163 / 176
三章 異世界verの中東戦争

154話 銀行襲撃作戦

しおりを挟む
 シリア民主連邦の実質的な首都『ダマスカス市民街』に点在する商店街で、俺は夕飯の買い出しに来ていた。前回の暗殺未遂を反省し、今回はある程度の変装をしている。

 「これだけありゃ十分か」

 約三日分の食料を買い込んだ。当分食べ物には困らないだろう。
 また暗殺者に命を狙われるのはごめんなのでさっさと家へ戻ろうと歩いていると、何者かに肩を掴まれ薄暗い路地裏に連れ込まれた。
 まさか諜報部の工作員に拉致されたのか!? と思ったが……

 「よおセルゲイ」

 俺を引き寄せたのはハーフィズだった。バラクラバで顔を隠しているので誰か分からず、本当に焦った。未だに心臓の鼓動が収まらない。

 「何だよ、お前かよ……」
 「へっへっへ、驚いたか? ま、ただの冗談だよ」

 ドッキリは別に法律で禁止されている訳ではないが、世の中やっていいドッキリとやってはいけないドッキリがあると思う。

 「まあ敵じゃなくてよかったよ……それで用件は何だい?」

 路地の壁に凭れる。ひんやりとした感覚が背中に貼り付き心地よい。

 「銀行強盗さ」

 彼はバラクラバを脱衣しながら答えた。

 「強盗って……何でそんな事やるんだよ? 金が欲しいのか?」
 「金……確かにそれもあるが」

 ハーフィズは胸元のポケットから一枚の写真を出す。スーツやドレスを着た人相が悪い連中が数十人写っている。

 「その銀行はただの銀行じゃなくてな、この極悪貴族共が運営してるんだ」 

 貴族の集合写真をビリビリに破り捨てた。

 「そんなに恨んでるのか?」

 地面に舞い落ちる写真の破片を見ながら問う。

 「ああ、この貴族は脱税を繰り返している上、貧しい市民から金を搾取して、その金をこの肥溜めみてぇな銀行に隠してやがんだ」
 「それは許せないなハーフィズ――――それにしてもお前、結構優しい奴なんだな」
 「優しいっていうか……俺、影響力が強い人間が下っ端の人間を虐げるのが大嫌いなんだ」
 彼は遠い記憶を思い出すような表情で冷静に答える。
 「セルゲイ、俺の昔話をちょっと聞いてくれるか?」
 「おう、暇だしいいぞ」

 ハーフィズはいつもの活発な顔つきから少し暗い表情に切り替わった。
 そして、回想の物語が始まる。

 「俺は元々、レバノンで住んでて、ジャミーレとは一緒の小学校に通ってた。でもレバノン内戦の影響で俺はイエメンに移民として移り、そこでアイツとはしばらく間疎遠になった。あと、親も家族も死んださ」

 戦災孤児だったのか。

 「で、そこまではいい――――許せないのが……」

 彼の声が一気に震え出し、その表情が憤慨に染まる。

 「一番得をしたのは政治家だけで、損をしたのは国民だけって事なんだ」

 政府からすれば、戦争などただのアルバイトに過ぎないだろう。実際、ボスホートルーシの官僚達は国民に見向きをせず、保身と金儲けしか頭になかった。

 「……ごめんよセルゲイ、つまらなかったな」
 「いーや、そんな事ないよ。お前の気持ちは理解できるし」
 「本当に?」
 「ああ、俺の国の連中だってそんなのが大半さ。政治家ってのは所詮はパフォーマンスが上手なだけさ」
 「それは言えてるな」

 元気を取り戻したのか、ハーフィズの顔に再び笑みが宿った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

処理中です...