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しおりを挟む「…申し訳ございません」
「兄上すまなかった」
私達はあの後公爵様の咳払いにより我に返った。その場の雰囲気とは恐ろしい。
「いや、若いって素晴らしいね」
「「すみません…」」
「気にしないでくれ。まぁ今後は人がいる場では気を付けるように」
「「はい」」
お茶が冷めてしまったので新しいお茶が出された。私はそれを一口飲んで心を落ち着ける。少し落ち着いたところで公爵様に気になることを聞いてみた。
「あの公爵様、お聞きしたいことがあるのですが…」
「なんだい?」
「どうして結婚をお許しくださったのですか?今の私はただの平民です。とてもイシス様とは釣り合わないかと」
「ああ、まぁ普通はそうだよね。公爵子息と平民では釣り合うはずがないから当然反対するだろうね」
「…ではなぜ?」
「理由は二つかな。一つはルナ君が平民としてはあまりにも異質だからだ。今回呼ぶにあたってルナ君のことは調べさせてもらったが、元辺境伯令嬢でS級冒険者だ。貴族令嬢としての心得を持っているし強さも兼ね備えている。それを知って私はイシスにはぴったりだと思ったんだ。イシスは昔からどうも貴族令嬢とは合わないみたいでね。だから父も私もイシスには婚約者を作らなかったんだ。作ったところでうまくいくとは思えなかったし、それに我がロイガート公爵家はイシスに無理をさせてまで他の貴族家と結び付きを作らなくても問題ないほどの家門だからね。だからいつかイシスが自分から好きになる相手が現れれば応援してあげるつもりだったんだ。これが二つ目の理由だ」
「公爵様にとってイシス様はとても大切な家族なのですね」
多少ブラコンのような気もするが歳が離れているせいもあるだろう。でも理由が聞けてよかった。
「ああその通りだ。そしてそんなイシスに気になる女性ができたとの報告を聞いて私は喜んだよ。だから二人が本当に想い合っているのであれば結婚を認めるつもりで今日ここにルナ君を呼んだんだ」
「兄上…」
「それで早速婚約といきたいところではあるんだが…」
「何か問題でもあるのか?」
「ん?問題もなにもルナ君のご両親からも許可が必要だろう?」
「あ…」
「二人できちんと挨拶をしてきなさい」
公爵様の言う通りだし私も両親にイシス様との結婚を認めてもらいたい。そのためには一度家に戻らなければならないが、国外追放された身なのでそう簡単に戻っても大丈夫なのだろうか。
「公爵様、実は私…」
「ああ、ルナ君の国外追放はすでに王家によって撤回されているから心配いらないよ」
「えっ!」
「私の方できちんと調べたから間違いない。それにセントミル王家は非公式にだがオーガスト家に謝罪もしているようだよ」
「家族は手紙ではそんなこと一言も…」
「おそらくルナ君のためを想って黙っていたんだろうね」
転移魔法が使える私はいつでも家に帰ることができるが国を出てからはまだ一度も家に帰っていない。夢を叶えるまでは戻らないと決めていたし今は冒険者と食堂の二足のわらじで忙しいからだ。それに国外追放された身としては簡単に家には帰れないと思っていたのもある。もしも早々に撤回されていると知らされたら私はどうしただろうか。今となっては分からないが多少の甘えが出ていたかもしれない。だから家族はそれを見越して私に黙っていたのだろう。
「…家族は私のことをよく分かっているようです」
「ルナ、早い内にご家族に挨拶に行こう」
「イシス様…。はい、ありがとうございます」
そうして私とイシス様は私の家族に会いにオーガスト領へ行くことに決めたのだった。
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