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「お願い、ですか?なんでしょう?」


 ベルフィーナ様からのお願いとは一体なんだろうか。公爵令嬢が平民にするお願いなんて全く思いつかない。
 ベルフィーナ様も口を開いたり閉じたりでなかなかお願い事を口にしなかった。


 (勇気が必要なお願い事なのかな?無理難題じゃなければいいけど…)


「ベルフィーナ様?」

「あのね!ル、ルナとお友達になりたいの!」

「…え?」

「私とお友達になってほしいの!」


 ベルフィーナ様のお願い事がまさか私と友達になりたいことなど予想外すぎる。私もベルフィーナ様には好感を持っているが公爵令嬢かつ次期王妃のお友達など畏れ多い。


「…私は元は貴族令嬢と言え今は平民です。平民の私が次期王妃であるベルフィーナ様の友人など…」

「そんな私を暗闇から救ってくれたのはルナよ。あの日からルナは私の光なの。これからも道に迷うことがたくさんあるはずだわ。そんな時にルナが側にいてくれたら心強いの」

「でも」

「それにねあなたの言葉は不思議とすんなり心の内側に入ってくるの。私には貴族令嬢のお友達はたくさんいるわ。でもその子達はお友達であってお友達ではないの。だから私には心から信頼できるお友達が一人もいないのよ」

「…」


 私も王妃となるために教育を受けてきた身だ。ライージュ国とは違うがセントミル国の王妃は国王の専属護衛という職業王妃。公務も社交も不要だったため私も友達は一人もいなかった。
 イシス様との友達関係はまた違うものであるからベルフィーナ様の気持ちはよく分かる。本当の意味での友達とはとても心強いだろう。


 (そう考えると私とベルフィーナ様って少し似ているわね)


「やっぱり難しいかしら…」

「…私と友達になっても何も利益はありませんがそれでもいいんですか?」

「っ!ええ、もちろんよ!」

「ではベルフィーナ様も私に何か利益を与えるようなことはなさらないでくれますか?」

「…それは、どういうこと?」

「本当の友達というはお互いが対等な関係でなくてはならないと思うんです。ですが一方から利益を与えられてしまえばそれは対等な関係とは言えません」

「……」

「困っている時に手を差しのべたり一緒に悩んだり楽しいことを共有したり美味しいお茶を飲んだり…。ベルフィーナ様は私とこのような関係を築いてくださいますか?」


 身分を理由に断ることもできたが似ている者同士いい関係が築けるかもしれないと思ったのだ。もちろんお互いに利益はないが。それがダメならこの話はなかったことなするしかない。


「…ルナの言う通りね。私もルナとそんな素敵な関係を築いていきたいわ」

「はい、私もです」

「ふふ、これからよろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」


 こうして私とベルフィーナ様は友達となった。


 それからベルフィーナ様は私の二つ年下ということもあり私を姉のように慕ってくれるようになる。お節介焼きである私との相性も良く、仲良くなるのにあまり時間はかからなかった。

 私とベルフィーナ様のこの関係はお互いに結婚しても続いていく、そんな予感がするのだった。
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