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しおりを挟む準備を始めてちょうど一年。ようやく今日、私の夢が叶うのだ。
開店して少し経つと店の扉が開いた。私はドキドキしながら笑顔で最初のお客さんを出迎えた。
「いらっしゃいませ!」
◇◇◇
無事王都にたどり着いた私が最初に始めたことは物件探しである。まずはこの王都で拠点になる場所が必要だと思ったからだ。宿屋を拠点にして活動するよりも動きやすいだろう。できれば店舗兼住宅の物件があるといいのだが、いい物件は見つかるだろうか。
そうして物件を探し始めた私は、大通りから一本入った通りになるが素敵な物件を見つけることができたのだ。
こじんまりとした店内だが一人で切り盛りするのだからむしろ丁度いい。以前も食堂として使われていたそうで厨房もそのまま残っていた。それと二階は居住スペースとして使うつもりだ。
私はすぐさまこの物件を購入した。金額は大金貨6枚。お金はありがたく使わせて貰った。
次は料理を調べることにした。王都の料理から調べたのだが、どうやら王都では魔物の食材を使った料理はなかった。あるお店の料理人に聞いてみると王都周辺ではほとんど魔物が出ることはなく、出たとしても食材として使える魔物ではないことがほとんどだそうだ。
そうすると他の町などから仕入れるしかないのだが鮮度が命の魔物の食材を仕入れるのは難しい。だから王都では魔物料理を見かけなかったのだ。
それから少しずつ各地を巡り調べた結果、大きな森があったり辺境に近い地方では魔物料理をよく見かけた。しかし大体の料理に使われていたのは小型の魔物だった。きっと食材調達のために冒険者ギルドに依頼をすると高額になってしまうのだろう。それなら料理人が自分で小型の魔物を狩った方が安上がりなのだ。
でも私なら大型の魔物も余裕で狩れる。そうしたらインパクトのある料理をお客さんに提供できるだろう。
そして料理を調べるのと平行してライージュ国を旅して回った。色んな町や村へ行き、冒険者ギルドがあれば依頼を受けつつ料理を調べ、狩った魔物を使って料理を作ってみたりと毎日を忙しく過ごした。
そんな生活を過ごしていたらいつの間にかBランクからSランクまで上がっていた。料理の研究のためにとかなりの数の討伐依頼を達成していたようだ。今では白金のギルドカードを首から掛けている。
さすがにライージュ国内を全て回ることは出来なかったが、ある程度の要所を抑えた頃には準備期間と決めていた一年まであと三ヶ月となっていた。そろそろ店の準備をしなければと王都に戻り準備を進めることにする。
店内の改装を頼んだり調理器具や食器を揃えたり掃除をしたりと忙しかったがなんとか一ヶ月半前には店の準備が整った。あとは店の名前だけだ。
「うーん、どんな名前にしようかな?」
おしゃれな名前もいいがやはり分かりやすい名前がいいだろう。
「『ルナの気まぐれ食堂』…。うん!すごく分かりやすい!」
魔物食材を手に入れるために冒険者をしながらになるので営業日は気まぐれ、料理も毎回魔物食材が違うので気まぐれになる予定だ。
それならこの名前はぴったりだろう。早速看板と扉にボードを掛ければ完成だ。
「よし完成!これが私のお店…」
前世越しの夢が目の前にある。感慨深さを感じながら最終準備に取りかかることにした。
「準備期間と決めた一年まであと一ヶ月半!あとやるべきことは食材集めね!」
残りの時間を使って料理に使う食材を各地で色々集めていこうと思う。両親から貰った鞄があるので食材が腐る心配はない。でも魔物食材だけは別だ。鞄があるので魔物食材も今から集めても大丈夫なのだがそれはしないと決めている。その時その時で出ている依頼を受け、困っている人を助けたついでに魔物食材を手に入れたいのだ。魔物食材を事前に集めてしまうことは、幼い頃から困っている人を助けたいという思いで冒険者になった意義がなくなるのと同じだ。
だからこれだけは今世と前世の二つの夢を実現するために自分に課した決まりだ。
「それじゃあ行きますか!」
そうして私は最終準備に取り掛かった。
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