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14 イシス視点
しおりを挟む「団長。あの、少し問題がありまして…」
「なんだ?」
ここは騎士団の建物内にある団長室だ。騎士団長である私イシス・ロイガートは、王都を巡回している班の班長からの報告を聞いているところである。
「実は一ヶ月前に大通りから一本入った通りに新しい店ができたようなのですが…」
「ん?新しい店ができたのなら店主の確認をすればいいだけだろう?何が問題なんだ?」
王都に新しく店を構えた場合は騎士団と店主で顔合わせをするのが決まりであり、そうすることで犯罪の減少や緊急事態の時に対処がしやすいようにしている。
「店に看板が掲げられてから毎日店に行っているのですが、いまだに店主と顔を合わせることができていなくて…」
「看板が掲げられているのに店が開いていないのか?」
「そうなんです」
普通なら店に看板が掲げられればすでに営業しているはずなのだが、その店は一ヶ月以上も営業していないことになる。
「それはおかしいな」
「はい。規定で決まっている営業開始後二十日以内に確認が取れていなくて…」
「どうしようかと迷っている内に一ヶ月が経ってしまったと」
「申し訳ございません…」
「ふむ…」
確かに班長が迷ってしまうのは分かる。そもそも二十日以内に確認が出来なかったことなど今までにない。もしかしたら明日なら明日ならと思っている内に一ヶ月が経ってしまったのだろう。
「分かった。この件については私が対処しよう」
「だ、団長自らですか!?」
「ああ。このようなことは今までにないことだし、それに一ヶ月も店を営業しない店主など変わり者かもしれないからな。お前達より私の方が適任だろう」
「あ、ありがとうございます!」
「だが今回の規定違反は仕方ないにしても報告を怠ったことは処罰の対象だ。厳重注意に三回の減給だ。次に厳重注意を受けると階級が下がるから気をつけるように」
「申し訳ございませんでした!」
「では戻っていいぞ」
「はっ!失礼致します!」
部屋に一人になった私は急ぎ目の前の書類を片付け、早速先ほどの店へと行ってみることにする。
(そういえば店の名前を聞くのを忘れたな。まぁ行けば分かるだろう)
そして私は団長室を出て例の店に向かうのだった。
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