ある女教師の憂鬱

翠乃古鹿

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新しいご主人さま②

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 渋谷と大倉たちがどうやって知り合ったのかは分からないが、その日から渋谷は知子の新しいご主人さまとなった。
「明日は居るのかしら……」
 食事を終えた知子が、洗い物をしながらポツリと呟いた。
 今までは一日か二日置きに部屋に戻り、知子を抱いていた渋谷が、三日続けて留守なのは初めてのことだった。
(連絡先くらい、教えてくれてもいいのに)
 知子にしても、渋谷に抱かれるのが嫌というわけではない。
 確かに、凌辱的な行為やセックスは、知子に恥辱や屈辱的な感情を起こさせるが、それが性的な悦楽に繋がっていることを、これまでも充分経験している。
 恐らく自分は春を売る女性たちよりも変質的なセックスの経験は豊富だろう、と知子は思っているし、それを嫌悪しているわけでもない。
 ただ、渋谷が何を生業にして生活しているのか、本当はどこに住んでいるのか、知子は何も知らないのが不安なのだ。
 そんなことを思い巡らせていた知子に、
「高校の同級生なんて、十年も経ったら会っても分からないわよね」
 と言う唐突な母の言葉にドギマギして、
「え、な、何……?」
 と返事に窮したが、どうやらテレビに向かって言った独り言だったらしい。
 母が見入っているテレビドラマの主人公たちは、高校時代の同級生という設定だ。
 過去の事件が物語の中に絡み、運命的に二人を引き合わせたという展開だ。
 ドラマの設定とはまるで違うが、知子と渋谷も同じ高校を卒業した同窓生だった。
 そのため自分のことを言われたような感覚になってドキッとしたが、母はまだ渋谷のことを知らないのだ。
 クラスが違っていたために、知子は渋谷のことを全く覚えていなかった。
 だが渋谷は知子をよく知っていた。
 渋谷の話では、知子のことは中学生の頃から知っていたらしい。
 住んでいた家も昔は近所だったという。
 知子が初恋の相手だったとも言っていた。
『高校教師になったと風の便りに聞いていたが、まさか初恋の相手がこんな淫売女に堕ちていたとは思わなかったよ』
 初めて渋谷に抱かれた日……。
 フェラチオの奉仕をしていた知子の口腔に欲情を流し込んだ渋谷が言い放ったこの言葉は、思い出すだけで恥辱に顔が赤くなる。
 昔のことを知っている人間に、今の知子の姿を知られる恥ずかしさはひとしおだ。
「知子は明日も学校があるから、もう寝なさい。後はお母さんがやっておくから」
 と、眠そうにしている知子を見かねた母が声をかけた。
「……ありがとう……そうするわ」
 母の入れてくれたお茶を飲んでホッとしたところで、急に睡魔が襲ってきたのだ。
 自覚はなかったが、精神的にもよほど疲れているのだと思った。
 学校の授業のことだけではなく、渋谷や大倉たちのことも考えていなくてはならない。
 早々とベッドに潜り込んだ知子の脳裏に、渋谷の裸体が浮かんだ。
 無意識のまま濡れた秘穴に指を沈ませ、渋谷の肉棒で貫かれる自分を夢想した。
 テレビドラマの主人公たちのように、もっと早くに巡り会っていたらと……。
 …………
 けたたましい目覚まし時計の音で知子は目が覚めた。どうやら、母が目覚ましをセットしてくれてたらしい。
『おはよう……』と言いかけて、母が居ないことに気がついた。
(そういえば、今日は朝早くに出かけると言っていたわ……)
 知子は自分のことだけでイッパイで、母の予定のことは失念していた。
 キッチンテーブルには、知子の分の朝食が用意してあった。
「自分も忙しいのに、私の分の用意までしなくてもいいのに……」
 口ではそう言っても母に感謝すると共に、知子の秘密は決して知られてはいけないと、改めて思うのだ。
 まさか自分の娘が不良学生たちに襲われて処女を失ない、今でも淫売女のような扱いを受けていることなど、母には知る由もないことだ。
 いつもより早く起きたため、時間に余裕ができると、頭を埋めるのは渋谷のことだ。
(きっと今日は抱いてもらえる……)
 パジャマを脱いで着替えようとした知子の下着姿が姿鏡に映った。
 家の中には自分しかいないという状況が、知子の頭に淫らな考えを引き寄せたようだ。
 押入れの奥に隠してある紙袋の中から、男性器を形どった淫具を取り出した。
 下着をずらし股間に当てがうと、すでに準備のできていた下の淫口は、さしたる抵抗もなく異物を飲み込んだ。
 抜け落ちないように下着で抑えたさまが鏡に写り、知子の目から見ても卑猥だ。
『小人閑居して不善を為す』ということわざがあるが、まさに自分のことを言っていると知子は思った。
(品性の卑しい自分は、暇になるとロクな事をしないしロクな考えをしない……という事ね。これで学校に行ったら……どうなるのかしら……)
 そんな淫らな想いにふける知子の携帯に、大倉からのメールが入った。
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