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看板犬

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ーーある朝の冒険者ギルド

「わふ!(おはよう!)」

「あら?シロちゃんおはよう!」

「よお!シロ。」

「はよ~」

「ン‥‥。」

わしゃわしゃと来る人来る人に撫で回される。んひゃっ、気持ちい!

トンっと飛び上がって依頼掲示板ボードの前に置かれた僕専用の椅子に登って依頼を吟味する。これは毎日の日課だ。

ブライトはCランクパーティー『蒼狼』の教育をはじめ様々なパーティーや個人の冒険者の新人教育を担当している。そのため日中は別々に行動しているのだ。

僕は自分で依頼を決めて毎日冒険者として活躍してる。前まではブライトが依頼を受理していたんだけど特例で僕も冒険者登録させてもらってからは一人前の冒険者だ!

ほら見て!ギルドタグもあるんだよ!むっふー!

ただし、僕はあくまで特例なのでランクは設定されていない。このギルドでは依頼は推奨ランクが分かれているがあくまで推奨なのでどの依頼も制限なく受けることができる。全てにおいて自己責任だ。

新人がイキって高ランクの依頼を受けて帰らぬ人となるっていう悲劇がよく起こってしまう。それを防ぐためにグランドがギルドマスターになってから新人教育という制度を作ったのだ。

最初はギルド側から依頼されたベテラン冒険者監督の元、依頼をこなす。知識をつけ、実力を知り一人前と認められるようになってから初めて個人またはパーティーで依頼を受けられるようになるという制度だ。

これのおかげで新人冒険者の死亡率はぐんと下がった。この新人教育をブライトはやってるんだよ!片足を怪我していて現役のAランクのようには動けないけど新人教育は完璧だ。知識もあれば経験もある。新人が受ける依頼程度ならハンデがあっても余裕でこなせるからね。みんなブライトに教育してほしくて毎日引っ張りだこだ。

僕は薬草採取を中心に最近は討伐依頼も受けるようになった。討伐依頼は等級の低いものばかりだけどね‥‥。

いろんな冒険者と知り合いになって暇な時はギルドに入り浸っているといろんな話をしてくれる。

毎週3回ほどグランドが僕に稽古をつけてくれるようになったんだ。魔力の扱い方、効率の良い敵の倒し方。魔物の特徴。色々なことを教わっている。

おかげでどんどん強くなっていってるよ!特に魔法が使えるようになったのは大きいかな。今まで意識せずなんとなくで使っていたものを意識して操れるようになったら威力が跳ね上がった。





今は夕方、僕は依頼を終えてブライトの帰りを待っている。

まだかなぁ?まーだかなぁ?

ピコンっ!耳がぴくぴくと動いてかすかな足音を拾う。帰ってきた!

扉の前まで行って待っていると扉が開いてブライトが入ってきた!

「わふっ!(おかえり!)」

「ただいま。さあ、帰ろうか!」

2人で並んで帰り道を歩く。

家に帰ったら大好きなお風呂に入ってブライトに乾かしてもらうんだ!もちろん、ブラシで梳かしてもらうのも忘れずにね!

ふんふふっふ~ふん!

自然と足取りは軽くなる。

「お前もすっかりギルドの看板だな。もう、ギルドだけでなく街全体がお前のこと知ってるぞ。おかげでギルドへのイメージが和らいでいい効果になってる。」

「わふ?(そう?)」

「ハハっ、いつもみんなに撫でられて気持ちよさそうにしてるもんな。」

「わふわ!(ブライトが1番だよ!)」

「可愛いやつめ!ーーにしてもお前、やっぱり大きくなってんな。あんなにちっこかったのになぁ。成長速度が速いな~。」

そうなのだ、実は随分と成長して大きくなった。子犬の域を脱した!

人間で考えられない成長スピード。‥‥犬ってどれくらいの成長速度だったっけ?ーーわかんない!まあいっか!

僕は子犬から立派な犬にグレードアップしたんだ!

むふっー!!

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