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第3章
悪徳教師①
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大倉から話を聞き、今の絵美の姿を捉えた写真を見た松原教諭は、
「やっぱり、逃がした魚は大きかったか」
と言って残念がっていたという。
河童女の無残な姿になった絵美の写真は、最下等な淫売に堕ちた女教師として、好き者の同僚たちの間で拡散した。
昔の絵美を知る知人たちの間でも、彼女の名前は口に出してはばかるほどに、淫猥な存在として記憶されていた。
絵美がまだ教師として働いていた時には、今の姿はとても考えられないことだった。
三年前のその日……。
高島絵美が校長室を出た時は、すでに午後の二時をまわっていた。
まだ授業中だったが、帰る前に職員室に顔を出そうと歩き出したところで、松原先生とばったり出会った。
同僚とはいえ、生理的に受け付けないタイプの男だ。良くない噂も聞く……。
「大丈夫ですか高島先生。ご病気と聞きましたが、もうよろしいのですか?」
「ええ……まあ、だいぶ良くなったので、病院の帰りに顔を出そうと思いまして……」
絵美は数日前の淫らな出来事を思い出し、気まずそうに答えた。
「そうですか、それは良かった」
両手に荷物を抱えた松原は、人なつっこい笑顔を向けたが、すぐに深刻な顔に変わり絵美に近づくと、声を抑えながら言った。
「こちらではちょっと大変なことがありまして……大倉たちのことなんですけど、高島先生の耳にはまだ届いていませんか?」
絵美は、大倉の名を聞くと少しドギマギしながら、
「え、ええ先ほど、校長室に伺った時に耳にしましたが、あまり詳しい事は……」
と、答えると、
「実は……その事も含めて、高島先生にご相談があるのですが、少しお時間を頂けませんか?」
松原が神妙な顔で、同意を求めて来た。
すぐにでも帰りたかったが、乱闘事件に関わった大倉たちに、どのような処罰が下るのかを知りたかった。
教師としては不遜だが、自分を凌辱した不良たちに対して当然の報いとばかりに、溜飲の下がる思いもしたのだ。
松原に誘われるままに談話室に入った。
談話室は、父兄や理事たちに対応するために、立派な応接セットが置かれている。
壁面にはガラスケースが並び、トロフィーや楯、賞状などが飾られていた。
めったに使われる事はなく、生徒はおろか教師たちもあまり近づかない場所だ。
「時々、校長や教頭がここで内密な話をしているみたいですよ。だから僕らも、ちょっと使わせてもらいましょう」
冗談めかした調子で絵美にコーヒーを勧めると、松原先生は乱闘事件の詳しいあらましを話し始めた。
若い女性が(後に、長岡志麻帆だったことが判明)他校の不良たちに囲まれている所を当校の生徒たちが見つけ、その女性を助けるために不良たちを追い払った。すると、追い払われた不良たちが仲間を呼びよせ、生徒たちを追いかけて来のだ。
そこに大倉たちはが遭遇し、絡まれていた生徒たちを逃がし、もみ合いとなった末に乱闘に発展した。通報により警官たちが駆けつけ、取り押さえられた大倉たちは傷害の現行犯として逮捕されたのだ。
長岡志麻帆の名前を聞いて、絵美は心が騒いだ。あの忌まわしい凌辱の日、志麻帆に相談があると言われて校舎に残った。
結局大倉たちに襲われたために、志麻帆との事はそのままになってしまった。
志麻帆が絵美に相談したい事とは……。
もしかしたら今回の件と関係があったのかもしれないと思った。
もしそうだとしたら、絵美を強姦した大倉たちが、絵美に救いを求めようとした志麻帆を助けたことになる。
……何て皮肉な事かしら……
暗然たる思いで事件の顛末を聞いていた。
松原は、大倉たちの悪辣な本性を知らず、何とか彼らの処罰だけは避けようと奔走していたようだ。
「警察も最初は、大倉たちが他校の生徒たちを襲った末の乱闘と思ったようです。何しろ十人を相手に、大倉たちはわずか三人で撃退して、全員を病院送りにしてしまったのですからね。大倉たちは少し腕に覚えがあったものですから、それがいけなかった」
大倉は柔道の黒帯だった。
日吉も幼い頃から空手を習い、ボクシングジムにも通った経験があるという。
小杉にしても、中学時代は剣道部の主将を務めたこともあった。
警察としても、武道の経験者が事件を起こした事で事態を重く見ていた。そのため厳しい対応になっているのだという。
一通り事件のあらましを話し終えた所で、
「実は、高島先生にご相談というのは、大倉たちに話を聞く中で、ちょっとよからぬ噂を耳にしたんです」
と松原が深刻そうに言うと、テーブルの上に分厚いファイルを置いた。
「何ですの……」
絵美が身を乗り出し、ファイルに手を伸ばそうとするのを松原はさえぎり、
「ちょっとこれを見て頂けますか」
と、ファイルのを開いた。
『ヒッ!』と、小さな悲鳴を漏らした絵美は口元を押さえ、顔面蒼白となり震えた。
決して知られてはいけない絵美の恥辱が、大きくプリントされていたのだ。
「やっぱり、逃がした魚は大きかったか」
と言って残念がっていたという。
河童女の無残な姿になった絵美の写真は、最下等な淫売に堕ちた女教師として、好き者の同僚たちの間で拡散した。
昔の絵美を知る知人たちの間でも、彼女の名前は口に出してはばかるほどに、淫猥な存在として記憶されていた。
絵美がまだ教師として働いていた時には、今の姿はとても考えられないことだった。
三年前のその日……。
高島絵美が校長室を出た時は、すでに午後の二時をまわっていた。
まだ授業中だったが、帰る前に職員室に顔を出そうと歩き出したところで、松原先生とばったり出会った。
同僚とはいえ、生理的に受け付けないタイプの男だ。良くない噂も聞く……。
「大丈夫ですか高島先生。ご病気と聞きましたが、もうよろしいのですか?」
「ええ……まあ、だいぶ良くなったので、病院の帰りに顔を出そうと思いまして……」
絵美は数日前の淫らな出来事を思い出し、気まずそうに答えた。
「そうですか、それは良かった」
両手に荷物を抱えた松原は、人なつっこい笑顔を向けたが、すぐに深刻な顔に変わり絵美に近づくと、声を抑えながら言った。
「こちらではちょっと大変なことがありまして……大倉たちのことなんですけど、高島先生の耳にはまだ届いていませんか?」
絵美は、大倉の名を聞くと少しドギマギしながら、
「え、ええ先ほど、校長室に伺った時に耳にしましたが、あまり詳しい事は……」
と、答えると、
「実は……その事も含めて、高島先生にご相談があるのですが、少しお時間を頂けませんか?」
松原が神妙な顔で、同意を求めて来た。
すぐにでも帰りたかったが、乱闘事件に関わった大倉たちに、どのような処罰が下るのかを知りたかった。
教師としては不遜だが、自分を凌辱した不良たちに対して当然の報いとばかりに、溜飲の下がる思いもしたのだ。
松原に誘われるままに談話室に入った。
談話室は、父兄や理事たちに対応するために、立派な応接セットが置かれている。
壁面にはガラスケースが並び、トロフィーや楯、賞状などが飾られていた。
めったに使われる事はなく、生徒はおろか教師たちもあまり近づかない場所だ。
「時々、校長や教頭がここで内密な話をしているみたいですよ。だから僕らも、ちょっと使わせてもらいましょう」
冗談めかした調子で絵美にコーヒーを勧めると、松原先生は乱闘事件の詳しいあらましを話し始めた。
若い女性が(後に、長岡志麻帆だったことが判明)他校の不良たちに囲まれている所を当校の生徒たちが見つけ、その女性を助けるために不良たちを追い払った。すると、追い払われた不良たちが仲間を呼びよせ、生徒たちを追いかけて来のだ。
そこに大倉たちはが遭遇し、絡まれていた生徒たちを逃がし、もみ合いとなった末に乱闘に発展した。通報により警官たちが駆けつけ、取り押さえられた大倉たちは傷害の現行犯として逮捕されたのだ。
長岡志麻帆の名前を聞いて、絵美は心が騒いだ。あの忌まわしい凌辱の日、志麻帆に相談があると言われて校舎に残った。
結局大倉たちに襲われたために、志麻帆との事はそのままになってしまった。
志麻帆が絵美に相談したい事とは……。
もしかしたら今回の件と関係があったのかもしれないと思った。
もしそうだとしたら、絵美を強姦した大倉たちが、絵美に救いを求めようとした志麻帆を助けたことになる。
……何て皮肉な事かしら……
暗然たる思いで事件の顛末を聞いていた。
松原は、大倉たちの悪辣な本性を知らず、何とか彼らの処罰だけは避けようと奔走していたようだ。
「警察も最初は、大倉たちが他校の生徒たちを襲った末の乱闘と思ったようです。何しろ十人を相手に、大倉たちはわずか三人で撃退して、全員を病院送りにしてしまったのですからね。大倉たちは少し腕に覚えがあったものですから、それがいけなかった」
大倉は柔道の黒帯だった。
日吉も幼い頃から空手を習い、ボクシングジムにも通った経験があるという。
小杉にしても、中学時代は剣道部の主将を務めたこともあった。
警察としても、武道の経験者が事件を起こした事で事態を重く見ていた。そのため厳しい対応になっているのだという。
一通り事件のあらましを話し終えた所で、
「実は、高島先生にご相談というのは、大倉たちに話を聞く中で、ちょっとよからぬ噂を耳にしたんです」
と松原が深刻そうに言うと、テーブルの上に分厚いファイルを置いた。
「何ですの……」
絵美が身を乗り出し、ファイルに手を伸ばそうとするのを松原はさえぎり、
「ちょっとこれを見て頂けますか」
と、ファイルのを開いた。
『ヒッ!』と、小さな悲鳴を漏らした絵美は口元を押さえ、顔面蒼白となり震えた。
決して知られてはいけない絵美の恥辱が、大きくプリントされていたのだ。
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