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一章 異世界漂着
25話 まともな朝飯を食らう
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ついに、この日が訪れた。
鏡を奪い返し、槍使いの強敵を打倒し、苦しむレベッカを何とか助けたが、課題はこれだけではない。あと1つ、残っているのだ。
それこそ、首都への行軍である。
「60キロとかマジで死ぬぞ……」
げんなりとした気持ちで出発の準備を着々と進めていく。
「私も同じ気持ちです」
レベッカも明らかに嫌そうな顔をしながら鎧をセットアップしている。
陸上競技の選手でもない限り、60キロを歩くのが好きな奴なんてこの世に存在しないだろう。
準備が整うと世話になった宿を出て行った。
早朝という事もあり、人が出歩いている姿はあまり見られない。唯一、農家はちらほらと居るが。
「出発前に、まずは朝食を取りましょう」
「朝飯か、でも金は持ってないぞ」
「それなら、これを」
そう言うと小さな麻袋を取り出す。中からは大量の硬貨が出てきた。この国で流通している通貨の事は分からないが、間違いなく大金と見ていいだろう。
「すげえ量だな」
「そこそこの給料は稼いでいますので」
「またその内返すよ」
「いえいえ結構ですよ」
何十枚もの硬貨を掌に乗せられる。
「40分後、ここに来てください」
「宿の前だな」
待ち合わせ場所を確かめると、ここで立ち話を続けるのは時間の無駄なので早速飲食店を探し始めた。
歩き回っている内に太陽が上がってきて、仕事へ出掛ける人々の姿も多くなった。
「ここにしようかな」
見つけた店は、屋台のようなどこか懐かしさを感じる外観だ。
その独特の雰囲気に惹き付けられ、迷う事なく入店した。
「そこそこ居るな」
村では人気なのか、朝だというのに大勢の人で賑わっていた。
変わった服装の自分に視線が注がれるのを感じながらも、近くにあったカウンター席へと座った。向こうの棚には酒が入ったボトルが見える。未成年だから飲めるのはまだまだ先だが。
厨房へ繋がっている扉からエプロン姿の髭の生えた店主が向かって来る。顔も体も厳つく、思わず顔が引き攣る。
しかし実際は――――
「お、若いお客さんだなぁ。で、何食べる?」
優しい笑みを浮かべ、柔らかい話し方をする親切な人だった。
怖い人ではなかった事に安心感を覚える。
「よく分からないんで、オススメのやつでお願いします」
「分かった、お任せでいいんだね」
店主が厨房へ戻って行く。
食事が運ばれて来るのを待っていると、ナイフの事を思い出した。昨日の乱闘の際、投げられた衝撃で刃の一部が欠けてしまった。大雑把な使い方には問題ないが、細かい作業を行う時に困る。
周りの人間に気付かれぬよう、鞘からナイフをこっそりと抜き出す。
エッジの先端の湾曲している部分に光る箇所がある。これが刃こぼれだ。大きく欠けている訳ではないので、砥石があれば修復可能だが、生憎そんなものはどこにもない。しばらくはこの状態を我慢するしかなさそうだ。
このナイフは自分の貯めた小遣いで購入した事もあり、肩を落として落胆の息を吐いた。
朝っぱらから嫌な気分に侵されていると、店主がトレイを持って来た。物凄く食欲を刺激される香ばしい匂いだ。
「はい、できたよ」
机に置かれた皿には、焼きたてのステーキと程よく焼かれた小さなパンが盛り付けられていた。近頃はレーションばかりだったから、非常に嬉しい。
「ゆっくり食べていいからね」
太陽のように温かい笑顔を見せると、店主はまたもや厨房へ向かった。
ご馳走を堪能したあと、カウンターで店主に金を支払っていた。
「ありがとう、また暇な時に来てね」
「ええ、もちろんです」
退店する間際も、店主は俺の姿を眺めながら手を振ってくれた。こんな聖人は、今までに会った事がない。
鏡を奪い返し、槍使いの強敵を打倒し、苦しむレベッカを何とか助けたが、課題はこれだけではない。あと1つ、残っているのだ。
それこそ、首都への行軍である。
「60キロとかマジで死ぬぞ……」
げんなりとした気持ちで出発の準備を着々と進めていく。
「私も同じ気持ちです」
レベッカも明らかに嫌そうな顔をしながら鎧をセットアップしている。
陸上競技の選手でもない限り、60キロを歩くのが好きな奴なんてこの世に存在しないだろう。
準備が整うと世話になった宿を出て行った。
早朝という事もあり、人が出歩いている姿はあまり見られない。唯一、農家はちらほらと居るが。
「出発前に、まずは朝食を取りましょう」
「朝飯か、でも金は持ってないぞ」
「それなら、これを」
そう言うと小さな麻袋を取り出す。中からは大量の硬貨が出てきた。この国で流通している通貨の事は分からないが、間違いなく大金と見ていいだろう。
「すげえ量だな」
「そこそこの給料は稼いでいますので」
「またその内返すよ」
「いえいえ結構ですよ」
何十枚もの硬貨を掌に乗せられる。
「40分後、ここに来てください」
「宿の前だな」
待ち合わせ場所を確かめると、ここで立ち話を続けるのは時間の無駄なので早速飲食店を探し始めた。
歩き回っている内に太陽が上がってきて、仕事へ出掛ける人々の姿も多くなった。
「ここにしようかな」
見つけた店は、屋台のようなどこか懐かしさを感じる外観だ。
その独特の雰囲気に惹き付けられ、迷う事なく入店した。
「そこそこ居るな」
村では人気なのか、朝だというのに大勢の人で賑わっていた。
変わった服装の自分に視線が注がれるのを感じながらも、近くにあったカウンター席へと座った。向こうの棚には酒が入ったボトルが見える。未成年だから飲めるのはまだまだ先だが。
厨房へ繋がっている扉からエプロン姿の髭の生えた店主が向かって来る。顔も体も厳つく、思わず顔が引き攣る。
しかし実際は――――
「お、若いお客さんだなぁ。で、何食べる?」
優しい笑みを浮かべ、柔らかい話し方をする親切な人だった。
怖い人ではなかった事に安心感を覚える。
「よく分からないんで、オススメのやつでお願いします」
「分かった、お任せでいいんだね」
店主が厨房へ戻って行く。
食事が運ばれて来るのを待っていると、ナイフの事を思い出した。昨日の乱闘の際、投げられた衝撃で刃の一部が欠けてしまった。大雑把な使い方には問題ないが、細かい作業を行う時に困る。
周りの人間に気付かれぬよう、鞘からナイフをこっそりと抜き出す。
エッジの先端の湾曲している部分に光る箇所がある。これが刃こぼれだ。大きく欠けている訳ではないので、砥石があれば修復可能だが、生憎そんなものはどこにもない。しばらくはこの状態を我慢するしかなさそうだ。
このナイフは自分の貯めた小遣いで購入した事もあり、肩を落として落胆の息を吐いた。
朝っぱらから嫌な気分に侵されていると、店主がトレイを持って来た。物凄く食欲を刺激される香ばしい匂いだ。
「はい、できたよ」
机に置かれた皿には、焼きたてのステーキと程よく焼かれた小さなパンが盛り付けられていた。近頃はレーションばかりだったから、非常に嬉しい。
「ゆっくり食べていいからね」
太陽のように温かい笑顔を見せると、店主はまたもや厨房へ向かった。
ご馳走を堪能したあと、カウンターで店主に金を支払っていた。
「ありがとう、また暇な時に来てね」
「ええ、もちろんです」
退店する間際も、店主は俺の姿を眺めながら手を振ってくれた。こんな聖人は、今までに会った事がない。
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