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*****Opération“Šahrzād”(シェーラザード作戦)*****

平穏なリビア②

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 基地へ戻ってから1週間後、正式にŠahrzād作戦の終了が国から届くとニルスが教えてくれた。

 これで俺たちはもうリビアに居る意味がなくなる。

 その日、久し振りにDGSEのエマ大尉がやって来た。

「あら! ナトちゃん久し振りぃ。元気にしていた?」

「やあエマ大尉、お疲れ様。本国では色々と大変だったでしょう」

「なによ、敬語なんか使っちゃって。エマで良いのよ2人の時は」

 そう言ってエマは笑いながら、腰をポンポンと叩いた。

「腰を痛めたのか?」

「そうなの。もう激しくって」

 エマが何を言っているのか分からないでポカンとしていると、手を取られてテントの影に連れて行かれた。

「実はね私、これでDGSEを辞めるつもりでリビアに来たの」

「辞めるの?!」

「それでね、ここへ来る前に実は休暇を取ってムサのお店に行ってきたの」

「ムサのお店に? 世話になったから?」

「うん。それもあるけれど、実は……」

「実は??」

 相変わらず、なにを言っているのか分からない。

「実は結婚しようと思って、告白してきたの」

「告白! セバと?」

 正直、驚いて思わず大きな声を出しそうになって、エマに口を押えられた。

「違うわよぉ」

「じゃあクリーフ?」

「どうして、1人飛ばすのよ!」

「えーっ! じゃあムサとぉ??」

「ちょっと、そこ驚くポイントじゃないでしょ」

「いや、普通驚くだろ? 相手は退役軍人だぜ。歳の差なんて幾つあるんだ?」

 俺が驚いて言うと、エマは見るからに膨れっ面になった。

「失礼ね! 恋愛に歳の差なんて関係ないの。大切なのはインスピレーションよ」

 そう言いながら、また腰をポンポンと叩く。

「寝たの??」

「ナトちゃん。直球過ぎ! でも“寝た”わよ。正確には“寝ていた”だけど」

「寝ていた? じゃあ俺がレイラと街に出た日や、1人でバーに行った日。……もしかして、あのマッサージしていた日も?」

「そう。そのまさか」

「で、決まったの? 式はいつ?」

「それがねぇ――。断られちゃったの」

「断られた?」

「そう。お前には、もっと良い人が現れるだろうって。さんざん私のこと突きまくった挙句がコレよ。“老いてなを元気”って言葉は、屹度あの人にためにある言葉だわ。

「チョッと待って。エマは今まで何十人もの男と寝たって前に言っていたよね。それってもしかして振ったんじゃなくて――」

「そう、振られちゃったの。だから女に走ったのよ。しかし今回ばかりは旨くいくかと思ったんだけどなぁ~。ムサにしてみたら孫ほど年の差のある若い奥さんでしょ、それに美人でスタイルも良いでしょ」

 確かに、その点は否定しない。

「ねぇ、ナトちゃん……」

 エマが俺にすり寄ってきた。

 これは、ヤバイパターン。

 こんな所でキスしているのが見つかったらLéMATを首になるどころか、外人部隊にだって居られなくなる。

「ダメダメダメダメ!」

 そう言って、くっ付こうとしてくるエマを跳ね退けた。

「チェッ。私ならナトちゃんの良い奥さんになれると思うんだけどなぁ」

「俺は、男じゃ……」

「んっ? 男じゃないの?」

「いや、部隊では女じゃない」

「じゃあ男でしょ」

「いや、それも違う」

 答えに困っているところに、俺を探しに来た黒猫がやって来てミャーとないた。

「あら、可愛い! どうしたのこの子」

「あの後、パトロールでバラクのアジトに立ち寄ったときに拾った」

「で、どうするの? 外人部隊の寮はペット禁止でしょ」

「だから、いま引き取り手を探している」

「そう……」

 エマは猫を抱き上げて「じゃあ私が貰って上げる」と言った。

「いいの?」

「いいよ、この子なら屹度拒否はしないでしょ」

「でも、女の子だよ。その子」

「もう。だから百合だって言ってあるでしょ」

 相変わらずのエマだった。
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