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13:反撃はこれから
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ライルお義兄様は馬車を降りた際はほんの少し驚いたように目を丸くしたけれど、それはほんの一瞬のことですぐににやりとした笑みに隠れてしまいました。
それにしても、体格の良いライルお義兄様が礼服に身を包むとこう……エッカルト様の貧相さが際立つというか、お義姉様の見る目は確かだなあとか、そんな二人を縁結びした私の計画性万歳とか、ものすごくどうでもいいことを考えてしまいます。
(これって現実逃避ですかね……?)
思わず遠い目をしてしまった私をよそに、お義姉様は私を抱きしめたままパアッと花のような笑顔を見せました。
「ライル様!」
「待たせて申し訳なかった」
「いいえ。お役目ですもの」
お義姉様が普通のご令嬢としての喋り方ができていることにライルお義兄様は少し驚いているようですが、その様子は微塵も感じさせません。
私は近距離にいるから気づきましたが……ふふふ、そうでしょうそうでしょう、この一ヶ月どれほどお義姉様が一生懸命特訓したことか!
その成果をとくとご覧あれ!
でも私を挟んでイチャイチャなさるのはよしてくださらないかしら。
正直、今の私ってフラれた女側なんですよ、多分。
微塵も悲しくないのが笑えちゃいますけれども、確かにフラれた……というか婚約破棄を申し入れられたんですもの。
ああ、そうでした。
「エッカルト様、その婚約破棄、承りましたわ。どちらが悪いかは後ほどハッキリさせていただきますわね」
「なっなっ、なっ……なにを! おま、おまえが、ルイーズ、お前が悪いに決まって……」
「そもそもこのような場所で他の方のことも考えずに騒ぎ立てることはよしといたしません。夜会に泥を塗られるおつもりですか? これ以上の醜態を晒したいのならばご勝手に、ですが私たちを巻き込まないでくださいませ」
私が婚約破棄を承知したのだ、役人立ち会いの上で形式上の契約をきちんと破棄するまでは書類上婚約者としてまだ扱われるかもしれないけれど……不幸中の幸い、証人は大勢いらっしゃるのです。
周囲を見回してみれば、これまでも夜会でお目にかかったことのある方々が私に対して同情的な眼差しを向けてくださっておりました。
見世物になってしまったことは大変遺憾ですが、私もいずれ女侯爵となる身、この状況を利用できなくてその大任は務まりません。
私の宣言と、周囲の眼差しにようやく気づいたのか。
或いは大喜びで自分に駆け寄ってくるお義姉様を想像していたのに、婚約者だという逞しい男性の登場とそのラブラブっぷりに愕然としたのかはわかりませんけれど、エッカルト様は私たちを睨み付けたかと思うとそのまま会場へと踵を返していきました。
あらいやだ、夜会には参加なさるんですのね?
「……まったく、どうしましょう」
「婚約破棄になったのか」
「ええ、こちらから契約破棄を突きつけてやりますわ」
言い出したのは向こうだけれど、きっと子爵夫妻はごねるでしょうね。
ですから私が今度は申し出てさしあげましょう。
まあ、今日の夜会はこの一件で持ちきりになると思うと今すぐにでも帰りたいですが……そうはいきませんものね。
「なら、ちょうど良かった」
「ライルお義兄様?」
「ルイーズ嬢、紹介したい人物がいる。会場に入る前に、少々時間をいただけないか」
それにしても、体格の良いライルお義兄様が礼服に身を包むとこう……エッカルト様の貧相さが際立つというか、お義姉様の見る目は確かだなあとか、そんな二人を縁結びした私の計画性万歳とか、ものすごくどうでもいいことを考えてしまいます。
(これって現実逃避ですかね……?)
思わず遠い目をしてしまった私をよそに、お義姉様は私を抱きしめたままパアッと花のような笑顔を見せました。
「ライル様!」
「待たせて申し訳なかった」
「いいえ。お役目ですもの」
お義姉様が普通のご令嬢としての喋り方ができていることにライルお義兄様は少し驚いているようですが、その様子は微塵も感じさせません。
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でも私を挟んでイチャイチャなさるのはよしてくださらないかしら。
正直、今の私ってフラれた女側なんですよ、多分。
微塵も悲しくないのが笑えちゃいますけれども、確かにフラれた……というか婚約破棄を申し入れられたんですもの。
ああ、そうでした。
「エッカルト様、その婚約破棄、承りましたわ。どちらが悪いかは後ほどハッキリさせていただきますわね」
「なっなっ、なっ……なにを! おま、おまえが、ルイーズ、お前が悪いに決まって……」
「そもそもこのような場所で他の方のことも考えずに騒ぎ立てることはよしといたしません。夜会に泥を塗られるおつもりですか? これ以上の醜態を晒したいのならばご勝手に、ですが私たちを巻き込まないでくださいませ」
私が婚約破棄を承知したのだ、役人立ち会いの上で形式上の契約をきちんと破棄するまでは書類上婚約者としてまだ扱われるかもしれないけれど……不幸中の幸い、証人は大勢いらっしゃるのです。
周囲を見回してみれば、これまでも夜会でお目にかかったことのある方々が私に対して同情的な眼差しを向けてくださっておりました。
見世物になってしまったことは大変遺憾ですが、私もいずれ女侯爵となる身、この状況を利用できなくてその大任は務まりません。
私の宣言と、周囲の眼差しにようやく気づいたのか。
或いは大喜びで自分に駆け寄ってくるお義姉様を想像していたのに、婚約者だという逞しい男性の登場とそのラブラブっぷりに愕然としたのかはわかりませんけれど、エッカルト様は私たちを睨み付けたかと思うとそのまま会場へと踵を返していきました。
あらいやだ、夜会には参加なさるんですのね?
「……まったく、どうしましょう」
「婚約破棄になったのか」
「ええ、こちらから契約破棄を突きつけてやりますわ」
言い出したのは向こうだけれど、きっと子爵夫妻はごねるでしょうね。
ですから私が今度は申し出てさしあげましょう。
まあ、今日の夜会はこの一件で持ちきりになると思うと今すぐにでも帰りたいですが……そうはいきませんものね。
「なら、ちょうど良かった」
「ライルお義兄様?」
「ルイーズ嬢、紹介したい人物がいる。会場に入る前に、少々時間をいただけないか」
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