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23 イシス視点

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 昨日も彼女のお店へ行った。彼女の笑顔を見るだけで幸せになれる。いつの間にか私にとって彼女と彼女の料理はなくてはならないものになっていた。
 それにもう既に自分の気持ちには気づいている。

 私は彼女のことが好きなのだと。

 それに昨日の料理も本当に美味しかった。ドンクラブのグラタン…。

 私が昨日の余韻に浸って幸せな気分になっていると突然団長室にある通信機が鳴った。せっかくいい気分だったのにと残念に思いながらも今は仕事の時間だ。気持ちを切り替え通信機に応答する。


「どうした」

『き、緊急です!南より高魔力の飛行物体が王都に接近中!おそらくドラゴンだと思われます!』

「なんだと!?王都に最も接近するまであとどのくらいだ!」

『じゅ、いや八分ほどかと!』

「くそ、あまり時間がない!私は急ぎ王都の南に向かう!緊急事態の鐘を鳴らし各部署への連絡をするように!」

『はっ!ご武運を!』

「ああ。では頼んだぞ」


 私は通信機を切り急いで準備をする。団長室の隣の部屋には緊急用に転移魔法陣が設置されており、王都の東西南北にある門に転移することができる。
 準備が終わる頃に副団長が部屋へとやってきた。


「団長!」

「来たか。今は一刻を争う事態だ。私は騎士団員の準備が整うまで足止めに向かう。準備が整い次第南へと向かうように。指揮はお前に任せたぞ」

「はっ!了解しました!」

「では行ってくる」


 早足で魔法陣がある部屋へと急いだ。部屋に着いてすぐに魔法陣を起動させ南の門へと向かった。


「「お疲れ様です!」」

「ああ。ここは頼むぞ!」

「「はっ!」」


 門番に声をかけ王都から伸びる街道をひた走る。私は攻撃魔法はそこまで得意ではないが身体強化などの補助魔法は得意だ。身体強化されている己の身体は今は疲れ知らず。少しでも王都から離れた場所で足止めをするために私は全速力で走った。
 空を見上げると王都に向けて飛んでくる物体が見える。あれがおそらくドラゴンなのだろう。


「…近いな。少しでも遠くに…なっ!?」


 突然ドラゴンが急降下していく。理由は分からないがもしかしたらそこに誰かがいるのかもしれない。


「くそっ!」


 誰かが襲われているかもしれないと最悪の想像をするも足を止めるわけにはいかない。どうか無事でいてくれと願いながらドラゴンが降りていった場所を目指して走った。

 そして二分後、目的の場所にたどり着いた私が目にしたのは倒れたドラゴンの上に立つ人の姿だった。恐る恐る近づいてみるとドラゴンの上に立つ人の姿に見覚えがあった。


「…ルナ、殿?」


 長い銀髪が太陽の様に照らされてキラキラと輝いている。まさに光の女神のようだ。
 私はその神秘的な姿に目を奪われ、その場から動くことができなかった。
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