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 (料理を食べて少しでも元気になってもらえれば嬉しいな。えっと彼女は…十五、六歳かな?外に護衛らしき人もいなかったし、ここまで一人で来たのかしら?)


 疑問に思うことはあるが口にはしない。
 そうして見守っている内に料理を食べ終えたようだ。


「あの、ごちそうさまでした」

「いかがでしたか?」

「すごく美味しかったです。こちらは魔物料理が食べられると伺ったんですが先ほどの料理にも?」

「はい。先ほどのビーフシチューにはミノタウロスの肉を使っていますよ」

「そうなのですね。魔物料理を食べるのは初めてでしたがとても素晴らしかったです」


 こうしてまた一人、魔物料理の美味しさを知る人が増えたのは良いことだ。この女性は魔物料理を食べるのが初めてと言っていた。おそらく王都周辺の貴族家の人なのだろう。でも私には相手が誰であろうと関係ない。料理を食べて笑顔になってくれることが重要なのだ。


「ふふっ、ありがとうございます。私もお客様の笑顔が見れて嬉しいです」

「えっ?…私、笑えてたの?」


 なぜか彼女は驚いているようだった。笑ってたことに何か問題でもあるのだろうか。


「ええ。この目でしっかりと見たので間違いないですよ」

「そう…。ここに来てよかったです。おかげで少し気分が晴れました」

「何か悩み事でも?」

「っ、いえ…」

「…もし何かお悩みでしたら私に話してみませんか?」

「え?」

「ほら私はお客様のことは何も知りませんから。何も知らない相手になら気兼ね無く話せちゃいません?それに悩みを誰かに聞いてもらうだけでもスッキリしますよ」

「でも…」

「もちろん話せないことは言わなくて構いませんし。…まぁこれは私の完全なお節介ですから嫌でしたら気にせず嫌と言ってもらって大丈夫ですよ」


 そう、これは私の完全なお節介だ。
 本来なら平民の私が貴族の悩みを聞くなんてあり得ないことだろう。しかし彼女は身分が分からないようにローブを着て一人でこの店まで来たのだ。それなら私は彼女をただ一人のお客さんとして対応するだけだ。
 目の前で困っている人がいたのなら少しでも手助けしたいと思う。まぁ今の私には彼女の気分を少しでも軽くするくらいしかできないのだが。 


「…少し長くなりますがいいのですか?」

「もちろんです。今日はもう閉店ですからお気になさらず」


 彼女は少し悩んだようだが私に話してくれるようだ。それだけ思い悩んでいることがあるのだろう。


「…私には幼い頃に決められた婚約者がいるのですが――」


 彼女はゆっくりと話し始めた。
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