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17 愛される姉と可哀想な妹

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「あーーーー、本当に良かったわぁ! ディーヴァス王国の連中が甘ちゃんで本当に良かったア!」

「アリーナ、はしたないよ」

「うふふ、ごめんなさァい。でもアナタとの関係も認めてくれたし、属国になってもワタシが女王のままでいいだなんて……すごく素敵じゃない?」

「まあ、そうだね……」

 ワタシの名前はアリーナ。
 歴史あるインフォルトニ王国の第一王女として生を受け、そして女王になった。
 当然のことだわ。

 ワタシには妹が一人いる。
 似ても似つかない、体も弱く大人しいばっかりで可哀想な・・・・アナスタシア!
 両親からの愛情はワタシだけに注がれてしまったが故に、女王であるお祖母様が見捨てることもできないと育てた哀れな子。
 あの子が建物の中からワタシを羨ましそうに見ている姿を見つけては、何度笑ってしまいそうになったことか。
 真っ白な髪にグレーの瞳、ちょっと外に出るだけで焼け付く青白い肌。
 どこからどう見ても不気味だったわ!

 お祖母様はそんなあの子にあれこれと教育したり構ってあげていたみたいだけど、あんな愚鈍な子に何ができるっていうの。
 ワタシみたいに外に出て民から羨望の眼差しを集めることも出来ず、大きな日傘にベールを被って一人だけお葬式みたいな格好をして!
 みっともないったらありゃしない。あれがワタシの妹だと思うとムカムカするわ。
 
 実際女王であるお祖母様が亡くなったらお父様に塔へ行くよう言われていたし。
 厄災の娘、だったかしら?
 禍をその身に宿して周囲を守るんだかなんだか、そんなことをお母様が言ってらしたからまあ役には立っているのでしょうね。

 でもそれってつまりくずかご・・・・のようなものなんでしょう?
 なら近寄ってほしくはないわよね。仕方ないわ。
 元々ワタシたち家族とは疎遠だったんだから、あの子だって気にしないでしょう。

 なんといってもワタシは女王だもの。
 綺麗なものを侍らせて、この国の代表として君臨しなくちゃいけないの。
 あんな汚らしい子が妹だからって近くにいたら、ワタシの品位が疑われちゃうじゃない。

(でも、さすがにしばらくは大人しくしていた方がいいわね)

 最初はほんの少しの好奇心だったのよ。
 かつてインフォルトニ王国は騎兵隊を率いて大陸最強だったことがあるって吟遊詩人の歌で聞いたの。
 その栄光ある血を受け継ぐワタシがそれを再現できたら素敵だと思ったのよ。
 女性で騎兵隊を率いて勝利するなんて、まるで伝説の一幕みたいでしょう?

 でも実際の戦場はとんでもなく汚くて、恐ろしい場所だったわ!
 さすがにどこかに幽閉されるかと覚悟をしたけれど……それか、ワタシのような美女だから王妃にと望まれてしまうかもとか。
 まああちらの王太子殿下は割と見目麗しい男性だったから嫁いであげてもよかったけれどね!

(しかしアナスタシアを選ぶだなんて、変な人たちねえ)

 なんだったかしら?
 慈愛の人……とかなんとか言っていた気がする。

 まあ、十八歳になったあの子は疫病神へと転化したそうだから、厄介払いがで来てちょうど良かったのよ。

 敗戦国の女王、なんて呼び名はちょっぴり嫌だけど……まあ仕方ないわ。
 女王でいられるんだから文句を言ってはいけないわよね!

「ねーえハリー、こちらへいらっしゃいよ」

「わかった今行くよ、可愛い人」

 しかもお気に入りの愛人、ハリーを王配にしていいって許してくれたの。
 ハリーは見目麗しい男性で、一番のお気に入り。
 だけど身分は平民だったから愛人っていう形でワタシの傍にいてくれるんだけど、今回インフォルトニ王国が属国として下ったことによりディーヴァス王国から今後の方針指示が来たのよね。

 内政については宰相に全部任せたけど、そこにはワタシとハリーを結婚させることって記されていたのよ!
 ああ、なんて素敵なのかしら!!

 それもこれもアナスタシアが生け贄になってくれたおかげね。
 初めて感謝してあげるわ!

 ……だけど、ワタシは気づかなかった。
 ベッドに入ってきたハリーが、浮かない顔をしていたことに。
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