスパイを捕まえたアンタは英雄だ。これを知ったら宣伝相のゲッペルスが、その偉業をラジオで世界中にバラ撒いてくれるぜ。この爺さんや婆さん、子供や赤ん坊までスパイとは世界中の人々もさぞや驚くことだろう」

「ええい、黙れ‼貴様、喋らせておけば無礼に程がある」

 少佐の指示で部下の親衛隊員達が俺に銃口を向けた。

「軍法会議が嫌なら、コイツ等を撃て。そうしたら見逃してやってもいい」
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