Jesus Christ Too Far(神様が遠すぎる)

湖灯

文字の大きさ
上 下
10 / 98

[Withdrawal(撤退)]

しおりを挟む
「え……僕、死んだんですか? 生き返ったんじゃないんですか?」

「誠に残念ですが」

「そんな……」

光村哉太みつむらかなた様、貴方は生き返った訳ではありません。 

「え……それって、どう言う……」

 光村哉太みつむらかなたは、生き返った訳ではない、だが女神セラの、と言う言葉に、困惑していた。

「__じゃあ、ここって、どこなんですか? 天国とか地獄には見えないし、一体ここは」

「ここはガーデン、あの世とこの世の中心点に存在する場所です。 そしてガーデンとは、女神が死んだ人間の魂を導く場所でもあります」

「え……えっとぉ」

「とても困惑されていますね。 無理もありません。  ゆっくりと説明をさせて頂きます」

「は、はい……」

「地球の日本時間で、2027年4月7日 午前8時27分35秒……光村哉太みつむらかなた様は通り魔であり薬物中毒者である林哲夫はやしてつおによって、包丁でお腹を刺され、貴方の意識は、ここガーデンへと導かれました」

「やっぱりあの時、僕は刺されたんだ」

「はい」

「でも、どうしてここに僕の意識が」

「貴方が強くそれを望まれたからでございます」

「僕が?」

「はい、通り魔に刺され、意識が朦朧もうろうとしていた時、私は貴方に問いました。 生きたいかと、そして貴方は強く、生きたいと願った」

「!」

「私はその事を承諾し、貴方の魂をここへ導かせて頂きました」

「そうだ……僕はあの時……! あの!」

「はい……なんでございましょうか」

「佳奈は、佳奈は大丈夫なんですか! 生きてますよね!」

「はい、野村佳奈のむらかな様は、今も生きています。 今は病院で、手術を終え意識が戻らない貴方のすぐ側にいます」

「意識が戻らない?」

「はい」

「それはきっと、僕がここにいるからですよね。 生き返る事ができるなら、僕を現世に戻してもらえませんか! お願いします!」

 哉太は、これでもかと言うぐらい、頭を下げ、女神セラに頼んだ。

「そうする事自体は可能ですが、それはできません」

「え……なんでですか」

「今この状態で意識を戻せば、貴方はそのまま死んでしまうからです」

「え、でも今ここに」

「それは貴方の魂のみをガーデンに置いている為です。 貴方の本物の身体は、本来であれば死んでいる傷です。 手術したものの、身体がとても弱っています。 今このまま戻しても、貴方は生き返る事ができません」

「そんな……じゃあ僕は、二度と佳奈に」

「顔を上げてください……光村哉太様、方法がない訳では無いのです」

「え……」

「貴方が生き返る方法が、私が知る限り1つだけございます。 その1つと言うのは、別の次元の世界へと行き、そこで生命力を高めてもらうのです」

「別の世界?」

「分かりやすく言うのなら、異世界と呼ばれる場所でございます」

「い、異世界!?  それって、アニメとかでよく聞く、あの異世界ですか?」

「はい、その異世界です」

「でも、どうして異世界に?  それに生命力って」

「先程も申し上げた通り、今のあなたの身体は、生命力が0に等しいのです。 生命力を上げるには、どこか別の場所で、身体を動かし、生命力を上げていくのです」

「生命力って、身体を動かすだけで上がるんですか?」

「本来であれば、身体を動かすだけではなんの意味もありません。 ですがそこは、女神の力を使わせて頂きます」

「女神の力……」

「はい。 そして、生命力を上げる手助けとして、貴方に1つ、能力を授けました」

「能力って、一体どんな」

「『オーバー』という能力です。 ある条件を満たした時、貴方は限界を越えた力を得ることができます。 知識、パワー、思考速度、視野の拡大」

「なんか、凄いですね。 それでその、条件と言うのは」

「それは、特定の気持ちが深く高まった時です」

「特定の、気持ち」

「はい、詳しくは、実際使われた方が早いでしょう」

「わ、分かりました」

「それでは、異世界に向かうに辺り、絶対のルールをご説明させて頂きます」

「ルールですか?」

「はい。 異世界に行った際、基本的には、光村哉太様がなにをしても、我々は干渉しませんし、自由です。 ですが度を超えた行為、功績をした場合には、それなりの処罰が下ります。 度合いの大きさは、私女神セラが判断します」

「分かりました」

「世界を救い英雄になったり、困っている人々を助ける、そういった行ないは全然良いのですが、逆に世界を破壊、支配等の行為は処罰の対象になります」

「はい」

「それと、異世界の時間軸と日本の時間軸は全く違い、お互いに関与してません。 ですので異世界でどれだけの時間を過ごそうとも、戻る時には、あの瞬間の時間に戻すことが可能ですので、ご心配なさらなくて大丈夫でございます」

「そうなんですね! それは良かったです」

「他に何かご質問はありますでしょうか」

「異世界で死んでしまった場合って、どうなっちゃうんですか?」

「その時は、特定の回数内では生き返ることが可能です。 異世界では日本と違い魂の他に魔力という力が身体に流れています。 その魔力が尽きていなければ、可能です」

「そうなんですね」

「はい。 ちなみにその特定の回数は、私の力では、6回が限度です」

「6、分かりました。 頑張って生きます」

「はい。  それでは、光村哉太様、貴方を異世界へと転送します。 どうが貴方に、女神の奇跡があらんことを」

女神セラは右手を前に出し、光村哉太に転送魔法をかけ、身体が少しずつ透けていった。 消えた時には異世界に辿り着くと言うものだ。

「___」

光村哉太は、ゆっくりと目を開けた。

「ここが異世界、凄いな。 アニメやゲームで見たのと同じだ」

人生で初めて異世界に行き、ワクワクしていた。

「こういう時は、まずギルド、街の方だよな。 行くか」

光村哉太は、まず戦う職業、冒険者になる為に、ギルドがある街の方へと歩いていった。

~それと同じ頃、ある城にて~

「おい、いたか?」

「いやいない、早く見つけるぞ」

「あぁ、大罪人を処刑しないとなぁ」

「騎士アウラ、必ず見つけ出して、殺す」

「__はぁ……はぁはぁ(私はまだ死ぬ訳にはいかない)」

右腕を斬られ、頭からも血を流していた騎士長アウラという少女は、一般兵を殺した容疑者の汚名をきせられ、国から追われていた。

「(マイ、ごめん)」

ある約束の為、死ぬ訳にはいかない彼女はフードを被り、木を隠すなら森の中ということで、街の方へと逃げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】

まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と… 「Ninagawa Queen's Hotel」 若きホテル王 蜷川朱鷺  妹     蜷川美鳥 人気美容家 佐井友理奈 「オークワイナリー」 国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介 血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…? 華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...