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「すぐに迎えに行くっ!必ず、必ず迎えに行くから!」


「…うん!うん!待ってる!」



 そう言って馬車に向かって手を振りながら大好きな友達と別れて八年が経つ。この言葉を信じて今まで頑張ってきたがもう八年だ。

 私は今年十六歳になり成人する。これだけ時間が経ってしまってはとっくに私のことなど忘れてしまったのだろう。


 たとえ唯一の希望の光が消えても私の一日は変わらない。


 別れの際に貰ったペンダントを握り締めながら私の人生のなかで一番幸せだったあの日は心の奥に沈んでいった。





 ◇◇◇




 私の名前はミレイア・ノスタルク。ノスタルク公爵家の養子である。

 元は孤児であった私は孤児院で暮らしていたのだが、九歳の時にノスタルク公爵様に望まれ養子になったのだ。

 孤児院での生活は当然贅沢な暮らしではなかったが特に不満はなかったし、それに少し前に別れた友達との約束もあったので孤児院にいられるギリギリの年齢まではこの地から離れたくはなかった。

 しかし養子にと望んできたのは貴族の頂点である公爵家。嫌だなんて言えるわけもなく私は養子に出されてしまったのだ。



 そしてこれが不幸の始まりである。



 孤児である私が貴族社会で生きていけるのかという不安はあったが、私のことを強く望んでくれた公爵様に対する期待もどこかにあった。


 もしかしたら本当の家族ができるのかもしれないと。


 しかしそんな期待は公爵家にたどり着くとすぐに砕け散った。



「この薄汚れた娘が?本物なの?…はぁ、仕方ないわね。最低限の教養は身に付けさせるけれど偽物だったらどうしてくれようかしら」


「こんなのが僕の妹になるだって?僕には本物の可愛い妹がいるんだからこんなやついらないよ!」


「えー!私の召し使いじゃないの?」



 順に公爵夫人、嫡男のロバート、私の一つ年下のリリアンの言葉である。

 私はこの家からまったく歓迎されていないということを一瞬で理解してしまった。


 そして使用人にも冷たい視線を向けられるなか私の新たな生活が始まったのだった。

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