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20 イシス視点
しおりを挟む副団長は私のこの症状に心当たりがあると言う。一体原因はなんなのだろうか。
「一応確認しますが、例の店の店主、えーっと…」
「ルナ殿だ」
「ああそうでした。ルナ殿との顔合わせが終わったのでもう店に行く必要がなくなると思ったら突然胸が苦しくなったと」
「そうだ」
「でしたら間違いないですね。団長のその症状はズバリ、一目惚れです!」
「…は?」
「だから、一目惚れですってば!」
「……は?」
「はぁー、とうとう団長にも春がやって来たんですね!団長は見た目はいいんですがいかんせん女性に興味がないもんだから団員も心配していたんですよ!ロイガート家は団長のお兄様が既に継がれているからそこら辺の心配はいらないし、それにそれに…」
副団長がなだかんだと言っているが私はそれどころではない。
(私がひ、ひ、一目惚れだと…!?)
今までの人生、家柄とこの見た目のせいか女性に言い寄られることは多かったが興味がなかったので無視してきた。それに私はロイガート公爵家の者だが既に兄が家督を継いでおり、跡継ぎも誕生していることから結婚を急かされることもなかった。だから自分の好きなように生きてきた結果騎士団長にまで登り詰めたのだが、そんな私が一目惚れしたなんてとても信じられない。
「…これは何かの間違いだ!」
「えっ!そんなわけないじゃないですか!じゃあもうルナ殿に会えなくても平気なんですね?」
「うぐっ!」
「ほらまた胸が痛むんじゃないんですか?団長はまだ信じられないようですがこれが真実なんです!」
「うっ…」
「それにしてもそのルナ殿は一体何者なんですかね?この難攻不落の団長を簡単に落としてしまうなんて…。もしかして団長、何かされたんですか?」
「なっ、失礼なことを言うな!ルナ殿は笑顔が素敵で料理が上手な女性だ!断じて何かされたわけではない!」
「…しっかり心と胃袋を掴まれちゃったんですね」
副団長は何かブツブツ言っているが何を言っているかはよく聞きとれない。
「お前は何をブツブツ言っているんだ」
「い、いえっ、なんでもありません!あ、そ、そうだ!料理が上手だってことは団長は何か食べてきたんですよね!?一体何を食べたんですか?」
「食べた料理か?それはトンカツだ」
「…トンカツって豚肉を油で揚げたやつですよね?」
「ああそうだ」
「なんか以外と普通ですね」
「は?お前は何を言っているんだ。オークキングのトンカツなんて普通なわけないだろう」
「…へ?オークキング…?」
「私は魔物料理を食べるのは初めてではないが、それでも衝撃的な美味しさだった」
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