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残されたのはぐちゃぐちゃになった馬車と熊の死体と大量の血の跡。

「くぅ~ん。わふっ!」

子どもの手足の縄を噛みちぎって頭で立ち上がるよう促す。

「わっ‥‥何?どうしたの‥‥?」

困惑しながらも立ち上がってくれた。

「ねぇ、あれ君がやったの?魔法‥‥だよね。すごい!血熊ブラッティベアってすごく強いはずなのに‥‥。」

「グルワアアアアアアアア!!」

目が見えなくなって痛みと怒りに無茶苦茶に攻撃を繰り出す熊。大変だ!ここは危険!逃げなきゃ!

「ひぃ‥‥。ぁ‥‥。」

子どもの服の裾を掴んで連れて行く。

「どこに行くの?」

「わん!(僕のお家!)」

伝わらないと思うけどちゃんと答える。お家まで行けば安全だよ!

しばらく歩くと僕の巣まで帰ってきた。

「この洞穴は‥‥?大丈夫なの‥‥?魔物の寝床とかじゃない?」

「わふん!(僕のお家だから平気!)」

頭で子どもの背中を押して巣の中に押し込む。恐る恐ると言った感じで巣の中に入ると慣れた様子で自分のベッド(干し草を敷き詰めた物)に寝転ぶ僕を見てようやく安心したようだ。

ぐぅ~~

「わふ?(お腹空いたの?)」

子どもはお腹が鳴ってしまって恥ずかしいのか顔を赤らめた。

「わふっ!(どうぞ、美味しいよ!)」

前に拾った緑色の果物を咥えて子どもの前に置く。

「わあ!これ僕にくれるの?ありがと!‥‥これってポポーの実?まさか‥‥ね。幻の果実なわけ‥‥。」

何か言っていたけど小声だったからうまく聞き取れない。

「包丁とかない?これこのままじゃ食べられないよう。」

はっ!そうか。牙で器用に半分に割ってあげると余程お腹が空いていたようで目を輝かせながら夢中になって食べていた。

「ご馳走様。ありがとう、すごく美味しかったよ。」

よかった!

「わふ?(大丈夫?)」

子どもの手に頭を擦り付ける。

「心配してくれてるの?ふふっ、ありがとう。怖かったんだけど今は君がいてくれるから平気だよ。きっと僕のちちうえが探してくれてる。」

もうあたりが随分と暗くなってきた。子どもの吐く息が白い。人間は寒さに弱いからな。その辺犬になった僕は平気だ。もふもふの毛皮が寒さから守ってくれる。

特別に子どもにベッドを貸してあげる。もう寝よう?

「わふわふ!」

「ありがとう。」

一緒になってベッドに寝転ぶ。子どもは僕を抱きしめてもふもふする。

ふわぁ~気持ちいい。そこそこ、もっとして!

「ふふっ、可愛いなぁ。それに‥‥あったかい。おやすみ。」

「わふわふ(おやすみ)」
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