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*****Opération“Šahrzād”(シェーラザード作戦)*****

巨乳でオッドアイ①

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 その日の夕方Šahrzād作戦の報告会が行われた。

 壇上に上がって報告書を読み上げるエマは、もう昼間とは違い、誰が見てもDGSEのエリートエージェントそのもので昼間の面影は微塵もない。

「国軍、及び外人部隊のLéMATの皆さん、お疲れ様です。今回のエージェント救出ならびにザリバンの司令官暗殺・捕獲のŠahrzād作戦は皆さんの協力のもと、司令官のバラクのみならず副司令官のレイラの両名の捕獲に成功するばかりか、武器倉庫の爆破・アジトの破壊などザリバン勢力の無力化という当初の目的以上の成果が上がったことを誇らしく思います。残念ながら捕獲したバラクは不慮の事故により死亡しましたが、この作戦での死傷者は当方0人、ザリバンもバラク以外の死亡者を出さず恨みを残さずクリーンな状態で解決できました」

 赴任してきたときと違い、エマの長い報告も、誰一人文句も言わずに聴き入っていたことこそが、この作戦の価値があったのだと思い聴いていた。

「最後に、この作戦に於いて慣れないエージェントとして並々ならぬ活躍をしてくれた傭兵部隊LéMATのナトー2等軍曹に感謝いたします」

 エマの言葉に、出席者全員が俺の方を振り向いて拍手してくれた。

「なを、ナトー2等軍曹にはDGSE参謀総長から後日勲章が授与されることも、合わせて報告いたします」

 また、ここで拍手が起こり、隣に座っていたトーニに「スゲーな」と言われて小突かれた。

 エマが壇上から降りると今度はアンドレ基地司令が壇上に上がり、トリポリとベンガジに分かれているリビアの現状と、油田開発の利権争いでロシアの他にも同盟国同士で足並みの揃わない厳しい状況の説明があった。

 そして、本作戦中に街中でオートバイに乗って銃をブッ放した犯人を現在リビア警察が捜索中であることも付け加え、今度もトーニが反対側の隣に座ったフランシスを小突いて「俺様に逆らったら密告してやるぞ」と言っているのが可笑しかった。

 最後にLéMATの本国への帰還が1週間後である事も伝えられ、隊員全員が起立して労いの拍手を受けた。

 会議が終わり外に出てエマを待った。

 聞きたいことがあったから。

 しばらくしてエマも出てくると、直ぐに俺を見つけて、走って来てくれた。

 お互いに「「聞きたいことがあるの」」と、同時に言ってしまい、またお互いに笑った。

「とりあえず、ここでは何だから私のテントに行こう」

 確かに、ここでは支障があった。

 話の内容もそうだけど、2人の美女を囲むように大勢のギャラリーが取り囲んでいたから。

 エマのテントは来賓用の物で、一般の隊員は本人、あるいは基地司令の許可がなくては入れない。

 もちろん今はエマと一緒だからフリーパス。

 テントに入ると真っ先に猫ちゃんが飛んできて、ベッドに腰掛けた私の膝に乗る。

「「話って」」

 またお互い同時に言って笑う。

「じゃあナトちゃんから、どうぞ」

 そう言われて素直に従った。



「さっきバラクは不慮の事故だって言っていたけれど、どういうことなの?」

 紅茶を入れながらエマが答える。

「ごめんなさい。何の相談もなしに決めちゃって。嫌だった?」

「ううん。そんなことは無いけれど、事実と違うと思って」

「そうね、彼女優秀でしょ。それにもう改心しているし、行く行くはDGSEに取り込もうと思って。殺人だと軽く10年は務所暮らしでしょ、それに……」

「それに?」

「何となくだけど、バラクも望んでいなかったと思うの」

「と、言うと?」

「指令と副指令の関係だから、お互いの手の内は知っているはずでしょ。だったらレイラが付け爪にナイフを隠し持っている事も知っていたんじゃないかと思って」

「だったらバラクは最初から死ぬつもりで?」

「なんとなくだけど、あの人にとっては、尋問は捕虜になるよりも屈辱だったような気がして……ほら、イケメンで学識があってスタイリストだったでしょ」

 イケメン云々はさて置いて、その事は俺と同じ見解だった。

「分かった。じゃあ次はエマの番」

 紅茶を手に渡されて、エマが聞いて来た。

「ナトちゃん。あなたいったい何者なの?」

「何者って?」

「Šahrzād作戦の計画書が通ってリビアに向かうことが決まったとき、上層部の判断で私のパートナーが替えられたの。それが貴女」

「上層部の判断で?」

「そう。だから、どれほど優秀な人だと思って来てみたら、外人部隊の一介の2等軍曹でしょ。しかも諜報作戦の経験もないただの気の強そうな女だし」

「まあ」

 そんな風に思われていたなんて気が付かなかった。

 しかし、似たような話はどこかで聞いたことがある。

 そう。

 それは傭兵部隊への入隊試験の時にレストランでハンスに聞かれたこと。

“いったい何がある”と。

「しかし、一緒に行動しているとナトちゃんの吸収力の高さには驚かされたわ。いつの間にか私のしていたことを覚えて……そして、それ以上のことまで自然に出来てしまう」

「そんなことないよ。私なんか」

「いいえ、そうよ。あのムサでさえ“あの女はCIAのスペシャルエージェントか?”って私に聞いて来たくらいですもの」

「かいかぶり過ぎよ」

 エマは紅茶を一口飲んで「まっ、そうかもね。ベッドテクニックが、なってないもの」と言って笑い、そして直ぐに真剣な目をして私の目を覗き込んできた。

「私は明日直ぐにまた本国へ帰るの」

「忙しいのね」

「そう――だから、今夜は離さないわよ」

 そう言うと、いきなり俺の体に覆いかぶさって来た。

 床に、持っていた紅茶の入った金属製のカップが転げ落ちカランと音を立てた。

「なにを……」

 直ぐにエマの唇が俺の唇を塞ぐ。

 除けようと上げた手を掴まれると、次第に力が入らなくなってきて、いつの間にかその手がエマの体を抱いていた。

「私の可愛い子ネコちゃん」

 いったん顔を上げてエマが、そう言ってまた唇を押し当てて下を絡めてきて、俺は必死にエマの背中を抱き気が遠くなって行くのを耐えていた。
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