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しおりを挟むそうしてさらに月日が流れ、バーミリオン帝国皇太子であるアレスレイド殿下の婚約が大々的に発表された。お相手はシルフィー・モルティア侯爵令嬢。婚約発表と同時に二人の馴れ初めも語られた。
不治の病を患っていた皇太子を令嬢の持つ奇跡の力で病を治した。そして二人は自然と惹かれ合い、婚約が結ばれたのだと。
この美談に帝国中が沸いた。
国民は皇太子の病が治ったこと、治癒能力を持つ者が現れたことに歓喜した。
さらにもう一人治癒能力者が現れ、その者に聖女の称号が与えられることも発表された。
帝国中がこの吉報を喜んでいる。
私は皇宮からその様子を目にし、そっと胸を撫で下ろす。するとアレス殿下が私の肩を抱き寄せた。
「だから大丈夫だって言っただろう?これを見て納得したかな?」
「…はい。こんなにもたくさんの人たちが私たちの婚約を喜んでくれているなんて夢みたいです」
「もちろんこれは夢じゃないからな?」
「ええ」
「じゃあそろそろみんなの前に行こうか。きっと今以上の歓声を聞くことになるだろうな」
「少し緊張します…」
「大丈夫だ。私が側にいる」
「はい」
私はアレス殿下にエスコートされ皇宮の外へと足を踏み出した。
「バーミリオン帝国万歳!」
「皇太子様、モルティア侯爵令嬢様おめでとうございます!」
「お幸せにー!」
皇宮前に集まった国民たちからの祝福の言葉。私はアレス殿下とともに笑って手を振った。
「シルフィー」
「はい」
「これからこの帝国を私とともに守ってくれ」
「もちろんです」
「そしてずっと私の側にいてほしい」
「…はい」
「ありがとう」
――チュッ
「「「ワァァァァー!!」」」
「~~っ!」
突然のアレス殿下の口づけに民衆は沸きに沸いた。私は口づけされ赤く染まる頬を押さえることしかできない。
「くくく。これでみんな私がシルフィーを愛しているって分かってくれただろう」
「っ、アレス殿下…!恥ずかしいです…」
「恥ずかしがるシルフィーも可愛いな」
「か、からかわないでください!」
「からかってなんていないさ。私はどんなシルフィーだって愛しているんだからな」
「っ!」
「シルフィーはどうなんだい?」
「…私の答えなんて知っているのにずるいです」
「シルフィーの口から聞きたいんだ」
「…」
前世の記憶を思い出した時は死の運命に絶望したが、あの時諦めなくて本当によかったと心から思う。そしてアレス殿下と結ばれることができて幸せだ。その気持ちを恥ずかしいけど私も行動と言葉にして伝えよう。
――チュッ
「っ!」
「私もアレス殿下を、アレスを愛しています!」
「「「ワァァァァァァー!」」」
私はアレス殿下の頬に口づけをした。アレス殿下は驚き口をパクパクしている。
(恥ずかしいけどこれで私の気持ちは伝わったかな?…さっきの仕返しでもあるんだけどね!)
「私の気持ち伝わりましたか?」
「…シルフィーには敵わないな。ああ、もちろん伝わったよ」
「ふふっ、それならよかったです」
こうして私たちの婚約お披露目は無事に幕を閉じた。この後半年間の婚約期間を経て婚姻することになる。
モブ妻として転生した私がまさか皇太子妃になるなんて誰が予想できただろうか。
予想外の人生になったが好きな人に愛される幸せは何者にも代えがたいものだ。
私はこれからもアレス殿下の側にあり続けたい。
それが今の私の願いである。
【完】
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