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第5話 ターゲットを決める
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目を覚ますとベッドの上だった。
「あっ、気がつきましたよ」
部屋の中にはさっき声をかけてきた片割れの金髪の女とカノンという黒髪の女、そしてリンネさんがいた。
「ダイスケさん、私がわかりますか?」
「リンネさんですね。なんで俺はベッドの上にいるんでしょうか?」
リンネさんに状況説明を求めると、金髪の女がぐいっと前に出てきた。
「本当にごめんなさい。ほら、カノンちゃんも謝って」
金髪の女が引っ張って、カノンを俺の前に突き出す。
「悪かったよ。あれくらい避けると思ったんだ」
「カノンちゃん!」
「うっ……いや、あれだ。本当に申し訳なかった」
カノンという女は金髪の女に怒られて、ようやく頭を下げた。
俺も大人だ。
謝ってくれたのなら許そうと思う。
とりあえず、魅了魔法の被験者第一号に認定しよう。
最初はリンネさんにしようかと思っていたけど、カノン相手なら躊躇なく魔法を使えそうだ。
実験相手には丁度いいんじゃないだろうか。
「わかりました。許します。ただ、なんでこんなことになったのか説明して貰ってもいいでしょうか?」
「それはあれだよ。おっさんが強いと思ったからだよ」
……話が通じないどころか、まともに話すこともできないようだ。
「あの、私から説明します」
俺が困り果てていると、金髪の女が代わりに話し始めた。
「えっと、まず自己紹介からさせて貰いますね。私はアネッサと言います。そして、彼女はカノン。私たちはパーティーを組んでいて、パーティー名はジャッジメントと言います。
私たちのパーティーランクはBなんですけど、最近カノンのライバルが属しているパーティーがAランクに達しまして、それで焦ったカノンが戦力を補強しようとしてダイスケさんに声をかけたんです」
「おっさん魔法使いなんだろ? ビッグベアが倒せるくらいの魔法使いが欲しかったんだよ」
「カノンちゃん」
なるほど、事情は詳しくわからんがランクを上げようとしてるということか。
それで俺をパーティーに誘おうとしたということね。
パーティーうんぬんは面倒くさいからパスしたい所だな。
「お話はわかりました。力になりたいのは山々ですが、私では力になれません。そうですね、リンネさん?」
「はい。ダイスケさんは先日冒険者になったばかりでランクはFです。パーティーランクBのジャッジメントに入るには最低でもCランクになっていないといけません」
俺の口から説明するより、ギルドの職員に説明して貰った方が納得するだろう。
そう思ってリンネさんに話を振ったのだけど、なぜかカノンは目を輝かせていた。
「気に入ったぜおっさん。冒険者ランクFでビッグベアを倒しちまうなんて、未来の大賢者じゃねえか」
大はついてないけど、既に賢者なんですけどね。
そんなどうでもいいことはおいておくとして、どうやら油を注いでしまったようだ。
「話しを聞いてなかったんですか? 私はパーティーには入れませんよ」
「そんなの関係ねえさ。私たちが手伝ってすぐにCランクまであげてやるよ」
そんなことできるのか?
一緒に戦ったら本人の功績にはならない気がするんだが。
リンネさんをちらりと見る。
「一つの依頼を複数人で受ける事は可能ですが、依頼達成時のランク査定はランクが高い方が高くなります。ダイスケさん単独で適正ランクの依頼を受けた方が査定は高いでしょう」
「そんなことはわかってるよ。Cランクまでなら魔物の素材を売るだけでもいけんだろ?」
「それは、そうですけど。パーティーを組んでないのなら自分で狩ったものを売るのがルールですよ?」
「わかってるって。ビックベアを狩るだけの魔法は撃てるんだ。私たちが護衛として着いていけば一ヶ月もあればランクCにあがんだろ。アンタも怒鳴るくらい心配してるんだし、私たちがついてりゃ安全だろ?」
「……そうかもしれませんね」
あれ? なんだかリンネさんが説得されそうになってない?
「そうだろ。ついでに冒険者のなんたるかをおっさんに教えてやるよ」
ちらりと俺の方を見てから、リンネさんはカノンに向かって頭を下げた。
「よろしくお願いします」
えっ? 俺に対する評価はいきなり後頭部を殴ってくるカノンにお任せするレベルなの?
ちょっとショックなんですけど。
うん、リンネさんにも絶対に魅了を使おう。
「そういうわけだ。じゃあまた明日なおっっさん。朝一で冒険者ギルドに来いよ」
カノンは言いたいことだけ言って部屋を出て行った。
「あの、カノンちゃんがすみません本当に」
「アネッサさんが頭を下げることはありませんよ。それに私も森に行けるのは嬉しいですしね。礼を言うのはこちらの方です」
ものは考え用だ。
別に一人でよかったけど、堂々と森に入っていけるのは都合がいい。
もうまとわりつかれるのはしょうがない。
後頭部のお礼は個人的にたっぷり返して貰うことにしよう。
しきりに頭を下げるアネッサさんと別れて冒険者ギルドを後にした。
「あっ、気がつきましたよ」
部屋の中にはさっき声をかけてきた片割れの金髪の女とカノンという黒髪の女、そしてリンネさんがいた。
「ダイスケさん、私がわかりますか?」
「リンネさんですね。なんで俺はベッドの上にいるんでしょうか?」
リンネさんに状況説明を求めると、金髪の女がぐいっと前に出てきた。
「本当にごめんなさい。ほら、カノンちゃんも謝って」
金髪の女が引っ張って、カノンを俺の前に突き出す。
「悪かったよ。あれくらい避けると思ったんだ」
「カノンちゃん!」
「うっ……いや、あれだ。本当に申し訳なかった」
カノンという女は金髪の女に怒られて、ようやく頭を下げた。
俺も大人だ。
謝ってくれたのなら許そうと思う。
とりあえず、魅了魔法の被験者第一号に認定しよう。
最初はリンネさんにしようかと思っていたけど、カノン相手なら躊躇なく魔法を使えそうだ。
実験相手には丁度いいんじゃないだろうか。
「わかりました。許します。ただ、なんでこんなことになったのか説明して貰ってもいいでしょうか?」
「それはあれだよ。おっさんが強いと思ったからだよ」
……話が通じないどころか、まともに話すこともできないようだ。
「あの、私から説明します」
俺が困り果てていると、金髪の女が代わりに話し始めた。
「えっと、まず自己紹介からさせて貰いますね。私はアネッサと言います。そして、彼女はカノン。私たちはパーティーを組んでいて、パーティー名はジャッジメントと言います。
私たちのパーティーランクはBなんですけど、最近カノンのライバルが属しているパーティーがAランクに達しまして、それで焦ったカノンが戦力を補強しようとしてダイスケさんに声をかけたんです」
「おっさん魔法使いなんだろ? ビッグベアが倒せるくらいの魔法使いが欲しかったんだよ」
「カノンちゃん」
なるほど、事情は詳しくわからんがランクを上げようとしてるということか。
それで俺をパーティーに誘おうとしたということね。
パーティーうんぬんは面倒くさいからパスしたい所だな。
「お話はわかりました。力になりたいのは山々ですが、私では力になれません。そうですね、リンネさん?」
「はい。ダイスケさんは先日冒険者になったばかりでランクはFです。パーティーランクBのジャッジメントに入るには最低でもCランクになっていないといけません」
俺の口から説明するより、ギルドの職員に説明して貰った方が納得するだろう。
そう思ってリンネさんに話を振ったのだけど、なぜかカノンは目を輝かせていた。
「気に入ったぜおっさん。冒険者ランクFでビッグベアを倒しちまうなんて、未来の大賢者じゃねえか」
大はついてないけど、既に賢者なんですけどね。
そんなどうでもいいことはおいておくとして、どうやら油を注いでしまったようだ。
「話しを聞いてなかったんですか? 私はパーティーには入れませんよ」
「そんなの関係ねえさ。私たちが手伝ってすぐにCランクまであげてやるよ」
そんなことできるのか?
一緒に戦ったら本人の功績にはならない気がするんだが。
リンネさんをちらりと見る。
「一つの依頼を複数人で受ける事は可能ですが、依頼達成時のランク査定はランクが高い方が高くなります。ダイスケさん単独で適正ランクの依頼を受けた方が査定は高いでしょう」
「そんなことはわかってるよ。Cランクまでなら魔物の素材を売るだけでもいけんだろ?」
「それは、そうですけど。パーティーを組んでないのなら自分で狩ったものを売るのがルールですよ?」
「わかってるって。ビックベアを狩るだけの魔法は撃てるんだ。私たちが護衛として着いていけば一ヶ月もあればランクCにあがんだろ。アンタも怒鳴るくらい心配してるんだし、私たちがついてりゃ安全だろ?」
「……そうかもしれませんね」
あれ? なんだかリンネさんが説得されそうになってない?
「そうだろ。ついでに冒険者のなんたるかをおっさんに教えてやるよ」
ちらりと俺の方を見てから、リンネさんはカノンに向かって頭を下げた。
「よろしくお願いします」
えっ? 俺に対する評価はいきなり後頭部を殴ってくるカノンにお任せするレベルなの?
ちょっとショックなんですけど。
うん、リンネさんにも絶対に魅了を使おう。
「そういうわけだ。じゃあまた明日なおっっさん。朝一で冒険者ギルドに来いよ」
カノンは言いたいことだけ言って部屋を出て行った。
「あの、カノンちゃんがすみません本当に」
「アネッサさんが頭を下げることはありませんよ。それに私も森に行けるのは嬉しいですしね。礼を言うのはこちらの方です」
ものは考え用だ。
別に一人でよかったけど、堂々と森に入っていけるのは都合がいい。
もうまとわりつかれるのはしょうがない。
後頭部のお礼は個人的にたっぷり返して貰うことにしよう。
しきりに頭を下げるアネッサさんと別れて冒険者ギルドを後にした。
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